第十四話 10日間の秘密
本日第十四話で公開された新しいマイルの能力のルールですが、第一から十三話では事前に確認していたのにも関わらずaiとのすれ違いがあり、無理矢理つなげている部分が多々あります。多めに見てくださると幸いです。申し訳ございません。
月曜日。
神聖能力学園。
いつもと変わらない朝。
「おはよう、マイル!」
「おはよう、光」
「土曜日、楽しかったね」
「うん」
光は嬉しそうに笑った。
その隣では蓮が席につく。
「次は遊園地だな」
「本当に行くんだ……」
「約束しただろ」
「そうだったね」
少し遅れて信徒が教室に入ってくる。
「おはようございます」
「おはよう、信徒」
自然に交わされる四人の挨拶。
信徒はそれを当たり前のように受け入れていた。
⸻
一時間目 能力理論
教師が黒板に文字を書く。
『能力の熟練度』
「能力は使えば使うほど熟練度が上がる」
「同じ能力でも、熟練した者とそうでない者では大きな差が生まれる」
マイルはノートを取りながら聞いていた。
しかし、教師の次の言葉に少しだけ反応する。
「なお、特殊な能力には使用制限が存在する場合もある」
(俺の場合は……)
マイルは自分の能力について考える。
能力を変更できる。
それ自体が普通ではない。
そして、能力にはもう一つ重要な制約がある。
一つの能力を使えるのは最大三日間。
三日間使い続ければ、その能力はそこから七日間使えない。
しかし――
三日間使う前に別の能力へ変更しても同じ。
変更した瞬間から七日間、その能力は再取得できない。
例えば、
身体強化を一日使って結界生成へ変更した場合。
身体強化はそこから七日間使えない。
(だから、簡単には能力を変えられない)
さらに重要なのが熟練度。
十日後。
再びその能力を取得できるようになった時、
熟練度はゼロには戻らない。
前回到達したところから再開できる。
マイルはノートの端に小さく書いた。
「能力変更=七日間の代償」
その文字を見つめる。
(この力……)
(使い方を間違えたら、自分自身が弱点になる)
⸻
午後の授業、
四人は訓練場に集まっていた。
「今日は軽い実戦訓練だ」
教師が告げる。
「訓練用ゴーレムを一体倒してもらう」
巨大なゴーレムが出現する。
「四人で協力しろ」
「制限時間は十分」
蓮が前に出る。
「俺が動きを止める」
「光は援護」
「信徒は相手の能力を無効化」
そしてマイルを見る。
「お前は最後に攻撃」
「了解」
開始。
蓮が手を伸ばす。
「重力操作!」
ズンッ!!
ゴーレムの動きが一気に鈍る。
「今!」
マイルが走る。
現在の能力は――
身体強化。
一気に距離を詰める。
「はあっ!」
拳を叩き込む。
しかし。
ガンッ!!
硬い。
「まだ足りない……!」
ゴーレムが反撃する。
マイルは飛び退く。
(このまま身体強化で押すか?)
(それとも……)
結界生成。
頭の中にその能力が浮かぶ。
結界なら攻撃を防ぎながら、ゴーレムの隙を作れる。
しかし、
(待て)
マイルは判断する。
もし今、身体強化から結界生成へ変更したら。
身体強化は七日間使えなくなる。
「……」
今の戦闘だけを考えれば、結界生成の方が有利かもしれない。
だが、
(このあと何が起こるか分からない)
一つの能力を失うことは大きい。
「マイル!」
光の声。
「大丈夫!」
マイルは身体強化を維持する。
「蓮!」
「分かっている!」
重力がさらに強くなる。
ゴーレムの動きが止まる。
「信徒!」
「はい!」
信徒がゴーレムに触れる。
能力無効化。
「今です!」
マイルが拳を握る。
「これで……!」
ドォン!!
