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異世界最高のギルドをつくろう!〜手持ちのスキルが強力すぎて、気づいたら孤児院のQOLが最強になっちゃってるんですが〜  作者: さかなかさ
2章

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29話




寄宿舎とギルド本館の間にある、広い中庭。その一角で、激しい戦闘が繰り広げられていた。



レンヴィルと呼ばれている、青髪の男。対するは輝晶会冒険者の1人、カプレー。カロンの誘導によって鉢合わせたこの2人は、先ほどから熾烈な撃ち合いを続けている。


レンヴィルの獲物は戦斧だ。華奢な体に見合わぬそれを振り回し、見た目とは裏腹に豪快な戦いぶりをしている。対するカプレーは籠手と拳のみで、その攻撃をいなしている。



(この不細工…言動とは裏腹に、動きは落ち着いている。ただの気狂いではないな。)



修練された立ち回りを披露するカプレーに、レンヴィルは今一つ攻め手を欠いていた。対するカプレーも攻勢には転じない。相手の動きを観察することで、戦況を分析しようとしていた。



「ちまちまと、何をやっている!」



均衡に耐えかね、レンヴィルが吠える。カプレーは振り下ろされた大ぶりの一閃を巧みにかわすと、バックステップで距離をとった。




「なにぶん、当たったらタダでは済まなそうだからね。…先ほどの念力の正体を教えてくれたら、話は早いんだが。」



レンヴィルは、初手以来不可視の攻撃を使用していない。発動には条件があるのかもしれない、とカプレーは睨んでいた。



「つまらんな。この俺の能力に正体などと…下衆が。」



カプレーの体に、再び見えない負荷がかかる。全身を抑えつけるように、見えない圧力に包み込まれる。



(やはり…!先ほどと同様、静止状態での発動!おそらくこの念力、動きながらの操作は難しいとお見受けする!)



振り解こうと、両腕に力をこめるカプレー。

しかし、先ほどより力を増した拘束に、カプレーの体が自由を失う。



「ふん、染みてきただろう!我が"毒"が…念力などと、下らん言葉で形容してくれるな。ーーまずは一つ。」



「毒…!」


カプレーは一人、納得していた。先ほどから、地面を踏む感覚が鈍い。これが"毒"によるものだとしたら、いずれは全身の感覚を失うかもしれない。



「我が"毒"は、貴様から力を奪う。魔力を介してな。ーー肌の感覚が消えてきただろう?」



そう、得意げに語り始めるレンヴィル。その表情には先ほどより活力がみなぎっている。



「そしてーー奪った力は私のモノになる。長引けば長引くだけ、不利になるのは貴様の方だ。」



「なるほど…それならば、僕も様子見をしている場合じゃないな。」



カプレーは一度大きく息を吸い込むと、両腕に全力で力を込める。



するとはち切れんばかりに筋肉が隆起しーー上半身に着込んでいた衣服が弾け飛んだ。



小さい手足からは想像もつかないほど鍛え抜かれた上半身。まるで彫刻のように美しいそれは、カプレーを見下していたレンヴィルにとって予想外のものであった。



「ほう…?醜い怪物かと思っていたが…少しはやる。どれーー本気とやらを見せてみろ。」



有り余る筋力で拘束を振り解いたカプレーに対し、レンヴィルが再び迫る。


カプレーから奪い取った力の一部によって、先ほどより勢いを増すレンヴィルの攻撃。

カプレーは優れた観察眼でそれを分析し、なんとかいなし続ける。


(このまま戦いを続ければ、視力や聴力まで失われる可能性がある。そうなる前に、僕の力でカタをつけるーー!)



戦斧を使った、流連な攻撃。その一撃一撃の合間に見える、わずかな隙。


(狙うは一点。大振りの直後の、脇腹!)



ミリア直伝の観察能力を最大限に生かし、カプレーは全神経を集中させる。


いなし、かわし、耐え続ける。頭の中のイメージと、目の前の光景が完全に一致したその一瞬ーー



「ここだァーーー!!!」


やや間抜けな掛け声と共に、カプレーの右ストレートが、レンヴィルの左の腹を捉えた。



インパクトの瞬間、カプレーは微細な魔力の"揺らぎ"を、右の拳に注ぎ込んだ。鍛え抜かれた肉体から放たれる一撃に込められた、高速の魔力振動。


それはチェンソーのようにレンヴィルの体を覆う魔力の層を破壊しーーその肉体に、直接衝撃を叩き込む。




次の瞬間、レンヴィルははるか後方に吹き飛んだ。

そのまま、ギルドの壁に垂直に衝突すると、建物全体がぐらりと揺れた。


パラパラと降る瓦礫の下に、倒れ込むレンヴィルの体。モロに直撃を喰らった左脇腹は消し飛び、風穴が開いている。



撃ち抜かれた、大砲のような一撃。まともに正面から喰らったものは弾け飛び、後には真っ赤な血飛沫しか残らない。それはまるで、潰された果実のように。



その技の凶悪さからランク戦参戦を禁じられ、ギルド内では一部のものしか知らぬ、カプレーの実力。

破壊力だけで言えばギルド内でも随一の彼の戦闘跡には、赤黒い海が広がる。




そんな彼を、一部の冒険者たちは尊敬と畏怖、また少しばかりの愛情の念を込めて、"トマト祭り"(ラ・トマティーナ)と評した。


尚、当の本人は、その由来を全く知らないのだが。


動かなくなった青髪の男の前で、カプレーは腰を折って一礼をした。戦いに対する礼儀。それは元々騎士を志し、礼儀を何より重んじるカプレー何より大切にしているものだった。


「礼を言おう。ーーおかげで、美しい夜明けが見れる。」


カプレーは戻ってきた体の感覚を噛み締めながら、先ほどまでの闘いに対して、精一杯の感謝を伝えた。



空は白み始め、まるでカプレーの勝利を祝福するかのように、太陽が顔を覗かせようとしていた。







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