第六話 痛みを超えた選択
夜、
神聖能力学園。
普段なら静かな校舎。
しかし、その日は違った。
⸻
警報音が鳴り響く。
『校内に侵入者を確認』
『生徒は直ちに避難してください』
教師たちが動く。
だが、
敵の能力は特殊だった。
壁。
床。
校舎そのもの。
触れたものが黒く変色していく。
「これは……」
教師が呟く。
能力。
侵食
触れた物質の性質を書き換える能力。
防御も攻撃も可能な危険な能力。
そして、
男は笑う。
「神様が言っていた」
「この学校に、特別な少年がいると」
_____
警報が鳴る。
『侵入者が訓練棟に移動』
そのとき、
マイルたちは避難していた。
「全員、校舎外へ!」
教師の指示。
しかし、
「まだ中に人がいる!」
声がした。
一年生の生徒数名が、訓練棟に取り残されていた。
マイルは走ろうとする。
「待て!」
蓮が止める。
「教師が向かっている」
「危険すぎる」
マイルは拳を握る。
分かっている。
自分が行っても何もできないかもしれない。
でも、
あの時と同じだった。
目の前に助けを必要としている人がいる。
「……行く!」
「マイル!」
光が叫ぶ。
「無理だけはしないで」
その言葉にマイルは少し笑った。
「分かった」
⸻
訓練棟。
黒い霧が広がる。
「来たか」
敵が振り返る。
「お前がマイルか」
「……俺を知ってるのか」
男は笑う。
「当然だ」
「神様が興味を持っている」
マイルの表情が変わる。
「神……」
敵が手を伸ばす。
床が黒く変化する。
「侵食」
攻撃。
マイルは避ける。
筋力増加。
速度が上がる。
しかし、
相手と距離が遠すぎる。
相手の能力は広範囲、遠距離攻撃も可能。
近づけない。
「どうした?」
「身体強化だけでは勝てないぞ」
マイルは考える。
必要な能力。
火炎操作。
違う。
侵食を焼き払えるかもしれないが、校舎まで壊れる。
水流操作。
違う。
計算能力向上。
能力のルールで取得できない。
そして、
一つの能力が浮かぶ。
結界生成。
守る力。
「……」
能力変更。
その瞬間、
「っ……!!」
激しい頭痛。
頭の中を直接壊されるような痛み。
視界が歪む。
(これ……前より酷い)
能力を変更するだけで、
身体が悲鳴を上げる。
敵が近づく。
「隙だらけだな」
攻撃。
その瞬間、
ズンッ!!
重力が変化する。
攻撃が止まった。
「……!」
蓮。
「一人で戦うな」
「俺もいる」
重力操作。
敵の動きを封じる。
マイルは頭痛を耐える。
「ありがとう」
結界生成。
発動。
透明な壁が広がる。
侵食の攻撃を防ぐ。
敵は驚く。
「二つの能力……?」
その瞬間、
訓練棟入り口。
光が現れる。
「マイル!」
「今!」
治癒能力。
マイルの頭痛を緩和させる。
戦える力ではない。
でも、
誰かを守るためには必要な力。
三人の連携。
重力。
結界。
治癒。
最後、
蓮が重力を一点集中する。
「終わりだ」
敵は倒れる。
戦闘後、
マイルは膝をつく。
「大丈夫!?」
光が駆け寄る。
「……頭が」
「少し痛いだけ」
嘘。
本当は立てないほど痛い。
蓮は気づいていた。
「能力を変えるたびに負担があるのか」
マイルは黙る。
「……」
蓮は追及しなかった。
「なら」
「その力を使う覚悟だけは忘れるな」
_____
その夜、
神村信徒はメモを書く。
【対象】
マイル。
【確認】
複数能力使用。
信徒はメモを見る。
「やはり……」
⸻
神。
画面に映るマイル。
「成長したか」
「父の力を使いこなしている」
神は静かに呟く。
「だが」
「まだ足りない」
「もっと絶望を経験しろ」
「そうすれば」
「その力は完成する」
次回第七話
隠された痛み




