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神に抗いし者  作者: あbc
第一部 孤独な少年と能力
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26/40

第二十五話 狙われた日常

朝、


神聖能力学園。


マイルは教室へ向かいながら、昨日の戦いを思い出していた。


身体強化と水流操作。


二つの能力を同時に使えるようになってから、戦い方が大きく変わった。


だが――


マイルには、まだ一つ問題があった。


教室に入る前。


マイルはスマートフォンを取り出し、能力の記録を確認する。


⸻


身体強化:使用中・3日目


水流操作:使用不可・残り7日


結界生成:使用可能


火炎操作:使用不可期間中・残り4日


⸻


「……よし」


マイルはスマートフォンをしまう。


「身体強化はもう今日だけ」


そして、


「水流操作はしばらく使えない」


昨日で三日間が終了したため、再び取得できなくなっている。


それでも、


「結界生成が使えるだけ、まだ戦える」


マイルは教室へ入った。


「おはよう、マイル!」


光が手を振る。


「おはよう」


蓮も振り返る。


「昨日の訓練、かなり動けてたな」


「少しずつ慣れてきた」


「身体強化と水流操作を同時に使えるようになったのは大きいな」


マイルは頷く。


「うん」


信徒も静かに聞いていた。


(身体強化と水流操作……)


(同時使用は、これで三度目)


信徒はマイルを見る。


(以前よりも明らかに安定している)


しかし、


そのことを口には出さない。


「マイル」


「ん?」


「今日はどの能力を使う予定ですか?」


マイルは少し考える。


「身体強化かな」


「そうですか」


信徒はそれ以上聞かなかった。


マイルは知らない。


信徒が自分の能力について、どこまで把握しているのか。


⸻


昼休み。


四人はいつものように昼食を食べていた。


「今度の休日どうする?」


光が聞く。


「映画でもいいし、どこか遊びに行くのもいいな」


蓮が答える。


「私は遊園地がいい!」


「また?」


「だって楽しいじゃん!」


マイルが笑う。


「じゃあ、今度また行こうか」


「本当!?」


光が嬉しそうに笑う。


信徒も小さく笑った。


「楽しそうですね」


その瞬間、


教室の外を、一人の教師が通り過ぎた。


その教師は一瞬だけ


四人の方へ視線を向けた。


そして、


何事もなかったように歩いていく。


⸻


放課後、


四人は訓練場へ向かった。


「今日は実戦形式でやろう」


蓮が言う。


「分かった」


マイルが構える。


教師が訓練用ゴーレムを出現させる。


一体。


二体。


そして――


三体。


「三体か」


蓮が構える。


「いつもより多いね」


光が言う。


教師は何も言わない。


「開始」


ゴーレムが一斉に動き出す。


「重力操作!」


蓮が地面へ手を向ける。


ズンッ!!


三体の動きが鈍る。


「今だ!」


マイルが走る。


「身体強化!」


一気に加速する。


一体目へ接近。


拳を振り抜く。


ドォン!!


ゴーレムが吹き飛ぶ。


「一体!」


二体目が迫る。


マイルは拳を構える。


その瞬間。


ゴーレムの腕が伸びる。


「っ!」


避ける。


しかし、


その先に三体目。


「しまった!」


攻撃が迫る。


マイルは瞬時に判断する。


身体強化だけでは間に合わない。


「結界生成!」


ガンッ!!


目の前に結界が展開される。


攻撃を防ぐ。


そして、


マイルは身体強化を維持したまま結界を操作する。


結界の角度を変える。


ゴーレムの腕が弾かれる。


「今!」


マイルが踏み込む。


身体強化によって加速。


結界で作った隙を利用する。


「はあっ!!」


ドォン!!


二体目が崩れ落ちる。


残り一体。


蓮が重力を集中させる。


「任せた!」


「分かった!」


マイルは身体強化を維持する。


結界を前方へ展開。


ゴーレムの攻撃を防ぐ。


その瞬間、


結界を解除。


身体強化で一気に距離を詰める。


「これで――!」


ドォン!!


最後のゴーレムが倒れた。


静寂。


「……終わった」


マイルは息を吐く。


光が駆け寄る。


「すごい!」


蓮も頷く。


「三回目ともなると、かなり自然に使えるようになったな」


マイルは少し笑う。


「身体強化と結界生成の組み合わせ、結構いいかもしれない」


信徒はその姿を見ていた。


(身体強化と結界生成……)


(水流操作は現在使えない)


(それでも、戦える)


マイルは能力を失っているわけではない。


使えない能力があるなら。


使える能力で戦い方を変える。


それがマイルの強さになりつつあった。


⸻


しかし、


その日の訓練は、


本当にただの訓練ではなかった。


訓練場を出たマイルたち。


「今日は疲れたな」


蓮が言う。


「お腹すいた!」


光が笑う。


「何か食べて帰ろうよ」


「いいね」


四人は学園を出る。


いつもの帰り道。


いつもの会話。


いつもの日常。


その少し後ろ。


一人の男が歩いていた。


黒い服。


帽子を深くかぶっている。


男はマイルたちを見る。


そして、


小さな端末を取り出した。


「確認した」


『何を?』


「身体強化と結界生成」


『……なるほど』


「水流操作は使っていない」


『なら、今が狙い目だ』


男はマイルたちを見る。


しかし、


「いや」


男は静かに答えた。


「まだ動けない」


『なぜ?』


「今、マイルの近くには仲間がいる」


「そして、学園側も警戒している」


『……分かった』


通信が切れる。


男はその場を離れた。


その正体を、


マイルは知らない。


⸻


夜、


神殿。


信徒が神の前に立つ。


「本日の報告です」


「マイルは身体強化と結界生成を同時に使用しました」


神は静かに聞く。


「水流操作は?」


「使用していません」


「そうか」


神は机の上に置かれた資料を見る。


そこには、


マイルの最近の能力使用記録が並んでいた。


身体強化。


結界生成。


水流操作。


火炎操作。


そして、


その組み合わせ。


神は一つの記録を指でなぞる。


「……成長しているな」


信徒は黙っている。


「ですが」


神が続ける。


「まだ、すべての能力を同時に使えるわけではない」


「はい」


神は笑う。


「ならば、その制限を利用する」


信徒の表情がわずかに変わる。


「……どのように?」


「まだ教える必要はない」


「お前は今まで通り、奴を見ていろ」


「はい」


信徒は頭を下げる。


しかし。


神殿を出た後。


信徒は一人で歩きながら考えていた。


(マイルを狙っている人間がいる)


(そして、神もそれを把握している)


以前なら、


何も疑問に思わなかった。


だが。


今は違う。


「……何が起きようとしているんだ」


信徒は小さく呟いた。


⸻


一方、


マイルの部屋。


マイルは今日の能力使用記録を書いていた。


⸻


身体強化:使用中・3日目


水流操作:使用不可・残り7日


結界生成:使用可能


火炎操作:使用不可期間中・残り4日


本日の使用


身体強化+結界生成


⸻


マイルはペンを置く。


「二つ同時に使うのも、だいぶ慣れてきたな」


そして、


ふと考える。


「……三つ使えたら、もっと強いのかな」


しかし、


すぐに首を振る。


「いや」


「今は二つで十分だ」


マイルは窓の外を見る。


星空。


いつもと変わらない。


「明日はどうするかな」


その時。


――カン。


遠くから小さな音がした。


マイルは窓を見る。


「……?」


しかし、


何もない。


マイルはしばらく外を見つめた後、


「気のせいか」


そう呟いてカーテンを閉めた。


⸻


その頃、


学園から離れた建物の屋上。


朔夜が夜空を見上げていた。


「……まだだ」


手には古い写真。


そこには、


マイルの祖先。


そして、


その血を受け継ぐ者たち。


朔夜は写真をしまう。


「もう少しだけ」


「神が動くまで」


「俺は姿を見せない」


しかし、


朔夜の背後。


暗闇の中から、


別の気配。


朔夜が振り返る。


「……誰だ?」


返事はない。


気配も消える。


朔夜は目を細める。


「神側か……?」


それとも、


別の誰かなのか。


朔夜にも分からなかった。


⸻


翌朝、


マイルは目を覚ます。


机の上のノートを見る。


能力の記録。


身体強化。


結界生成。


水流操作。


火炎操作。


マイルはページを閉じる。


「今日も頑張るか」


少年は学校へ向かう。


しかし、


その日、


神聖能力学園では。


一つの事件が起ころうとしていた。


そしてそれは、


マイル自身ではなく――


マイルの「仲間」を狙ったものだった。


彼が守るべきものが。


初めて、


明確に敵の標的になろうとしていた。

次回第二十六話

 失った力、守る力

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