第二十八話 雷の力
朝、
神聖能力学園。
マイルは目を覚ますと、机の上のノートを開いた。
能力の状況を確認する。
⸻
雷撃操作――使用中・2日目
身体強化――使用不可・残り5日
結界生成――使用不可・残り7日
水流操作――使用不可・残り4日
火炎操作――使用不可・残り1日
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「……雷撃操作、二日目か」
マイルは窓の外を見る。
昨日から使い始めた雷撃操作。
今まで使ってきた能力とは、明らかに違っていた。
速度。
威力。
そして、扱いの難しさ。
「まだ全然使いこなせてないな」
マイルはノートを閉じた。
「今日も練習しないと」
⸻
教室、
「おはよう、マイル!」
光が手を振る。
「おはよう」
「雷撃操作、どう?」
「まだ練習中」
蓮が振り返る。
「昨日見た感じだと、かなり強そうだったけどな」
「強いけど……」
マイルは少し考える。
「速すぎて、自分でも制御が難しい」
「なるほど」
信徒も静かに聞いている。
「雷は扱いが難しい能力ですからね」
「え?」
マイルが信徒を見る。
「雷撃操作について知ってるの?」
一瞬。
信徒の表情が止まる。
「……一般的な能力理論として知っているだけです」
「そっか」
マイルはそれ以上気にしなかった。
信徒は視線を落とす。
(危ないところでした)
(彼にはまだ、私がどこまで知っているか知られるわけにはいかない)
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一時間目。
能力理論。
教師が黒板に文字を書く。
『能力の制御』
「能力には、単純な威力だけでは測れない強さがあります」
「特に、高出力型の能力は制御を失えば自分自身を危険にさらす」
マイルはその言葉を聞きながら、自分の雷撃操作を思い出す。
(やっぱり制御が重要なんだ)
教師は続ける。
「強力な能力ほど、使用者の技術が必要になる」
マイルはノートに書く。
雷撃操作――威力より制御
⸻
放課後、
訓練場。
マイル、光、蓮、信徒の四人が集まる。
「今日は何をする?」
光が聞く。
「雷撃操作の練習」
マイルは訓練用の標的を見る。
「昨日は雷を出すだけで精一杯だったから」
蓮が頷く。
「なら、今日は狙いを絞る練習だな」
「うん」
訓練開始。
マイルが手を前に出す。
「雷撃操作」
バチッ!!
青白い光が手の周囲を走る。
「……!」
昨日より安定している。
マイルは一つ目の標的を見る。
「いくぞ」
バシュッ!!
雷が一直線に飛ぶ。
標的の中心を貫く。
「命中!」
光が喜ぶ。
「すごい!」
「まだだ」
マイルは次の標的を見る。
今度は三つ。
「同時に狙える?」
蓮が聞く。
「やってみる」
マイルは集中する。
右手に雷。
左手にも雷。
二つの雷撃が別々の標的へ向かう。
バシュッ!
バシュッ!
二つとも命中。
「おお!」
光が驚く。
「二方向に同時に撃てるんだ!」
マイルは少し笑う。
「でも……」
息を整える。
「かなり集中力を使う」
蓮が言う。
「無理に威力を上げる必要はないな」
「うん」
マイルは頷く。
「今は正確に撃てることを優先する」
信徒は黙って見ていた。
(雷撃操作……)
(昨日より明らかに熟練度が上がっている)
そして、
信徒はマイルの能力状況を頭の中で確認する。
雷撃操作は使用中。
身体強化、結界生成、水流操作、火炎操作は使用できない。
(今の彼は、雷撃操作だけで戦っている)
(それでも……)
信徒はマイルを見る。
(以前より強くなっている)
⸻
その時、
訓練場の外から、
警報が鳴った。
ビーッ!!
四人が振り返る。
「また……?」
光の顔が曇る。
教師が訓練場へ入ってくる。
「全員、訓練を中止しろ!」
蓮が尋ねる。
「何があったんですか?」
教師は険しい表情をしている。
「例の生徒について、新しい情報が入った」
マイルの表情が変わる。
攫われた生徒。
まだ見つかっていない。
「何か分かったんですか?」
教師は頷く。
「学園の外で、その生徒の能力反応に似た反応が確認された」
「……!」
光が息を呑む。
「じゃあ、生きてるってこと?」
「まだ断定はできない」
教師は答える。
「だが、学園として捜索を続ける」
マイルは拳を握る。
「……助けないと」
蓮が横を見る。
「マイル」
「分かってる」
マイルは頷く。
「勝手に動いたりはしない」
教師が続ける。
「今回の件は非常に危険だ」
「犯人が学園を狙っている可能性もある」
その言葉を聞いた瞬間。
マイルは思い出す。
最近、何度も現れている黒い服の男。
「……」
信徒も何かを考えている。
(やはり、関係しているのか……?)
