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神に抗いし者  作者: あbc
第一部 孤独な少年と能力
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27/40

第二十六話 失った力、守った力

朝、


神聖能力学園。


マイルは目を覚ますと、机の上のノートを開いた。


昨日まで使っていた能力を確認する。


身体強化:使用不可・残り7日


水流操作:使用不可・残り6日


結界生成:使用可能・残り2日


火炎操作:使用不可期間中・残り3日


「……身体強化、今日から使えないか」


マイルは少しだけ寂しそうに呟く。


三日間、


身体強化を使い続けた。


そして昨日、


その使用期間を終えた。


「まあ、仕方ない」


マイルはノートを閉じる。


「結界生成がある」


そして、


「他にも使える能力はある」


マイルは立ち上がった。


⸻


教室、


「おはよう、マイル!」


光がいつものように手を振る。


「おはよう」


蓮がマイルを見る。


「今日から身体強化が使えないんだったな」


「うん」


「大丈夫か?」


「大丈夫」


マイルは笑う。


「身体強化がなくても戦えるようにする」


光が笑う。


「じゃあ今日は何を使うの?」


「まだ決めてない」


マイルは少し考える。


「放課後に決めるよ」


信徒はその会話を静かに聞いていた。


(身体強化が使用不可になった)


(現在使用できる能力は――)


信徒はそれ以上考えるのをやめる。


マイル本人には、


自分がどこまで知っているのか知られない方がいい。


⸻


昼休み、


四人はいつものように昼食を食べていた。


「昨日の帰り、変な人いなかった?」


光が言う。


蓮が首を傾げる。


「いたか?」


「なんとなく、後ろに誰かいた気がしたんだよね」


マイルも少し考える。


「……俺も」


信徒が顔を上げる。


「本当ですか?」


「うん」


「でも、振り返ったら誰もいなかった」


蓮が笑う。


「気のせいじゃないか?」


「そうかも」


マイルも笑った。


しかし、


信徒だけは笑っていなかった。


(昨日の男……)


(やはり、まだ近くにいる)


⸻


放課後、


訓練場。


マイルは一人で能力を選んでいた。


「身体強化は使えない」


「水流操作もまだ無理」


「火炎操作もあと三日」


残っている能力。


その中から一つを選ぶ。


「……今日は」


マイルは手を前に出す。


「結界生成」


光の壁が現れる。


「これを使う」


蓮が頷く。


「昨日かなり使いこなしてたからな」


「うん」


マイルは結界を展開する。


壁。


球体。


薄い膜。


そして、


小さな板状の結界。


「身体強化がないなら」


マイルは結界を足元へ展開する。


「こういう使い方もできる」


結界を足場にして跳ぶ。


「おお!」


光が驚く。


マイルは空中で結界を作り、


それを踏んでさらに跳ぶ。


一気に高い位置まで移動する。


「身体強化がなくても、動き方は作れる」


蓮が笑う。


「相変わらず考えてるな」


その時、


訓練場の扉が開いた。


教師が入ってくる。


「全員、訓練を中止しろ」


「え?」


光が振り返る。


教師の表情は険しい。


「学園の東側で異常が確認された」


蓮が立ち上がる。


「侵入者ですか?」


「まだ分からない」


教師は続ける。


「ただし――」


一瞬、沈黙。


「生徒の一人が行方不明になっている」


「……!」


マイルの表情が変わる。


「誰が?」


「君たちと同じ学年の生徒だ」


光が不安そうにマイルを見る。


「大丈夫かな……」


「探しに行こう」


マイルが言う。


教師が止める。


「待て」


「危険だ」


「でも――」


「教師が対応する」


教師が強く言う。


「君たちはここにいろ」


マイルは拳を握る。


身体強化は使えない。


水流操作も使えない。


それでも。


「……分かりました」


マイルは頷いた。


⸻


しかし、


数分後、


学園内に警報が鳴り響く。


ビーッ!!


「なに!?」


光が立ち上がる。


教師が外を見る。


「……!」


「どうしたんですか?」


蓮が聞く。


教師は答えない。


その瞬間、


訓練場の窓が、


ガンッ!!


大きく揺れた。


「攻撃!?」


蓮が重力操作を構える。


マイルも前へ出る。


「結界生成!」


巨大な結界が展開される。


ドォン!!


何かが結界にぶつかった。


「くっ……!」


マイルの足が後ろへ滑る。


身体強化がない。


いつもなら、


ここから一気に反撃できる。


だが今は違う。


「マイル!」


光が叫ぶ。


「大丈夫!」


マイルは結界を維持する。


もう一度、


ドォン!!


結界に衝撃が走る。


「強い……!」


蓮が前に出る。


「俺が押さえる!」


「お願い!」


重力操作。


ズンッ!!


