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異世界最高のギルドをつくろう!〜手持ちのスキルが強力すぎて、気づいたら孤児院のQOLが最強になっちゃってるんですが〜  作者: さかなかさ
2章

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30話



(この男…しぶといな…!)


エルクーツクは、長く続く攻防に息も絶え絶えであった。大柄の槍使いとの戦闘は、既にかなり長引いている。


他の中堅ギルドメンバーの加勢は逆効果であるというカロンの判断もあり、現在エルクーツクは1対1での戦闘を継続している。



時折支援として発動する建物内の罠達は、そのいずれも簡単に対処されてしまっていた。



「子供だと侮っていた、非礼を詫びよう。…許されるならば、名前を教えてはくれないか。」


ふと、男がそう告げる。その瞳は芯からエルクーツクを捉えている。ふざけて言っているわけでは無いようだ。



「…エルクーツクだ。」



「エルクーツク…良い名前だ。しかし、聞かぬ響きだな。北の生まれか?」



「…分からない。親の顔は知らない。」



「そうか、野暮なことを聞いたな…俺の名はタングデールだ。あいつらの頭領をやっている。」




「…聞いてないよ。」




言葉を交わすうち、エルクーツクは自分の口調が柔らかくなっていることに気づく。

恐らくそれは大男の態度に拠るものだ。先ほどまでの侮りが嘘のように、今は自分に対する敬意すら感じる。



身内を攫いにきた悪党に、僅かでも絆されかけている己に気づき、エルクーツクは歯噛みした。感情を振り切るように、懐から護符を取り出す。


「耐火」の加護がついたそれを数枚まとめて破り捨てると、体全体に浴びるように散らした。




「…お喋りは終わりにしよう。あなたが敵であるという事実に変わりはない。」



そう言うと、エルクーツクは手元の魔道具に魔力を込め始める。炎熱魔道具を魔改造して作り上げたそれは、一度使えば細い火の柱達が槍のように吹き出し、相手を貫く。火力が高すぎるあまり使用には護符が必須な一点ものだ。



「ふむ…それはそうだが。どうやらこちらの任務は失敗に終わったようでな、もう戦う理由もない。」



「…生憎、聞かなきゃいけないことが山ほどあるんでね。」



魔力の高まりが、周囲を煌々と照らし始める。起動した術式が炎を生み出し、圧縮された火炎が槍の姿を形取る。



「ま、詳しいことは他の奴に聞いてくれ。俺はまだやることがあるんでな。」



そう言うやいなや、男の足元に魔力陣が浮き上がった。先ほどと同じ、転移の魔法陣だ。男は青色の魔力光に照らされ、その周辺には先刻と同様の魔力の渦が発生し始めていた。



「ーーカロン、好き勝手やられすぎだよ…!逃すか!」



エルクーツクの魔道具が大柄の男ーータングデールに襲いかかる。


直線上に伸びた炎の槍がその腹を貫こうとする直前ーー男の姿は完全に光に包まれた。そうして、次の瞬間には忽然と立ち消える。僅かに遅れて目標を捉え損ねた熱線が、虚しく空を切り裂いた。



(何だったんだ、一体…)



