第三十一話 残された記憶
夜、
学園から遠く離れた山間部。
一人の男が暗闇の中を歩いていた。
上薔薇朔夜。
手には小さな端末。
そこには、攫われた生徒たちの移動記録が表示されている。
「……ここだな」
朔夜は足を止める。
目の前には、使われなくなった研究施設。
外から見れば、何年も放置されている建物にしか見えない。
しかし、
「偽装されてるな」
朔夜は周囲を見渡す。
「……神側の施設か」
朔夜は建物へ近づく。
その時、
背後から声がした。
「誰だ」
朔夜が振り返る。
男が二人。
神側の兵士だった。
「こんなところまで来るとはな」
「上薔薇朔夜」
朔夜の表情が変わる。
「……俺の名前を知ってるのか」
「当然だ」
「お前たちの一族については、すべて記録されている」
朔夜は小さく笑う。
「なら話は早い」
「そこに攫った生徒がいるんだろ?」
兵士は答えない。
朔夜が一歩前へ出る。
「返してもらうぞ」
「それはできない」
「なら――」
朔夜の能力が発動する。
一瞬、
周囲の空気が変わる。
兵士たちが構える。
「やはり……」
「神に抗いし者の血か」
朔夜の目が鋭くなる。
「その名前を知っているのか」
「当然だ」
兵士の一人が笑う。
「お前たちの一族は、我々にとって最も危険な存在だ」
朔夜は黙る。
「なら、なおさら見逃せないな」
戦闘が始まった。
⸻
数分後、
兵士たちは倒れていた。
圧倒的な力であった。
朔夜は施設の入口を見る。
「……中にいる」
扉を開ける。
内部には大量の機械。
そして、
壁一面に並んだ資料。
朔夜は一枚を手に取る。
そこには――
「神に抗いし者」
という文字。
朔夜の表情が変わる。
「……ここまで調べていたのか」
さらにページをめくる。
そこには複数の名前。
そして、
一つの名前が記されていた。
マイル
朔夜は息を止める。
「……」
その時、
施設の奥から声が聞こえた。
「その資料を見つけたか」
朔夜が振り返る。
そこには一人の男が立っていた。
「お前は……?」
「この施設の管理者だ」
男は静かに言う。
「そして、お前がここへ来ることも予想していた」
朔夜は構える。
「なら聞く」
「攫った生徒たちはどこだ」
男は答えた。
「もうここにはいない」
「……何?」
「すでに別の場所へ移した」
朔夜の拳が握られる。
「どこへ」
男は笑う。
「それを知りたければ――」
「この資料の意味を理解することだ」
次回第三十二話
神の計画




