第三十話 迫る影
朝、
マイルは目を覚ます。
机の上のノートを開く。
そこには現在の能力状況が書かれている。
身体強化:使用不可・残り2日
結界生成:使用不可・残り4日
水流操作:使用不可・残り1日
火炎操作:使用中・2日目
雷撃操作:使用不可・残り6日
マイルはその一覧を見つめる。
「……結構バラバラだな」
少し考える。
「でも、明日には水流操作が戻る」
「身体強化もあと2日」
マイルは笑う。
「その頃には、また戦い方を変えられるな」
⸻
教室、
「おはよう、マイル!」
光が手を振る。
「おはよう」
蓮も席から振り返る。
「今日、放課後どうする?」
「訓練かな」
「また?」
「うん」
マイルは少し笑う。
「雷撃操作を使えなくなったから、今は火炎操作をもっと使いこなしたい」
「なるほどな」
信徒はその会話を聞いていた。
しかし、マイルは知らない。
信徒が自分の能力について、すでに神へ報告していることを。
信徒はただ静かにマイルを見る。
(火炎操作……二日目)
(そして、明日には水流操作が戻る)
信徒は心の中だけで情報を整理する。
⸻
昼休み、
四人はいつものように昼食を食べていた。
「そういえば……」
光が口を開く。
「攫われた生徒たち、まだ戻ってきてないんだよね」
空気が少し変わる。
「うん」
マイルが答える。
「学校もまだ詳しいことを教えてくれない」
蓮が箸を止める。
「先生たちも何か隠してる感じがするんだよな」
「……」
信徒は黙っていた。
自分は知っている。
あの事件が、ただの誘拐ではない可能性を。
そして神側も、この事件を利用している。
しかし――
それをマイルたちに伝えることはできない。
「信徒?」
マイルが声をかける。
「どうした?」
「何か知ってる?」
一瞬、
信徒の動きが止まる。
「……いえ」
「何も知りません」
「そっか」
マイルはそれ以上聞かなかった。
信徒は小さく息を吐く。
⸻
放課後、
訓練場。
マイルは一人で標的の前に立つ。
「火炎操作」
ボッ!
炎が手のひらに現れる。
以前よりも遥かに安定している。
「もっと速く」
炎が走る。
標的を一瞬で貫く。
ドンッ!
「よし」
光が拍手する。
「すごい!」
蓮も頷く。
「かなり強くなったな」
マイルは炎を消す。
「でも、まだ足りない」
「攫われた生徒たちのこともあるし……」
マイルは拳を握る。
「もっと強くならないと」
その言葉を聞いた信徒は、少しだけ目を伏せる。
⸻
その夜、
神殿。
信徒が神の前に立っていた。
「報告します」
「マイルは現在、火炎操作を使用中」
「二日目です」
神は静かに聞いている。
「そして?」
「攫われた生徒について、マイルたちも気にしています」
「……そうか」
神は窓の外を見る。
「ならば、そろそろ次の段階へ進める」
信徒が顔を上げる。
「次の段階?」
神は答えない。
「お前はこれまで通り、少年のそばにいろ」
「はい」
「そして――」
神の目が鋭くなる。
「少年が何を守ろうとするのかを見届けろ」
⸻
一方、
神殿から遠く離れた場所。
朔夜は一枚の資料を机に置いていた。
そこには、
攫われた生徒たちの名前。
そして、
彼らが最後に目撃された場所が記されている。
「……やっぱり」
朔夜は地図を見る。
「全部、同じ方向に運ばれている」
その場所には一つの印。
「ここか」
朔夜は立ち上がる。
「神が何をしようとしているのか……」
「そろそろ確かめる必要があるな」
⸻
翌朝、
マイルは目を覚ます。
すぐにカレンダーを見る。
そして――
「……戻った」
水流操作:使用可能
マイルは笑う。
さらにノートを見る。
火炎操作:使用中・3日目
「今日は火炎操作の最後の日か」
そして、
身体強化:使用不可・残り1日
「明日には身体強化も戻る」
マイルは少し嬉しそうにする。
「火と水……」
「それに身体強化」
「また組み合わせられそうだな」
しかし――
マイルはまだ知らない。
その日の放課後。
攫われた生徒たちの行方を追っていた朔夜が、
神側の施設を発見することを。
そして。
その施設の中には――
攫われた生徒たちだけではなく、
マイル自身について調べられた資料が大量に保管されていた。
次回第三十一話
残された記憶




