第三話 重力と身体強化
神聖能力学園。
入学から一週間、
生徒たちは少しずつ学校生活に慣れ始めていた。
しかし、
一年生の間では、ある二人の名前がよく話題になっていた。
⸻
「神崎蓮」
「今年の最有力だろ」
「重力操作って反則じゃないか?」
そしてもう一人。
「上薔薇光」
「治癒能力だって」
「戦闘向きじゃないけど、かなり珍しいらしい」
そして、
誰も注目していない少年、
マイル、能力は身体強化
本人はそれを望んでいた。
目立たない。
普通でいる。
それが一番安全だから。
しかし、
その考えを壊す人物がいた。
「マイル」
昼休み、
声をかけてきたのは神崎蓮だった。
「少し付き合え」
「え?」
「訓練場いくぞ。」
突然の誘い。
周囲がざわつく。
「え、蓮が?」
「身体強化のやつと?」
マイルは困った。
断りたい。
でも、
ここで逃げる方が怪しまれる。
「……分かった」
⸻
訓練場。
二人は向かい合う。
蓮が言う
「模擬戦だ」
「相手を倒す必要はない」
「能力の使い方を見るだけだ」
蓮は構える。
「安心しろ」
「本気で潰すつもりはない」
「ただ、」
「お前が何を隠しているのか知りたい」
マイルの表情が変わる。
「何も隠してない」
蓮は笑った。
「そういうところだ」
「普通の奴は、そんな否定の仕方をしない。」
開始の合図。
次の瞬間、
マイルの足元の感覚が変わった。
重い。
「……!」
重力操作。
蓮は自分ではなく、マイルの周囲だけ重力を変化させた。
「動けるか?」
普通なら膝をつく。
しかし、
マイルは耐えた。
身体強化。
筋肉。
骨。
神経。
全てを強化する。
「へえ」
蓮の目が少し変わる。
「身体強化でそこまで耐えるか」
マイルは距離を詰める。
速い。
しかし、
蓮は重力を操作する。
「遅い」
マイルの体が横に流れる。
攻撃が外れる。
重力。
単純な力ではない。
相手の動きそのものを変える能力。
(強い……)
マイルは考える。
勝つなら、
もっと強い能力を選べる。
例えば、
雷撃操作。
瞬間移動。
時間停止。
でも、
ここで使えば目立つ。
だから、
選ばない。
「まだ隠してるな」
蓮が言う。
「……」
「でも、」
蓮は笑った。
「それでいい」
「全部見せる奴より、隠してる奴の方が面白い」
マイルは少し驚いた。
この人は、
暴こうとしているんじゃない。
ただ、
自分と向き合おうとしている。
模擬戦終了。
結果は引き分け。
「すごいじゃん」
声の方を見る。
光がいた。
「二人とも」
「能力って、こんな使い方できるんだね」
蓮は少し笑う。
「治癒能力者が何を言う」
光は首を振った。
「治すことも戦うことだよ」
「誰かが倒れた時、助ける人がいないと勝てないから」
マイルはその言葉を聞いていた。
強い能力。
弱い能力。
そんな区別を、
彼女はしていない。
⸻
その夜、
神村信徒。
一人の部屋。
机の上にはメモ。
【対象:マイル】
【能力:身体強化】
【危険度:不明】
信徒は文字を見る。
「身体強化……」
今日の模擬戦。
見ていた。
普通の身体強化ではない。
だが、
「監視しろ」と神は言った。
信徒は通信機を起動する。
「報告します」
「対象は能力を隠している可能性があります」
画面の向こう。
神。
「そうか」
「ならば」
「さらに近くで監視しろ」
「彼が何を選ぶ人間なのか」
信徒は答える。
「はい」
一方、
マイルは自室で能力ノートを開いていた。
【取得可能能力】
多数。
その中から一つを選ぶ。
しかし、
彼が選んだのは――
【身体強化】
「これでいい」
強い力ではなく。
自分が選んだ力で進む。
まだ誰も知らない。
この小さな選択が、
世界の未来を変えることを。
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次回第四話
初めて選んだ力




