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異世界最高のギルドをつくろう!〜手持ちのスキルが強力すぎて、気づいたら孤児院のQOLが最強になっちゃってるんですが〜  作者: さかなかさ
2章

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28話


アルドローヴァは、暗く静まり返ったギルド敷地内を駆けながら、自分の現状を憂いていた。




「だいたい、私の役目は陽動までのはずですぅ…はぁ…」




愚痴愚痴と文句を垂れながらも、目的の遂行のため動きは淀みない。ギルド宿舎の周囲をぐるりと回ると、侵入の段取りをつけていた。

と、不意にギルド内に警報が鳴り響く。




『ギルドメンバー各位に告ぐ!現在、施設内に侵入者有り、幹部陣は警戒を!宿舎のガキどもは部屋から出んなよ!以上!』



騒然と鳴り響く警報と共に、男の声が建物内に輪唱する。壁にかけられた魔道具を介して、ギルド中に伝わっているようだ。



騒ぎを聞きつけ、宿舎の建物にポツポツと明かりが灯り始めた。



「…馬鹿ですかぁ?…これじゃあ丸見えですぅ。」




アルドローヴァが目に力を込める。瞳孔が大きく開くと、宿舎内にいる冒険者の姿が、建物の遠目からでも視認できた。



「…いた。」



二階の角部屋。比較的若い世代の冒険者たちが集まり、不安そうな表情を浮かべている。


そんな彼らを諭すように話しかけている、青髪の少年。



「手間が省けたですぅ…!」



次の瞬間には、女は一直線に走り出していた。人並外れたステータスが女に凄まじいほどの脚力を与える。一歩踏み締めるほどに土が抉れ、グングンと距離が縮まる。そして、今にも飛び上がって窓を蹴破り、部屋に侵入しようとした瞬間ーー



『バーーカ』



どこからともなく、先ほど警告をしていた男の声が聞こえた。それとほぼ同時、宿舎の壁に、巨大な魔法陣が浮かび上がる。



「ーーーッ?!」



女は自身の勢いを殺しきれず、驚く間も無く魔法陣に身体を突っ込んだ。


魔法陣と女の体が交わった瞬間、魔力光は一層強く輝き、少しの音も立てずにその体を包み込む。


そのまま、まるで何もなかったかのように、円形の陣と女は、ぱたりとその場から姿を消した。





・・・




真っ暗な空間に、どさり、と尻餅をつく。周囲に土煙が舞った。




「いてて…転移魔法かぁ。やられちゃったなぁ。」




唐突に別の空間に投げ飛ばされたアルドローヴァ。空中から落ちた衝撃でいよいよボロボロの鎧を脱ぎ捨てると、軽く周囲を見渡す。




「どこですかぁ、ここ。」



ガシャン、と、捨てた鎧の音が木霊する。

どうやら、かなり大きな空間のようだ。部屋のふちは円形になっており、段々状に隆起している。さながら、古代の闘技場のような造りをしていた。




「ーーランク戦用の場所なんだ、ここ。普段はもっと賑わってるの。」




ふと、闇の中から声が聞こえる。音の方を瞬時に警戒するアルドローヴァ。


(いつの間にーー)



少し離れた場所に、誰かいる。先ほどまで感じられなかった気配の出現に、あるドローは少なからず動揺した。



「私の戦い方、周囲への影響が大きいから。でもここなら、誰にも迷惑かけなくて済むんだ。」



暗闇の中から現れたのは、眩い金色の長髪。しかしその整った顔立ちには似つかわぬ、武骨な全身鎧(フルプレート)に身を包んでいる。



実力者の多い輝晶会の中で、トップの座に君臨し続ける、長剣の使い手。



巷では、「"妖刀"のセリーシャ」と呼ばれている女。

だが、アルドローヴァはその正体を知っている。



「あらら…お噂は聞いてますぅ。アセリス家の、元・お姫様?」




そう嘯くアルドローヴァ。しかしその肩は、小刻みに震えていた。先ほどから、寒気がしているのだ。冷えた地下空間の冷気のせいではない。



目の前の女から発せられるオーラが、アルドローヴァの本能に、畏敬の念を刻みつける。



(…私じゃ、絶対勝てない。)



圧倒的なまでの力の差。もはや別の種族かと見紛うほどのそれを全身に感じ、背中に汗が伝う。




「どうして、ここに侵入してきたのかな。"教えてくれる?"」




にこり、と微笑みながらそう喋りかける金髪の剣士。

発する言葉の一つ一つは柔らかいものだ。しかし、本人の意図する以上に、その声は聞くものの心臓に直接響く。



その穏やかな言葉選びは、無闇に他人を傷つけないための気遣いだった。



「言い方を変えるねーー『"応えろ"』」



「ーーッ〜!」



魔力を込め発せられた言葉が、アルドローヴァの意思に莫大な負荷をかける。恐らく今口を開けば、全てを喋り出してしまうだろう。



"この声に応答しないこと、それ自体が罪になる"ーー思わずそう感じさせてしまうほどの強制力。




(疲弊しているとはいえ、私の魔力量でこれほどとはーー)



魔力の保有量は、そのまま他人の魔力的干渉からの防御力となりうる。まるで脂肪や皮膚のように、体全体を魔力から守る免疫となる。



しかし、平均的な人間の何倍もの魔力量を誇るアルドローヴァでさえ、ただの一言に屈しそうになる。



「わ…たし、は…」



ガタガタと体を震わしながら、声を紡ぐ。



「くそ…くらえ…ですぅ。」


そう言い切ると、魔力の支配から体が解放されたのを感じる。"覇響"は、一度意思を持って抗えば、ある程度の免疫がつく。なんとか体の自由を取り戻したアルドローヴァは、キッとセリーシャを睨みつけた。




「そう…残念。」



それだけ言うと、セリーシャはかがみ込み、足元の地面に手を触れた。




手元から発される魔力光が地面を伝う。すると、固い闘技場の土が生き物のようにうねり、巨大な波が生まれた。


地響きを立てながらアルドローヴァの元へ突き進むそのうねりは、もはや立つだけで精一杯の彼女の体をあっという間に包み込んだ。



形を変えた地面が複雑に絡み合い、アルドローヴァを取り込みながら上に、上にと伸びてゆく。




最終的に大樹の形に成長したそれは、アルドローヴァを幹の部分で磔にすると、ようやくその動きを止めた。




「…貴族ってのはどうしてこう…スキルの使い方に品がないですぅ。」




「…ごめんね。」



やや申し訳なさそうに謝るセリーシャ。敵にも関わらずどこか抜けているその返答に、アルドローヴァは内心呆れていた。



「その樹は私と繋がってるの。あなたが私の命令に背く度、魔力を吸い取ってより強く締め付ける。…無理はしないでね。」


そう忠告し、セリーシャは軽く手を振ってみせた。すると樹全体がざわめき、僅かに金色の光を放つ。




まるでお伽話のような能力に、アルドローヴァは被我の戦力差をこれ以上ないほど感じていた。やはり初めから来るべきでなかったのだと、後悔の念が強まる。




「…えげつない。ほんとに人のやることですかぁ…?」



「なっ…技の発案者はミリアだもん。私じゃないよぉ。」

本日2話投稿です!

2本目は20:00頃!

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