外側の何かの動きが鈍る。


マイルは結界を変形させる。


壁から、


細長い形へ。


そして、


地面へ伸ばす。


「これなら!」


結界を一気に押し出す。


ドォン!!


外にいた人物が吹き飛ばされる。


「今!」


教師が外へ出る。


しかし。


そこには誰もいなかった。


ただ、


地面に小さな装置が落ちている。


教師が拾い上げる。


「……これは」


マイルたちも外へ出る。


「逃げた?」


蓮が周囲を見る。


教師が装置を確認する。


「これは学園の警備システムを一時的に停止させるためのものだ」


マイルの表情が変わる。


「じゃあ、さっきの攻撃は……」


「陽動だ」


教師が答える。


「本当の目的は別にある」


⸻


時間は少し遡り、


学園の別の場所。


一人の生徒が、


誰もいない廊下を歩いていた。


その背後、


黒い影。


「……誰?」


生徒が振り返る。


しかし、


そこには誰もいない。


次の瞬間、


視界が暗くなる。


⸻


訓練場、


「先生!」


一人の教師が走ってくる。


「どうした?」


「行方不明の生徒、見つかりません!」


マイルの顔が強張る。


「……!」


光も青ざめる。


「さっきの生徒?」


教師が頷く。


「そうだ」


マイルは拳を握る。


身体強化は使えない。


水流操作も使えない。


でも、


「探そう」


蓮が言う。


「俺も行く」


光も頷く。


「私も!」


信徒も立ち上がる。


「僕も行きます」


教師は少し迷った。


しかし、


「……分かった」


四人は学園内を走る。


「こっち!」


マイルが叫ぶ。


廊下の角、


そこに、


小さな痕跡が残っていた。


「……これ」


マイルがしゃがむ。


床に黒い粉のようなもの。


信徒が見る。


(この痕跡……)


以前、学園周辺で見たものと似ている。


「知ってるの?」


マイルが聞く。


信徒は一瞬だけ止まる。


「……いえ」


「初めて見ました」


マイルは頷く。


「そっか」


信徒は視線を落とす。


(嘘をついた)


しかし、


今は、それしかできなかった。


⸻


その頃、


学園の外。


黒い服の男が走っていた。


「……予定より早い」


端末を確認する。


『生徒の確保に成功』


男は足を止める。


「よし」


しかし、


その背後。


「動くな」


男が振り返る。


教師が立っていた。


「……!」


男は逃げようとする。


しかし、


重力がかかる。


「重力操作!」


ズンッ!!


男の動きが止まる。


「捕まえた」


教師が近づく。


男は笑う。


「……遅かったな」


「何?」


「もう始まっている」


その言葉と同時に、


男は小さな装置を地面へ落とした。


教師が警戒する。


しかし、


装置は何も起こさない。


「……?」


男は笑う。


「今回は、ただの確認だ」


「何の確認だ?」


男は答えない。


そして、


「マイルは――」


そこまで言って、


口を閉じた。


教師が目を細める。


「今、何と言った?」


男は黙る。


⸻


夜、


神殿。


信徒が神の前に立つ。


「報告します」


「学園への侵入者が確認されました」


神は静かに聞く。


「目的は?」


「生徒一名を狙ったものと思われます」


「マイルは?」


「無事です」


神は少しだけ笑う。


「身体強化を失った状態でも、結界生成だけで対応したか」


信徒が顔を上げる。


「……ご存じだったのですか?」


「当然だ」


神は窓の外を見る。


「能力を一つ失った程度で、奴は止まらない」


「むしろ――」


神は静かに続ける。


「別の戦い方を覚えていく」


⸻


一方、


朔夜は学園から少し離れた場所にいた。


端末を見る。


「……やっぱり始まったか」


マイルの能力状況を確認する。


身体強化――使用不可


水流操作――使用不可


結界生成――使用可能


火炎操作――使用不可期間中


朔夜は眉をひそめる。


「今のあいつは、以前より戦いにくい」


「だが……」


朔夜は小さく笑う。


「それでも、あいつなら大丈夫だ」


そして。


「俺が出るのは、まだ先だ」


⸻


深夜、


マイルの部屋。


マイルはノートを開く。


⸻


身体強化:使用不可・残り7日


水流操作:使用不可・残り6日


結界生成:使用可能・残り2日


火炎操作:使用不可・残り3日


⸻


「身体強化がなくても」


マイルは今日の戦いを思い出す。


「結界だけで、なんとかできた」


そして、


「もっと強くしないとな」


マイルは新しいページを開く。


そこに、


「結界生成――応用」


と書く。


しかし、


ページの下に、


小さく別の文字を書く。


「守りたいものを守るために」


マイルはペンを置いた。


まだ知らない。


今日の事件が、


ただの侵入事件ではなかったことを。


そして、


今日狙われた生徒が、


これから起こる大きな事件の鍵になることを。

第二十七話 新たなる力

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