壁に焼きついた焦げ跡を、エルクーツクはただ呆然と眺めることしかできなかった。




・・・



日が差し始めた中庭。激戦の後、倒れ伏したレンヴィルを捕えようとしたカプレーは、不意によろめいた。


疲労が限界に達しているのだ。長い戦いの上、レンヴィルの毒は想像以上にカプレーの体を蝕んでいた。それでもなんとか踏ん張り、役割を全うしようと近づく。



ーーそこでようやく、カプレーは異変に気がついた。



「傷が…塞がり始めて…?」


続けようとした口が、不意に動かなくなる。口だけでなく、体全身に、強い圧力がかかる。


「くっ…!まさかまだ意識が…!」



「油断したな…バカが…!」



完全に意識を回復したレンヴィルはふらりと起き上がると、カプレーを憎々しげに見つめた。左脇腹の傷跡は生き物のように蠢き、肉と肉同士が繋がって修復されていく。



「そのまま搾り取ってくれる…!」



レンヴィルの"拘束"は、カプレーの膂力を完全に抑え切っている。戦いで疲弊したカプレーにもはや余力は残されていなかった。


「くっ……!」



カプレーは、自分の五感が段々と薄まっていくのを肌で感じていた。光も、音も、全てが少しずつ遠ざかっていく。意識が、深い暗闇の底へと呑み込まれる。



完全に気力を絞られ、どしゃり、と膝をつくカプレー。その意識が完全に失われる直前、僅かに残った聴覚は、確かに聞き馴染みのある声を捉えた。




「ーー遅れてごめん。」



 空気が、パリッと音を立てて裂けた。次いで、ドゴォン!!という爆雷のような音が中庭に轟く。


 閃いたのは、一筋の青い光の矢。否、それは黒い髪の少女だった。魔力を纏い、極限の加速によって“弾丸”と化したミリア。

 レンヴィルがそれを認知した時には、すでにその身体は宙に舞っていた。腹部に炸裂した衝撃と共に、視界がぶれる。 ミリアの飛び蹴りがその体を捉えたのだ。

 風圧が炸裂し、石畳が砕け飛ぶ。

 レンヴィルの身体は、再び数メートル先の石壁に叩きつけられ、めり込むようにして止まった。

 中庭の空気が、ようやく時間を思い出したかのように、ゆっくりと流れ出す。

 

デジャヴのような光景に、カプレーは唖然とした。


「団長…かたじけない。」


かろうじてそれだけ振り絞ると、気力を使い果たしたカプレーもまた、意識を失いその場に倒れる。その体を、ミリアはそっと抱き留めた。


「カプレー、よく頑張ったよ。おかげでみんな無事だ…カロン!報告お願い!」


ミリアの脳内に、ザザ…と砂嵐のような音が響く。ギルド内に張り巡らされた、魔力波長による通信網「銀線」。

個々人の魔力波(エーテル)を特定することで、さながらテレパシーのように本人にだけ音声を届けることを可能にしている。エルクーツクとカロンによる、とんでも発明品の一つだ。


『まずはおかえり、団長。侵入者3名、狙いはハートだ。全員、撃退に成功。1人には逃げられたが、目立った負傷者は無し…あ、カプレーを除きな?連れ去られたやつもいないぜ。』


そう聞いてようやく、ミリアは安堵のため息を吐いた。敵の陽動にまんまとハマってしまったが、頼もしい仲間達に助けられた結果となった。



蹴り飛ばした敵の姿を見やる。怪しげな念力を使っていたようだ。細長い体躯を華美な服装で覆っている。そして、ハートによく似た青い髪色。


「これまたキナくさいなぁ…」


意識を失った生物からは鑑定で情報を読み取ることができない。どうやら確認は少し後になりそうだ。アルドローヴァから得た不可解な記述の答え合わせも済んでいない。


(聞き出すことは多いぞー、これ。)


ミリアは一つ伸びをすると、すっかり登り切った太陽に気づいた。軽く欠伸をして、気合を入れ直すため頬を叩く。


そうこうしているうちに、来た方向から歩いてくるレオナの姿が見えた。結局最後は乗り捨てる形になり、到着に時差があったのだ。

戦闘後に更に魔獣を一晩中走らせた影響で、流石に多少疲れた様子だった。だがミリア達の姿を見つけると、無邪気に手を振って微笑んだ。


「なんかデッカいおじさんが門のとこに急に転移して来てさー。咄嗟に捕まえようとしたんだけど、意外とすばしっこくて逃げられちゃった。」


「んんん、何それ?」


流石のミリアもちんぷんかんぷんである。その裏で、音声を通信網で捉えたカロンだけが、やや苦々しそうな表情を浮かべたのだった。

書き貯めるため次回投稿までしばしお待ちいただけると幸いです…!

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