第十五話 血を継ぐもの
放課後、
神聖能力学園。
教室には、まだ何人かの生徒が残っていた。
「マイル、今日どうする?」
光が振り返る。
「今日は訓練場に行こうかな」
「また?」
「うん。昨日の戦いで、まだまだ自分の能力を使いこなせてないって思ったから」
蓮が立ち上がる。
「なら俺も行く」
「私も!」
「……私も参加します」
信徒も続く。
「よし、4人で行こう!」
⸻
訓練場、
四人はそれぞれ準備をしていた。
「今日は能力の連携を試そう」
蓮が言う。
「俺が重力操作で相手の動きを制限する」
「光が援護」
「信徒が相手の能力を無効化」
「そしてマイルが攻撃」
「昨日と同じだね」
光が言う。
「だが、今日は条件を変える」
蓮が続ける。
「マイルは途中で一度だけ能力変更をしていい」
「……!」
マイルが反応する。
「いいの?」
「ああ」
「能力変更には頭痛があるんだろ?」
「うん」
「それも含めて訓練だ」
マイルは少し考える。
能力変更。
その瞬間から、今使っていた能力は7日間使えなくなる。
だからこそ。
変更するタイミングが重要になる。
「分かった」
訓練開始。
標的として、二体のゴーレムが出現する。
「二体!?」
光が驚く。
「想定より多いな」
蓮が構える。
「予定変更だ」
一体目が突進してくる。
「重力操作!」
ズンッ!!
ゴーレムの動きが鈍る。
マイルが走る。
現在の能力は――
身体強化。
「はあっ!」
拳を叩き込む。
しかし、
ゴーレムは倒れない。
「硬い……!」
もう一体が横から迫る。
「マイル!」
光が叫ぶ。
マイルは後ろへ飛ぶ。
(このまま身体強化で戦う?)
しかし、二体同時では厳しい。
(結界生成なら……)
マイルは能力を変更する。
「……っ!!」
激しい頭痛。
視界が歪む。
「マイル!」
光が駆け寄ろうとする。
「来ないで!」
マイルは片膝をつきながら耐える。
「……大丈夫」
数秒後、
「結界生成」
巨大な結界が展開される。
一体目の攻撃を防ぐ。
二体目の攻撃も防ぐ。
「今だ!」
蓮が重力を集中させる。
二体のゴーレムが地面へ押し付けられる。
信徒が一体へ触れる。
「能力無効化」
一体の動きが止まる。
「マイル!」
「分かってる!」
マイルは結界を変形させる。
ゴーレムの動きを封じる。
ドォン!!
蓮が攻撃。
一体目が破壊される。
残った一体。
マイルは結界を解除する。
「これで最後!」
蓮と光の援護。
信徒の能力無効化。
最後の一撃。
ドォン!!
二体目も崩れ落ちた。
「……終わった」
マイルは息を吐く。
光が駆け寄る。
「大丈夫?」
「うん」
「さっきの頭痛、かなり辛そうだったけど……」
「能力を変更すると、どうしてもね」
蓮がマイルを見る。
「ところで」
「何?」
「今、身体強化はもう使えないんだよな?」
「うん」
マイルは頷く。
「さっき変更したから、ここから7日間は身体強化を再取得できない」
「つまり、今後7日間は結界生成を中心に戦うことになる」
「そういうこと」
蓮は少し考える。
「なら、その期間を利用しよう」
「え?」
「結界生成を徹底的に鍛える」
マイルが笑う。
「なるほど」
光も笑う。
「じゃあ明日から結界の特訓だね!」
「……」
信徒は三人を見る。
能力には制限がある。
だが、
この3人は、その制限を弱点として扱うのではなく。
新しい戦い方を考える材料にしている。
信徒はその考え方を理解し始めていた。
____
翌日、
教室。
「マイル、昨日の訓練どうだった?」
クラスメイトが聞いてくる。
「結構きつかったよ」
「身体強化って強いんだろ?」
「まあ、それなりに」
「一回見せてくれよ!」
マイルは少し笑う。
「今は無理」
「なんで?」
「昨日、別の能力に変更したから」
「へえ」
クラスメイトはそれ以上気にしない。
能力は隠すものではない。
それが、この学園では当たり前だった。
ただ、
マイルだけは、
一つだけ。
絶対に口にできない能力がある。
「神に抗いし者」
⸻
昼休み、
光と蓮と信徒と一緒に昼食を食べる。
「今度の休日、遊園地どうする?」
光が聞く。
「俺は行ける」
蓮が答える。
「私も!」
マイルも頷く。
「もちろん」
光が信徒を見る。
「信徒くんは?」
「……」
信徒は少し考える。
「行きます」
「やった!」
信徒は小さく笑った。
その姿を、
教室の外から一人の教師が見ていた。
⸻
その夜、
神殿。
信徒は神の前に立つ。
「報告します」
「マイルは昨日、身体強化から結界生成へ能力を変更しました」
「その後、身体強化は7日間再取得できない状態です」
神は頷く。
「そして?」
「友人たちと日常的に行動しています」
「以前より、周囲との関係が深くなっています」
神は静かに言う。
「それでいい」
「……?」
信徒は顔を上げる。
「人間は、守りたいものが増えるほど強くなる」
「そして同時に」
神の目が鋭くなる。
「弱くもなる」
信徒は黙って聞いていた。
「その少年の周囲にいる人間も観察し続けろ」
「はい」
信徒は頭を下げる。
まだ、
疑問はない。
神の命令だから。
⸻
一方――
学園から離れた場所。
一人の男が歩いていた。
(マイルに電話をかけた男。)
男は一枚の写真を取り出す。
そこには、
マイルの祖先と思われる男性。
そして、その隣には別の男性。
男はその写真を見つめる。
「……やっと見つけた」
「お前の血は、ちゃんと残っていたんだな」
男の名前。
上薔薇 朔夜。
マイルと同じ血筋を持つ男。
そして、
「神に抗いし者」の存在を知る一族の一人。
朔夜はマイルの写真を見る。
「まだ何も知らないか」
「それでいい」
「今はまだ――」
朔夜は写真をしまう。
「俺の存在を知らない方が、お前は安全だ」
その表情に敵意はない。
むしろ、
マイルを守ろうとする者の目だった。
しかし、
朔夜は知らない。
すでに神が、
自分の存在を把握していることを。
⸻
神殿
神が一人。
古い資料を見ている。
そこには、
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「神に抗いし者」
⸻
そして、
その血筋についての記録。
神はページをめくる。
「……まだ生きていたか」
そこに書かれていた名前。
上薔薇 朔夜。
神は静かに笑う。
「父の血は」
「二つに分かれていた」
「マイル」
そして、
「朔夜」
神は資料を閉じる。
「だが」
「二人とも、私を止めることはできない。
⸻
その頃、
マイルは自室で眠っていた。
夢の中、
8歳の頃の記憶。
あの日、
初めて自分の中に存在する「何か」を知った。
あの時は、
ただ存在を知っただけだった。
力の使い方も。
本当の意味も。
何も知らなかった。
けれど今、
学園に入って、
能力を使い。
仲間と出会って。
少しずつ。
その力が目を覚まし始めている。
そして、
その奥深く。
まだ封印されたままの力が。
静かに、
目を開けようとしていた。
次回番外編