⸻
その夜、
神殿。
信徒は神の前に立っていた。
「報告します」
「学園で、攫われた生徒に関係する反応が確認されました」
神は静かに聞いている。
「場所は?」
「学園の外です」
神は少し考える。
「……まだ生きているか」
「可能性はあります」
神は窓の外を見る。
「ならば、利用できる」
信徒の表情がわずかに変わる。
「利用……?」
神は振り返る。
「その生徒を探すため、マイルが動く可能性がある」
「……」
「彼が自分から危険な場所へ向かうのなら」
神は静かに笑う。
「こちらにとっても都合がいい」
信徒は黙って頭を下げる。
しかし。
胸の奥に、初めて小さな違和感が生まれていた。
(攫われた生徒を……)
(神は助けるつもりではない?)
信徒はその疑問を押し殺す。
⸻
一方、
学園から離れた場所。
朔夜は暗い部屋で端末を見ていた。
そこには、学園周辺の地図。
そして、一つの赤い印。
「……見つかったか」
朔夜は呟く。
「だが、これは罠だ」
端末には別の情報が表示されている。
「神側も動いている」
朔夜は立ち上がる。
「マイルをそこへ行かせるわけにはいかない」
しかし、
一瞬、迷う。
「……いや」
「まだ俺が直接出るわけにはいかない」
朔夜は端末を閉じる。
「もし俺が姿を見せれば」
「神に、マイルとの関係を知られる」
「それだけは避けないといけない」
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翌朝、
マイルは学校へ向かっていた。
能力の状況を確認する。
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雷撃操作――使用中・3日目
身体強化――使用不可・残り4日
結界生成――使用不可・残り6日
水流操作――使用不可・残り3日
火炎操作――使用可能
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「火炎操作が戻ったか」
マイルは少し考える。
「でも、今は雷撃操作を続けよう」
昨日より。
今日。
今日より。
明日。
少しずつ強くなっていく。
マイルは前を向く。
「マイル!」
光と蓮と合流した。一緒に学校へ向かう。
その時、
遠くの路地裏。
一瞬だけ、
黒い服の男が見えた。
マイルが立ち止まる。
「……!」
男は振り返る。
目が合った。
しかし、
次の瞬間、
男は走り出した。
「待て!」
マイルも追いかける。
「マイル!」
光たちが驚く。
蓮が叫ぶ。
「危険だ!」
しかし、
マイルは走りながら手を前に出す。
バチッ!!
雷が手の周囲を走る。
「止まれ!」
雷撃を放とうとする。
その瞬間、
男が路地裏の角を曲がった。
マイルも追いかける。
だが、
そこには誰もいなかった。
「……消えた?」
マイルは周囲を見る。
地面には、
小さな黒い金属片が落ちている。
マイルはそれを拾う。
「……これ、何だ?」
少し離れた場所から。
蓮が追いついてくる。
「マイル!」
「大丈夫」
「一人で追うなよ」
「ごめん」
マイルは金属片を見る。
その裏側には、
小さな紋章が刻まれていた。
「……何のマークだ?」
マイルには分からない。
しかし、
信徒はその紋章を見たことがある。
そして、
目を見開く。
(……この紋章)
(神側のものではない)
(まさか――)
信徒は何も言わなかった。
マイルにも、
光にも、
蓮にも、
ただ一人。
その紋章の意味を知る信徒だけが、
静かにそれを見つめていた。
そして、
その頃、
遠くの建物の屋上。
朔夜がマイルたちを見ていた。
「……見つけたか」
朔夜は小さく呟く。
「だが、まだそれがお前に繋がるものだとは知らない」
風が吹く。
朔夜は空を見上げる。
「もう少しだ」
そして、
静かに姿を消した。
少年の知らないところで。
神と、
朔夜と、
そして攫われた生徒を巡る事件が、
少しずつ、
一つに繋がり始めていた。
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