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神に抗いし者  作者: あbc
第一部 孤独な少年と能力
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29/40

第二十八話 雷の力

朝、


神聖能力学園。


マイルは目を覚ますと、机の上のノートを開いた。


能力の状況を確認する。


⸻


雷撃操作――使用中・2日目


身体強化――使用不可・残り5日


結界生成――使用不可・残り7日


水流操作――使用不可・残り4日


火炎操作――使用不可・残り1日


⸻


「……雷撃操作、二日目か」


マイルは窓の外を見る。


昨日から使い始めた雷撃操作。


今まで使ってきた能力とは、明らかに違っていた。


速度。


威力。


そして、扱いの難しさ。


「まだ全然使いこなせてないな」


マイルはノートを閉じた。


「今日も練習しないと」


⸻


教室、


「おはよう、マイル!」


光が手を振る。


「おはよう」


「雷撃操作、どう?」


「まだ練習中」


蓮が振り返る。


「昨日見た感じだと、かなり強そうだったけどな」


「強いけど……」


マイルは少し考える。


「速すぎて、自分でも制御が難しい」


「なるほど」


信徒も静かに聞いている。


「雷は扱いが難しい能力ですからね」


「え?」


マイルが信徒を見る。


「雷撃操作について知ってるの?」


一瞬。


信徒の表情が止まる。


「……一般的な能力理論として知っているだけです」


「そっか」


マイルはそれ以上気にしなかった。


信徒は視線を落とす。


(危ないところでした)


(彼にはまだ、私がどこまで知っているか知られるわけにはいかない)


⸻


一時間目。


能力理論。


教師が黒板に文字を書く。


『能力の制御』


「能力には、単純な威力だけでは測れない強さがあります」


「特に、高出力型の能力は制御を失えば自分自身を危険にさらす」


マイルはその言葉を聞きながら、自分の雷撃操作を思い出す。


(やっぱり制御が重要なんだ)


教師は続ける。


「強力な能力ほど、使用者の技術が必要になる」


マイルはノートに書く。


雷撃操作――威力より制御


⸻


放課後、


訓練場。


マイル、光、蓮、信徒の四人が集まる。


「今日は何をする?」


光が聞く。


「雷撃操作の練習」


マイルは訓練用の標的を見る。


「昨日は雷を出すだけで精一杯だったから」


蓮が頷く。


「なら、今日は狙いを絞る練習だな」


「うん」


訓練開始。


マイルが手を前に出す。


「雷撃操作」


バチッ!!


青白い光が手の周囲を走る。


「……!」


昨日より安定している。


マイルは一つ目の標的を見る。


「いくぞ」


バシュッ!!


雷が一直線に飛ぶ。


標的の中心を貫く。


「命中!」


光が喜ぶ。


「すごい!」


「まだだ」


マイルは次の標的を見る。


今度は三つ。


「同時に狙える?」


蓮が聞く。


「やってみる」


マイルは集中する。


右手に雷。


左手にも雷。


二つの雷撃が別々の標的へ向かう。


バシュッ!


バシュッ!


二つとも命中。


「おお!」


光が驚く。


「二方向に同時に撃てるんだ!」


マイルは少し笑う。


「でも……」


息を整える。


「かなり集中力を使う」


蓮が言う。


「無理に威力を上げる必要はないな」


「うん」


マイルは頷く。


「今は正確に撃てることを優先する」


信徒は黙って見ていた。


(雷撃操作……)


(昨日より明らかに熟練度が上がっている)


そして、


信徒はマイルの能力状況を頭の中で確認する。


雷撃操作は使用中。


身体強化、結界生成、水流操作、火炎操作は使用できない。


(今の彼は、雷撃操作だけで戦っている)


(それでも……)


信徒はマイルを見る。


(以前より強くなっている)


⸻


その時、


訓練場の外から、


警報が鳴った。


ビーッ!!


四人が振り返る。


「また……?」


光の顔が曇る。


教師が訓練場へ入ってくる。


「全員、訓練を中止しろ!」


蓮が尋ねる。


「何があったんですか?」


教師は険しい表情をしている。


「例の生徒について、新しい情報が入った」


マイルの表情が変わる。


攫われた生徒。


まだ見つかっていない。


「何か分かったんですか?」


教師は頷く。


「学園の外で、その生徒の能力反応に似た反応が確認された」


「……!」


光が息を呑む。


「じゃあ、生きてるってこと?」


「まだ断定はできない」


教師は答える。


「だが、学園として捜索を続ける」


マイルは拳を握る。


「……助けないと」


蓮が横を見る。


「マイル」


「分かってる」


マイルは頷く。


「勝手に動いたりはしない」


教師が続ける。


「今回の件は非常に危険だ」


「犯人が学園を狙っている可能性もある」


その言葉を聞いた瞬間。


マイルは思い出す。


最近、何度も現れている黒い服の男。


「……」


信徒も何かを考えている。


(やはり、関係しているのか……?)


