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異世界最高のギルドをつくろう!〜手持ちのスキルが強力すぎて、気づいたら孤児院のQOLが最強になっちゃってるんですが〜  作者: さかなかさ
2章

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26話



「搬送急いで!重症患者はあっち!」


国軍の衛生兵の声が、迷宮の深部に飛び交う。

アルドローヴァが姿を眩ませた後、ミリア達は負傷者の手当てに当たっていた。魔獣による被害はレオナが抑えたが、アルドローヴァの対処に当たったものの中には重傷を負っているものも多く、早急な手当が必要とされていた。



「おい、こっちだ!」




そんな中、キースがふらふらとどこかへ歩き出そうとする兵士を呼び止めた。腕に着けた籠手は外れ、切り傷を負っている。


「意識がはっきりしていないのか……?」



兵士はおぼつかない足取りで、キースの方を振り向いた。体は小刻みに震えており、振り返った顔は青ざめている。その目は充血しており、明らかに正気を失っていた。



「お、おい……」



「あ…あぁ…ああああアアア!!」



「まさか……あの魔獣達とおなじか…!」




キースの姿を確認し、唐突に走り出す兵士。その動きは人体を冒涜したかの様に不可解なもので、下手な人形劇の様であった。



「くっ……許せ!」



近づいてくる兵士の動きはあまりに無防備で、キースが剣の峰を打ち付けると、あっけなく倒れ伏した。



落ち着いて辺りを見回すと、あちこちで似た様な症状の負傷者が暴れ出している。中には衛生兵に襲いかかるものもあり、迷宮内は再び混乱に陥り始めていた。



その混乱の中で、ひとり対処に動く影があった。ミリアだ。遠目からキースを見つけると、急いだ様子で駆け寄ってくる。



「どうも、直接あの女に切られたものから精神を支配されているみたいだね。」



その顔は流石に辟易としている。一人の人間のスキルだけでここまで甚大な被害が出るなど、キースの経験では初めての事態であった。



「精神支配のスキル…あんなの、民間人に使われたら一溜まりもない。些か強力すぎやしないかい?」



「そうですね…あの女は数日前うちの隊に配属になった新入りです。…軍部中枢からの、人事異動によって。」



そう聞いて、ミリアが目を細める。キースは一瞬ためらったが、話を切り出した。




「私含め、この場に集められた国兵たちは、元々大きく二つの隊に分けられています。」



「一つ目は、私の隊の部下たち。2つ目は、先日まで西の国境沿いの警備にあたっていた兵士たちです。あの女の所属は不明ですが、おそらくその二つを合併する際に混ぜ込まれたもの。私には西の国境沿いの兵士と伝えられていました。」



「その二つの隊に、何か共通点の様なものは…?」


もし彼らが国から疎まれる存在になったのであれば、そこには共通の理由があるはずだとミリアは考えていた。


「それは私も考えたのですが…一点だけあります。私たちの隊と西側の警備兵は、どちらもとある人物を探す様に国から司令を受けていました。」



「…その人物とは?」



本能が、警鐘を鳴らしているのを感じる。胸によぎる嫌な予感に、ミリアは心臓の鼓動が早くなるのを感じた。




「それが、私たちも名前までは教えられておらず…ただ、見た目の特徴だけが伝えられていました。仮に見かけたら報告するように、と。」




そうして、キースは見た目の特徴を述べ始めた。




「年のころは10~14歳ほど。性別は男。…そして一番の特徴は、ーーリースでは見られぬ、独特な青い髪色。」



そこまで聞いて、ミリアは全身が総毛立つのを感じた。本能が、警鐘を鳴らしているのを感じる。



(おかしいと思っていた。黄色い光の、まるでじわじわと追い込むかのような挙動。あの女のあっさりとした逃亡判断ーー)



「ーー陽動か……!!!クソッ…!」



初めて強く感情を表したミリアに、キースは内心動揺していた。ミリアの怒気が魔力となって周囲に立ち込めたのだ。目に見えぬそれが周囲を漂うと、キースの背筋を冷や汗が伝った。


「レオナ!!」


ミリアの呼びかけとほぼ同時、ザっという土を蹴る音とともに、近くに虎の魔獣の背に乗ったレオナが馳せ参じた。迸るミリアの魔力の奔流から、異変を察知していたようだった。



「至急ギルドに帰還する!ーー敵の狙いは、ハートだ!」



魔獣の背に乗り込みながら、ミリアがそう告げる。レオナは一瞬驚きに目を見開いたが、ミリアが乗り込んだのを確認すると即座に魔獣に激を飛ばす。



「ごめん!先に行く!」



走り去る魔獣の背からそう叫ぶミリアを、キースはただ見送ることしか出来なかった。




・・・


街の明かりが一つ、また一つと消えてゆき、日付が変わるまであとわずか。夜の静寂が街を包み込む中、ギルドの寄宿舎として使われている旧孤児院の建物には、まだ灯りが消えていない部屋があった。

そこは、内部の作りを大幅に改装した一室。他のどの部屋とも異なり、ギルドの中枢――指令室として機能している。

壁には発光する魔道具がびっしりと並び、机の上には無数の計器や魔道具が乱立している。部屋にいるのは二人。


一人はギルド全体の防衛と罠配置を一手に担う罠使い(トラッパー)。彼は今、回転椅子にもたれかかりながら、ゆるゆると空中を漂う感知結晶を指で弾いて遊んでいた。


「……っ!」


突如、机の上に設置された計器の一つが警告の色に変わる。事務として、この部屋で勤務している女性冒険者が目を見開く。

魔導板を確認しながら、すぐさまカロンに報告の声を投げる。

「報告です。第三感知結界に異常あり。複数の魔力反応です。」

「第三、ってことは北口か。」

カロンはにやりと口の端を持ち上げ、椅子をくるりと回転させて魔導盤に向き直る。真剣な空気の中でも、どこか楽しげな雰囲気を隠そうともしない。手元の魔導盤に手をかざすと、卓上に魔力の光が満ち始める。


「リューシャちゃーん、とりあえずエル君と…あと何人か呼んどいて。…寝てたら叩き起こしちゃっていーから。」

「了解。《銀線》、開きます。」


素早く返事しつつ、リューシャと呼ばれた女は端末に手をかざす。その横顔には一瞬の緊張が走っていたが、それでも手は正確に動く。

「さあて――」

カロンは指をパチンと鳴らす。即座に、複数の魔道具が起動音を立てて光を放った。

「お待ちかねだぜ、ホントによ。」

そう呟く彼の声は、どこか愉快そうで――まるで遊び相手が現れた少年のようだった。



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