第二十七話 新たなる力
朝、
神聖能力学園。
マイルは目を覚ますと、机の上のノートを開いた。
現在の能力状況を確認する。
身体強化:使用不可 残り6日
結界生成:使用可能 残り1日
水流操作:使用不可 残り5日
火炎操作:使用不可 残り2日
マイルは小さく息を吐いた。
「……結構使えないな」
それでも、焦りはなかった。
今までにも何度も能力を使えない期間を経験している。
そしてマイルには――
まだ神に抗いし者がある。
「今日は新しいのを試してみるか」
⸻
教室、
「おはよう、マイル!」
光が手を振る。
「おはよう」
蓮もマイルの方を見る。
「今日はどの能力だ?」
「まだ決めてない」
「また新しい能力か」
「うん」
信徒は黙って聞いていた。
(身体強化、水流操作、火炎操作……)
(現在、複数の能力が使用不能)
信徒は表情を変えない。
しかし、内心では状況を正確に把握していた。
(それでも、彼にはまだ選択肢が残されている)
マイルはノートを閉じた。
「放課後に決めるよ」
⸻
昼休み、
四人はいつものように昼食を食べていた。
しかし――
校内放送が流れる。
『生徒の皆さんに連絡します』
『先日発生した生徒失踪事件について、現在も捜索を継続しています』
教室の空気が少し変わった。
光が箸を止める。
「……まだ見つかってないんだ」
蓮が頷く。
「ああ」
「先生たちもかなり探してるらしいけどな」
マイルは黙っていた。
以前なら、ただの学園の事件として考えていたかもしれない。
だが最近は違う。
学園周辺に現れる不審者。
謎の男。
そして――
行方不明になった生徒。
「……偶然なのかな」
マイルが呟く。
「何が?」
光が聞く。
「いや」
マイルは首を振った。
「なんでもない」
信徒はマイルを見る。
(……彼も気づき始めている)
しかし、
信徒自身も知らない。
あの生徒がどこへ連れ去られたのか。
神から与えられた情報は、
「監視を続けろ」
それだけだった。
⸻
放課後、
訓練場。
マイルは一人で立っていた。
「さて……」
目を閉じる。
頭の中に複数の能力が浮かぶ。
身体強化。
結界生成。
水流操作。
火炎操作。
そして――
まだ使ったことのない能力。
「これにするか」
マイルが選んだのは、
雷撃操作。
能力を選択した瞬間。
頭に軽い痛みが走る。
「……っ」
数秒、
痛みが消える。
マイルは手を前へ出した。
「雷撃操作」
――バチッ!!
青白い電撃が指先から走る。
「……!」
マイル自身がも驚く。
「速い……」
小さな電撃を放つ。
パァン!
訓練用の標的が一瞬で破壊された。
「……強い」
マイルは目を見開く。
その時、
「マイル!」
光たちが入ってきた。
「今の何!?」
「雷撃操作」
「雷!?」
光の目が輝く。
蓮も標的を見る。
「一撃で壊したのか?」
「うん……」
マイルは自分の手を見る。
「まだ全然使いこなせてないけど」
信徒は少し離れた場所から見ていた。
(雷撃操作……)
(新しい能力を選択したか)
信徒はそこで一つ気づく。
マイルが今まで使っていた能力とは違う。
明らかに攻撃性能が高い。
(もしこの能力を完全に使いこなせば……)
信徒は考える。
(かなりの戦力になる)
「もう一回やってみよう」
マイルは標的を並べる。
一体。
二体。
三体。
「雷撃操作!」
バチィッ!!
電撃が標的を次々と走る。
しかし――
三体目を狙った瞬間。
電撃が大きく逸れた。
「うわっ!」
マイルが慌てて止める。
「危なかった……」
蓮が言う。
「威力は高いけど、制御が難しいな」
「うん」
マイルは頷く。
「火炎操作よりも速い」
「でも、その分細かい操作が難しい」
光が笑う。
「じゃあまた特訓だね!」
「そうだな」
マイルも笑った。
⸻
その夜、
神殿。
信徒は神の前に立っていた。
「報告します」
「マイルが新たな能力を選択しました」
神が顔を上げる。
「能力名は?」
「雷撃操作です」
「……雷か」
神は静かに笑う。
「強力な能力を選んだな」
「はい」
「他の能力の状態は?」
信徒は答える。
「身体強化は使用不可」
「結界生成は使用可能ですが、使用期間は今日で終了」
「水流操作、火炎操作も使用不可期間中です」
神はしばらく黙る。
そして、
「つまり今の奴は」
「雷撃操作に頼らざるを得ない」
「そうなります」
神の口元がわずかに上がる。
「ならば――」
「その能力を試させてみろ」
信徒が顔を上げる。
「……何を?」
神は答えなかった。
ただ一言。
「学園の外で起きている事件を利用する」
⸻
同じ頃、
学園から遠く離れた場所。
暗い建物。
そこに――
先日、行方不明になった生徒がいた。
まだ解放されていない。
少年は不安そうに周囲を見回す。
「ここ……どこなんだ……」
その前に、
一人の男が立っていた。
「もう少しだ」
男は端末を見る。
そこには、
マイルの情報。
そして、
新しく追加された文字。
『雷撃操作』
男は静かに呟く。
「新しい能力を選んだか」
そして、
小さく笑う。
「これで……少しだけ計画を進められる」
⸻
一方、
学園の屋上。
朔夜は夜空を見上げていた。
「雷撃操作……」
マイルの能力の変化を把握している。
「今のマイルは、かなり能力が制限されている」
「だからこそ――」
朔夜は学園を見る。
「次に神が仕掛けてくる可能性が高い」
朔夜は拳を握る。
「……もう少しだけ待つつもりだったが」
「そうも言ってられないかもしれないな」
⸻
翌朝、
マイルはノートを開く。
現在の能力状況。
雷撃操作:使用中・2日目
身体強化:使用不可・残り5日
結界生成:使用不可・残り7日
水流操作:使用不可・残り4日
火炎操作:使用不可・残り1日
マイルはその一覧を見つめる。
「結界生成も今日で終わりか」
そして、
「明日には火炎操作も戻る」
マイルは雷撃を小さく指先に発生させる。
「それまでに……」
バチッ。
「この能力を使いこなす」
少年はまだ知らない。
その日の放課後、
学園で起きている事件が、
ついにマイル自身を巻き込もうとしていることを。
そして――
行方不明になった生徒が、
その事件の中心にいることを。
次回第二十八話
雷の力