⸻


その夜、


神殿。


信徒は神の前に立っていた。


「報告します」


「学園で、攫われた生徒に関係する反応が確認されました」


神は静かに聞いている。


「場所は?」


「学園の外です」


神は少し考える。


「……まだ生きているか」


「可能性はあります」


神は窓の外を見る。


「ならば、利用できる」


信徒の表情がわずかに変わる。


「利用……?」


神は振り返る。


「その生徒を探すため、マイルが動く可能性がある」


「……」


「彼が自分から危険な場所へ向かうのなら」


神は静かに笑う。


「こちらにとっても都合がいい」


信徒は黙って頭を下げる。


しかし。


胸の奥に、初めて小さな違和感が生まれていた。


(攫われた生徒を……)


(神は助けるつもりではない?)


信徒はその疑問を押し殺す。


⸻


一方、


学園から離れた場所。


朔夜は暗い部屋で端末を見ていた。


そこには、学園周辺の地図。


そして、一つの赤い印。


「……見つかったか」


朔夜は呟く。


「だが、これは罠だ」


端末には別の情報が表示されている。


「神側も動いている」


朔夜は立ち上がる。


「マイルをそこへ行かせるわけにはいかない」


しかし、


一瞬、迷う。


「……いや」


「まだ俺が直接出るわけにはいかない」


朔夜は端末を閉じる。


「もし俺が姿を見せれば」


「神に、マイルとの関係を知られる」


「それだけは避けないといけない」


⸻


翌朝、


マイルは学校へ向かっていた。


能力の状況を確認する。


⸻


雷撃操作――使用中・3日目


身体強化――使用不可・残り4日


結界生成――使用不可・残り6日


水流操作――使用不可・残り3日


火炎操作――使用可能


⸻


「火炎操作が戻ったか」


マイルは少し考える。


「でも、今は雷撃操作を続けよう」


昨日より。


今日。


今日より。


明日。


少しずつ強くなっていく。


マイルは前を向く。


「マイル!」


光と蓮と合流した。一緒に学校へ向かう。


その時、


遠くの路地裏。


一瞬だけ、


黒い服の男が見えた。


マイルが立ち止まる。


「……!」


男は振り返る。


目が合った。


しかし、


次の瞬間、


男は走り出した。


「待て!」


マイルも追いかける。


「マイル!」


光たちが驚く。


蓮が叫ぶ。


「危険だ!」


しかし、


マイルは走りながら手を前に出す。


バチッ!!


雷が手の周囲を走る。


「止まれ!」


雷撃を放とうとする。


その瞬間、


男が路地裏の角を曲がった。


マイルも追いかける。


だが、


そこには誰もいなかった。


「……消えた?」


マイルは周囲を見る。


地面には、


小さな黒い金属片が落ちている。


マイルはそれを拾う。


「……これ、何だ?」


少し離れた場所から。


蓮が追いついてくる。


「マイル!」


「大丈夫」


「一人で追うなよ」


「ごめん」


マイルは金属片を見る。


その裏側には、


小さな紋章が刻まれていた。


「……何のマークだ?」


マイルには分からない。


しかし、


信徒はその紋章を見たことがある。


そして、


目を見開く。


(……この紋章)


(神側のものではない)


(まさか――)


信徒は何も言わなかった。


マイルにも、


光にも、


蓮にも、


ただ一人。


その紋章の意味を知る信徒だけが、


静かにそれを見つめていた。


そして、


その頃、


遠くの建物の屋上。


朔夜がマイルたちを見ていた。


「……見つけたか」


朔夜は小さく呟く。


「だが、まだそれがお前に繋がるものだとは知らない」


風が吹く。


朔夜は空を見上げる。


「もう少しだ」


そして、


静かに姿を消した。


少年の知らないところで。


神と、


朔夜と、


そして攫われた生徒を巡る事件が、


少しずつ、


一つに繋がり始めていた。

次回第二十九話

 残された選択

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