第十八話 新たな選択
朝、
マイルは目を覚ますと、カレンダーを見る。
身体強化――使用不可。
結界生成――使用不可。
「……どっちも使えないか」
昨日で、結界生成を3日間使い切った。
そして身体強化も、変更してからまだ7日経っていない。
つまり今のマイルには、
身体強化も結界生成も使えない。
「まあ、仕方ないか」
マイルは制服に着替える。
教室
「おはよう!」
光が手を振る。
「おはよう」
「今日の放課後、買い物行かない?」
「いいよ」
蓮も振り返る。
「俺も行く」
「信徒は?」
光が聞く。
「僕も行きます」
4人で放課後の予定を決めた。
その時、
「そういえばマイル」
蓮が言う。
「今日は訓練どうする?」
マイルは少し考える。
「今日は別の能力を使う」
「身体強化は?」
「まだ使えない」
「結界生成も?」
「うん」
光が驚く。
「じゃあ、今どんな能力が使えるの?」
マイルは少し笑う。
「火炎操作」
「おお!」
光が目を輝かせる。
「見てみたい!」
信徒はマイルを見る。
(火炎操作……)
(これもマイルが扱える能力の一つか)
____
放課後、
訓練場。
マイルは手を前に出す。
「火炎操作」
ボッ!
手のひらに炎が生まれる。
「すごい!」
光が声を上げる。
炎がマイルの手の周囲を回る。
「身体強化や結界生成とは全然違うね」
蓮が言う。
「うん」
マイルは炎を小さくする。
「火炎操作は、攻撃だけじゃない」
炎を細く伸ばす。
「細かく操作できれば、色々なことに使える」
炎が一本の線のように伸びる。
「なるほど」
蓮が頷く。
「じゃあ今日は火炎操作の訓練だな」
「うん」
マイルは集中する。
一時間。
二時間。
炎の大きさ。
速度。
方向。
温度。
少しずつ操作が安定していく。
「かなり上手くなったね」
光が言う。
「まだまだだよ」
マイルは炎を消す。
「でも、今まで使ってなかった能力を使うのも悪くないな」
信徒はその言葉を聞いていた。
マイルは能力を失ったのではない。
使えない期間があるだけ。
その間に、
別の能力を磨く。
信徒はマイルの戦い方を見ながら考える。
(この少年は……)
(能力そのものよりも)
(能力を使う方法を学んでいる)
⸻
夕方、
4人は商店街へ向かう。
「これ食べたい!」
光が店を指差す。
「また?」
蓮が笑う。
「いいじゃん!」
マイルも笑う。
「じゃあ俺も買おうかな」
信徒はその様子を見ている。
以前の自分なら、
こんな時間を過ごすことなど考えもしなかった。
任務。
報告。
それだけだった。
しかし、
今は違う。
「信徒?」
マイルが呼ぶ。
「何ですか?」
「これ美味しいよ」
マイルが食べ物を差し出す。
信徒は少し驚く。
「……いただきます」
一口。
「どう?」
光が聞く。
「……美味しいです」
「でしょ!」
光が笑う。
信徒も少しだけ笑った。
⸻
夜、
神殿。
信徒は神の前に立つ。
「報告します」
「マイルは本日、火炎操作を使用しました」
「身体強化と結界生成は現在使用できない状態です」
神は静かに聞く。
「他には?」
「友人たちと商店街へ行きました」
「……そうか」
神はそれ以上何も言わない。
信徒も黙る。
しかし、
今日、
神に報告しているとき、
信徒は初めて思った。
(なぜ、私は)
(マイルのことを詳しく報告しているんだろう)
すぐにその考えを打ち消す。
(任務だからだ)
まだ、
信徒は神を疑わない。
⸻
一方――
学園から遠く離れた場所。
朔夜は資料を見ていた。
「火炎操作……」
マイルが新しい能力を使い始めたことを知る。
「身体強化も結界生成も使えない期間か」
朔夜は考える。
「今なら、あいつは少しだけ隙ができる」
しかし、
朔夜は動かない。
「……いや」
「まだだ」
資料を閉じる。
「今、俺が接触すれば」
「神に気づかれる可能性が高い」
朔夜は窓の外を見る。
「もう少しだけ待つ」
⸻
翌朝、
マイルは学校へ向かう。
火炎操作。
現在1日目。
身体強化。
使用不可期間、残り4日。
結界生成。
使用不可期間、残り6日。
マイルは歩きながら考える。
「あと4日か……」
そして、
「それまでに火炎操作をもっと使いこなそう」
少年は前を向く。
自分の力に制限があることを、
もう、恐れてはいなかった。
むしろ、
制限があるからこそ、考える。
それが、
マイルの戦い方になり始めていた。
次回第十九話
火炎操作




