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異世界最高のギルドをつくろう!〜手持ちのスキルが強力すぎて、気づいたら孤児院のQOLが最強になっちゃってるんですが〜  作者: さかなかさ
2章

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24話



「なっ、何が起こっている!新兵…貴様!」




キースが、一拍遅れて会話に入り込む。どうやら、まだ事態を把握しきれていないようだった。



「嵌められたんだよ、キースくん。どうやら、我々一同は国からしたら厄介者みたいだね。」



軽い調子でミリアが言う。そう告げられたキースはハッと顔を上げ、信じられないと言うようにミリアの方を見た。



「ま、私も見事に釣られた訳だけど。…おお、なんだアレ。」



ミリアの視線の先に立つ女兵士の身体からは、異様な魔力がむき出しで漂い始めた。もう、演技を続ける気はないらしい。長い赤髪が怪しく光を放っている。


女の魔力に答えるように、洞窟の向こうから迫る黄色い光が一際強く輝く。すると、行軍を続けていた魔獣達に変化が起きた。


魔獣達はそれぞれ唸りをあげるとーー血走った目を激らせ、こちらに向かって一斉に走り出したのだ。


「あちゃー…それじゃレオナ先生、お願いできます?」



「はーもう、ほんっとに。ミリアは無茶するよ……」


レオナは小さく息を吐くと、腰に装着されたホルダーへと手を伸ばす。カチリと留め具が外れ開かれたそれは、大ぶりのキーケースのような形状。


中には、煌めく魔石や、刻まれた紋様のある魔獣の爪、牙、羽根の欠片が整然と吊り下げられていた。


彼女はそっと瞼を閉じ、指先でひとつずつ召喚石をなぞっていく。撫でられるごとに、魔石たちはうねるように光を放ち始め、その光が彼女の身体を中心に螺旋のように舞い上がる。


――そして、次の瞬間。


轟く風と共に地を踏み鳴らす足音。咆哮。羽音。甲高い金属音のような鳴き声。あらゆる鳴動が混ざり合い、光の渦から無数の魔獣が顕現する。


雷のごとき牙を持つ獣、黒鉄の甲殻を持つ人型、滑るように地を這う大蛇――大小様々な魔獣たちが、レオナの背後に次々と姿を現し、その周囲を埋め尽くす。


「魔獣の群れは任せて、ミリアはあの女をお願いー。」


なんとも頼もしい言葉を残し、レオナは召喚獣と共に魔物の群れの方に走り去ってゆく。


「わあ、すごぉい…それじゃ、始めましょうかぁ?」


その様子を眺めていたアルドローヴァは、そう呟くと剣を構える。


そのままおもむろに、周囲の兵士に攻撃を始めた。兵士たちから悲鳴が上がる。


「キース隊長!」


混乱の中、ミリアがキースに声をかける。キースは想定外の事態に動揺しているようで、慌てた様子でミリアの方を向いた。


「ミ、ミリア団長…。申し訳ない、私は…」


「隊長、今は一旦その話は置こう。…魔獣の群れはレオナが相手取る。あの子なら1人で十分だ。私たちは、あっちに集中する!」



言って、ミリアは兵士たちの方向を向く。周囲の兵士の必死の抵抗も虚しく、アルドローヴァはなぎ倒すように国軍兵士たちを手にかけていた。あるものは吹き飛ばされ、またあるものは剣で切り付けられている。


「援護、お願い。」


そう短く言い残すと、ミリアは懐から深緑色の晶石を取り出す。

拳ほどのそれに魔力を込めると、淡く光る魔法陣が表面に浮かび上がった。


(あれは…響かせ石…?)


