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神に抗いし者  作者: あbc
第一部 孤独な少年と能力
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37/40

番外編 夏休み②

夏休み。


海へ行った日から数日後。


夕方――


マイルのスマートフォンが鳴った。


『マイル、今日暇?』


光からのメッセージだった。


『暇だけど』


すぐに返信が来る。


『今日、近くで夏祭りあるんだって!』


『行かない?』


マイルは少し考える。


そして、


『いいよ』


⸻


数時間後。


神聖能力学園の近くにある神社。


今日は夏祭りということもあり、境内にはたくさんの人が集まっていた。


「すごい人だな」


マイルが周囲を見る。


「夏祭りだからね!」


光は楽しそうに屋台を見ている。


「何から行く?」


蓮が聞く。


「りんご飴!」


「いきなりそれ?」


「いいじゃん!」


信徒も周囲を見渡す。


「こういう場所に来るのは初めてです」


「信徒、初めてなの!?」


光が驚く。


「はい」


「じゃあ今日はいっぱい楽しもう!」


「……分かりました」


信徒は少し笑った。


⸻


四人は屋台を回っていく。


焼きそば。


たこ焼き。


かき氷。


射的。


「マイル、あれやろう!」


「射的?」


「うん!」


光が指差した先には、景品が並んでいる。


マイルが銃を構える。


「これ……能力使ったら簡単じゃない?」


蓮が笑う。


「それやったら射的の意味ないだろ」


「確かに」


マイルは普通に狙う。


パァン!


「……外れた」


「マイル下手じゃん!」


光が笑う。


「もう一回!」


「よし」


二発目。


パァン!


景品が倒れる。


「やった!」


「すごい!」


光が拍手する。


マイルは景品を受け取る。


「これ、光にあげる」


「え?」


光が少し驚く。


「欲しかったんだろ?」


「……ありがとう!」


光は嬉しそうに景品を受け取った。


⸻


その頃。


祭りの裏手。


一人の少年が走っていた。


「……こっちだ!」


誰かを探しているようだった。


その直後。


ドンッ!


小さな衝撃音。


少年が振り返る。


「……まずい」


その手には、


小さな黒い箱。


少年はそれを握りしめると、人混みの中へ消えていった。


⸻


「マイル!」


光の声。


「今度は花火だって!」


「もうそんな時間か」


四人は神社の境内から少し離れた場所へ移動する。


夜空に、


一発目の花火が上がる。


ドォン――!


「綺麗……」


光が空を見上げる。


マイルも空を見る。


「夏って感じだな」


蓮も笑う。


「こういうのも悪くないな」


信徒は三人を見ていた。


任務でもない。


報告でもない。


ただ、


友人と一緒に花火を見る。


そんな時間。


信徒にとっては、


不思議なくらい心地よかった。


⸻


その時。


「……あれ?」


マイルが振り返る。


「どうした?」


蓮が聞く。


「今、誰かぶつかった気がする」


「人が多いからな」


マイルは周囲を見る。


しかし、


誰もいない。


その直後。


「きゃあっ!」


少し離れた場所から悲鳴が聞こえた。


「何!?」


光が振り返る。


人々が一斉に騒ぎ始める。


「花火の機械が故障したらしい!」


「火が出てる!」


「危ない!」


祭りの一角から、


煙が上がっていた。


⸻


「行こう!」


マイルが走り出す。


「待て!」


蓮も追う。


信徒と光も続く。


現場には小さな火災が発生していた。


「水が必要だ!」


マイルが手を前に出す。


「水流操作!」


水が勢いよく噴き出す。


火が徐々に消えていく。


「すごい……!」


光が驚く。


マイルはさらに水を操り、


残った火を完全に消した。


「これで大丈夫」


しかし、


マイルは違和感を覚える。


(普通の故障じゃない)


機械を見る。


配線の一部が不自然に切れている。


「……誰かが壊した?」


蓮が周囲を見る。


「事件ってことか?」


「分からない」


その時。


「おい!」


警備員が叫ぶ。


「そこの少年!」


一人の少年が走っていく。


さっきの少年だった。


「待て!」


マイルたちは追いかける。


⸻


路地裏。


少年は追い詰められていた。


「……来るな!」


手に黒い箱を持っている。


「それ、何?」


マイルが聞く。


「関係ないだろ!」


少年が逃げようとする。


しかし、


蓮が重力を少しだけ強める。


「動くな」


「うっ……!」


少年の動きが止まる。


「ちょっと待って」


マイルが近づく。


「俺たちは敵じゃない」


少年は黙る。


そして、


黒い箱を見る。


「……これを捨てたら、もっと大変なことになる」


「どういう意味?」


少年は答えない。


その時。


箱から、


ピッ。


小さな電子音が鳴った。


「……?」


信徒の表情が変わる。


「離れてください!」


「え?」


信徒が箱を見つめる。


「それは――」


ピッ。


ピッ。


ピッ。


「まずい!」


信徒が叫ぶ。


「全員、離れて!」


マイルは反射的に手を前に出す。


「結界生成!」


巨大な結界が展開される。


四人と少年を包み込む。


次の瞬間。


箱が強い光を放った。


――しかし。


何も起こらない。


「……?」


マイルが警戒する。


箱の光が消える。


少年は呆然としていた。


「止まった……?」


信徒が箱を見る。


「どうやら起動に失敗したようですね」


「何だったんだ?」


蓮が聞く。


少年はしばらく黙っていた。


そして、


「……俺、知らない男からこれを渡されたんだ」


「男?」


「うん」


「『祭りの会場に置いてこい』って」


マイルの表情が変わる。


「じゃあ、さっきの火災も……」


少年は頷く。


「たぶん、これのせいだ」


⸻


事件はその後、


祭りの警備員と警察によって処理された。


幸い、大きな被害は出なかった。


黒い箱も回収された。


少年も事情を話し、


四人はようやく解放された。


⸻


帰り道。


「今日は色々あったな……」


マイルが苦笑する。


「海に行った時も変な男がいたし」


蓮が言う。


「最近、変な事件多くない?」


光が不安そうに言う。


信徒は黙っていた。


今日の事件。


そして、


あの黒い箱。


あれは明らかに普通ではなかった。


しかし、


神側の事件とも限らない。


「信徒?」


マイルが声をかける。


「どうした?」


「……何でもありません」


信徒は笑った。


「今日は楽しかったですね」


「うん!」


光が笑う。


マイルも笑った。


夏休みの一日。


また一つ、


四人の思い出が増えた。


⸻


その夜。


誰もいない建物。


一人の男が端末を見る。


『計画失敗』


男は小さく舌打ちする。


「……まさか、あの少年たちがいるとはな」


画面には、


祭りの会場で撮影された映像。


そこには――


水を操るマイルの姿。


男は映像を停止する。


「……能力者か」


そして、


マイルの顔を拡大する。


「面白いな」


男は端末を閉じる。


「次は、もう少し大きな舞台で試すか」


夜の街に、


男の笑い声だけが響いた。


――夏休みは、


まだ始まったばかりだった。

次回夏休み③

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