ゴーレムの胸部が砕ける。
「やった!」
光が喜ぶ。
マイルも笑った。
「ギリギリだったな」
蓮が頷く。
「だが、能力を変更しなかったのは正解だった」
「うん」
信徒が尋ねる。
「もし途中で変更していたら?」
「その時点から七日間、身体強化が使えなくなる」
「なるほど」
信徒は静かに頷いた。
「つまり、能力変更は単なる切り替えではない」
「戦術的な決断なんですね」
「そういうこと」
その言葉を聞きながら。
信徒はマイルを見つめる。
(やはり、彼の能力には特殊な制約がある)
⸻
その夜、
神殿。
信徒は神の前に立っていた。
「報告します」
「マイルは本日の訓練で身体強化を使用」
「途中で能力変更は行いませんでした」
神は静かに聞いている。
「理由は?」
「能力変更後、七日間その能力を再取得できないためです」
神がわずかに笑う。
「なるほど」
「彼も自分の制約を理解し始めたか」
「はい」
神はしばらく黙っていた。
そして、
「ならば、その制約を利用する」
信徒が顔を上げる。
「能力を変更せざるを得ない状況を作ればいい」
「……」
「一つの能力を失えば、七日間は戻れない」
神の目が鋭くなる。
「その七日間こそ、奴の隙だ」
「承知しました」
信徒は頭を下げる。
まだ、
信徒は何の疑問も抱いていなかった。
神の命令は絶対。
それが当然だと思っている。
⸻
一方――
マイルの部屋。
机の上に一冊のノート。
そこには、自分の能力についての記録が書かれている。
身体強化
使用可能期間――最大3日。
変更した場合――7日間再取得不可。
再取得後――前回の熟練度を引き継ぐ。
マイルはページをめくる。
「もっと上手く使わないとな……」
⸻
その時、
⸻
スマートフォンが鳴った。
知らない番号。
マイルの表情が変わる。
「……またか」
(第13話と同じ番号。)
少し迷った後。
電話に出る。
『マイル』
「誰だ」
『お前は、自分の能力についてどこまで知っている?』
「……」
『神に抗いし者』
その名前を聞いた瞬間。
マイルの表情が変わる。
「どうしてその名前を知ってる?」
電話の向こうから声がする。
『お前が八歳の時から、その力はお前の中にある』
「……!」
『だが、お前はまだ知らない』
『なぜ、その力がお前に与えられたのか』
マイルは息を呑む。
「お前は何者なんだ?」
しばらく沈黙。
『今はまだ、答えられない』
「ふざけるな!」
『ただ一つだけ覚えておけ』
声が低くなる。
『お前の力は、偶然そこにあるわけじゃない』
ブツッ。
通話が切れる。
「……」
マイルはスマートフォンを握りしめる。
八歳。
その言葉が頭から離れない。
確かに。
八歳の頃。
自分の能力について、初めて知った。
しかし、
なぜ?
誰が?
どうして自分に?
答えは何一つ分からない。
____
同じ頃、
暗い部屋。
電話を切った男は、一枚の古い写真を見ていた。
そこに写っているのは――
一人の男性。
その目は。
マイルによく似ていた。
写真の下には、一つの名前。
『神の父』
そして。
その能力名。
『神に抗いし者』
男は写真を見つめる。
「やっぱり……」
「お前の血は、まだ途切れていなかったんだな」
⸻
その頃、
神殿。
神は窓の外を見ていた。
星空が広がっている。
「……父よ」
かつて人間だった頃の記憶。
自分を止めようとした父。
そして、
その父が持っていた力。
『神に抗いし者』。
神は静かに拳を握る。
「今度こそ」
「邪魔はさせない」
夜空に浮かぶ無数の星。
その全てを、
神はいつか破壊するつもりだった。
そのために、
人間を兵士として育てる。
そして、
その計画の最大の障害となる少年。
マイル。
まだ本人は知らない。
自分が神に抗うために選ばれた理由も
自分の血筋に隠された秘密も。
そして――
この世界の運命が。
自分の能力にかかっていることも。
次回第十五話
血を注ぐもの