キースの頭に疑問がよぎる。この混乱極まる戦いの最中、あの石にどれほどの戦術価値があるのだろうか。


ミリアは、それをそのまま戦場の中心へと投げ飛ばした。手榴弾のように転がった石が、兵士たちの足元に滑り込んだ瞬間――


《――ひれ伏せ。》


凛とした、女性の声が洞窟に響いた。


周囲の兵士たちの動きが止まる。膝をつくものもいた。アルドローヴァの動きも、一瞬、崩れた。


「これは…''覇響''!?…小賢しいですねぇ…!」


「…どの口が。」


アルドローヴァの憎々しげな物言いに、ミリアは少しだけ不快そうな顔をするとそう言い返した。生まれた隙を逃さないよう、凄まじい速度で地を蹴り距離を詰めてゆくミリア。


その目はただ一人、アルドローヴァを捉えていた。


「――ッ!」


アルドローヴァが、咄嗟に構えを取り直す。

ミリアはその懐へ一気に踏み込み、腰のホルダーから銀色に光る一対の短剣を引き抜いた。


ギィン――!

交差する刃の火花。アルドローヴァはなんとか剣で受け止めたが、その重みと速さに僅かに体勢を崩す。


「ッく……!」


再びミリアが体を沈め、刃を旋回させる。右の刃で払うように切り上げ、左で鋭く突く――。その動きは無駄がなく、まるで相手の動きを予知しているかのように的確だった。


「なんで……早すぎるですぅ!?」


アルドローヴァが刃を受け止めるたびに、腕が痺れ、呼吸が乱れる。

思考の隙を突くように、ミリアの刃が再び閃いた。鋭く踏み込み、肩口を斜めに薙ぎ払う軌道――ギリギリのところで剣を跳ね上げて防ぐアルドローヴァ。


だがそれは陽動だった。次の瞬間、魔力を乗せたミリアの蹴りが空いた腹部へ打ち込まれる。その衝撃は凄まじく、鎧がひしゃげ、形を変える。


「が、は……ッ!」


呻き声とともに後方へ吹き飛び、地面に叩きつけられるアルドローヴァ。

土煙が舞う中、彼女はすぐに体勢を整え、素早く距離を取った。体をかばいながらも、ミリアを睨みつける。


「冗談、きついんですけどぉ…」


対するミリアは、何も言わず、ただ一歩踏み出す。

その足取りに、迷いはない。瞳の奥にあるのは――確かな殺意。


「いっぱい殺してきたんでしょ。ーーここで、終わりにしようね。」


軽く笑みすら浮かべて、ミリアは再び獲物を構え直した。


・・・


キースは呆然と、その光景を見つめていた。


「援護を、と申されても…」


爆ぜる火花、舞うようにして駆けるミリアの身のこなし。鋭い短剣が幾度も閃き、敵の剣を叩き落とさんと迫る。その攻撃は一切の無駄なく、正確無比に相手の隙を衝いていた。キースが迂闊に手を出せば、ミリアの足を引っ張ることは確実である。


アルドローヴァも尋常ではない剣戟によく対応しているが、明らかに気圧されている。ミリアの動きは、戦闘が進めば進むほどに、相手の動きを学習し最適化されていく。それだけではない。


先ほどから、ミリアの全身はぼんやりと光り輝いていた。魔力の放出が生んだその光は、軌跡となって少女を追いかける。


(…体の動き全てを、細かな魔力放出で補助している…?それも、恐ろしいほどの精度で…!)


魔力の放出を用いた戦闘技術は、キースも知識として覚えがある。しかし実際、その効果は微力な上、扱いが非常に難しい。


魔力の操作を感覚として表すなら、「体の中にあるもう一本の腕を動かすようなもの」だからだ。

それ故、国軍では単純な動きを補強するために用いられる程度で、非効率的としてそれほど研究されていない分野であった。まして、全ての動きを魔力放出で補強するなど聞いたことがない。


(あの速度の戦闘…魔力操作を一つでも誤れば、大怪我は免れない筈だ。怖くはないのか…?)


近年のリース国冒険者達のレベルの高さは、国軍の間でも話題となっている。その中でも、頭ひとつ抜けて注目を集める輝晶会、その頭領。


「…あれが、“輝晶きしょう”……!」


キースの声が震える。


勝敗はもはや揺るがぬものとなりつつあった。


圧倒され、打ち伏すアルドローヴァの前に立つ、稀代の才。


魔力を帯びて輝く黒髪の少女は、わずかな息も乱さぬまま、ただ粛然と敵を見下ろしていた。




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