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異世界最高のギルドをつくろう!〜手持ちのスキルが強力すぎて、気づいたら孤児院のQOLが最強になっちゃってるんですが〜  作者: さかなかさ
2章

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19/25

19話

「さぁ始まりました!毎月恒例!ギルドの新星が揃い踏み、ランク入れ替え戦でございます!ここ、輝晶会地下の闘技場は、既に皆様の熱気でむせ返るようであります!!」


ノリノリの女性の実況音声が、広めの地下空間に響き渡る。そこは大きく開いた半球状の空間で、外縁から中心にかけて階段状に段差がつけられている。中心部は円形の闘技場で、それを囲むように大勢の観客が押しかけていた。




「シルキー大丈夫かな...」


ぎゅうぎゅうに敷き詰められた観客席の中程で、ハートは心配そうに闘技場の中心に立つシルキーを見つめていた。



「シルキー頑張れ〜!緊張してんