第二十一話 使えない力
朝、
マイルは目を覚ます。
机の上のカレンダーを見る。
火炎操作――3日目。
身体強化――使用不可、残り2日。
結界生成――使用不可、残り4日。
「今日で火炎操作も終わりか」
マイルは少しだけ寂しそうに呟いた。
「でも……」
制服に着替える。
「最後まで使い切ろう」
⸻
教室、
「おはよう!」
光が教室に入ってくる。
「おはよう」
「今日の放課後、訓練するんでしょ?」
「うん」
蓮が席から振り返る。
「火炎操作、今日で3日目だったな」
「そう」
「明日から使えなくなる?」
「うん」
光が少し残念そうな顔をする。
「せっかく上手くなってきたのに」
「また使えるようになるよ」
信徒が口を開く。
「その間は、別の能力を使うのですか?」
「そうするつもり」
マイルは笑う。
「能力が一つ使えなくなったからって、何もできなくなるわけじゃないから」
信徒はその言葉を聞いていた。
その考え方が、
少しずつ変わってきている。
⸻
放課後、
訓練場。
マイルは一人で立つ。
「最後の一日だ」
手を前に出す。
「火炎操作」
炎が現れる。
昨日よりも安定している。
マイルは炎を小さくする。
さらに細く。
さらに正確に。
「……」
炎はマイルの指先を包み込むように動く。
蓮が感心する。
「かなり細かく操作できるようになったな」
「うん」
「最初は大きな炎を出すだけだったのに」
光が言う。
マイルは炎を消す。
「強い炎を出せることより、必要な大きさにできるほうが大事なのかもしれない」
蓮が頷く。
「確かに」
その時、
訓練場の標的が動き始める。
「最後に実戦形式でやろう」
蓮が言う。
「分かった」
標的が一斉に動く。
マイルが走る。
一体目。
炎を小さく放つ。
命中。
二体目。
炎の軌道を曲げる。
命中。
三体目。
マイルは炎を一瞬だけ強くする。
ドンッ!
標的が倒れる。
「全部倒した!」
光が喜ぶ。
マイルは息を整える。
「……これで終わりだな」
炎が消える。
そして、
その場を離れようとした時。
「……?」
マイルが振り返る。
訓練場の外。
誰かの気配。
しかし、
そこには誰もいない。
⸻
夜、
神殿。
信徒が報告する。
「マイルは本日、火炎操作を3日間使用しました」
神が尋ねる。
「明日からは?」
「火炎操作は使用できなくなります」
「そうか」
神は少し考える。
「では次に何を選ぶのか」
信徒は答える。
「分かりません」
神は窓の外を見る。
「……それを見届けろ」
「はい」
信徒は頭を下げる。
神殿を出た後。
信徒は立ち止まった。
(なぜ……)
(神は、そこまでマイルの能力にこだわる?)
一瞬だけ、
そんな疑問が浮かぶ。
だが、
信徒はすぐに歩き出す。
まだ、
その疑問に答えを出すつもりはなかった。
⸻
深夜
マイルの部屋。
マイルは能力の一覧を書いていた。
身体強化。
結界生成。
火炎操作。
水流操作。
調理。
計算能力向上。
応急治療。
「身体強化はあと2日」
「結界生成はあと4日」
「火炎操作は……今日で終了」
マイルはペンを置く。
「次は何にするかな」
その時、
窓の外。
また人影が見えた。
マイルは立ち上がる。
「……誰だ?」
窓を開ける。
誰もいない。
ただ、
遠くの建物の屋上に、
一瞬だけ人影が見えた。
マイルは目を細める。
「……気のせいじゃない」
誰かが、
自分を見ている。
⸻
一方、
建物の屋上。
朔夜はマイルの部屋を見つめていた。
「気づき始めたか」
しかし、
朔夜はその場から動かない。
「まだだ」
「今はまだ……」
夜の闇に紛れる。
⸻
翌朝、
マイルはカレンダーを見る。
火炎操作――使用不可。
身体強化――使用不可、残り1日。
結界生成――使用不可、残り3日。
そして、
マイルは新しい能力を選ぶ。
「次は……水流操作!」
そして、
新たな能力を選択する。
少年の新しい戦いが。
また始まろうとしていた。
次回第二十二話
次の一手




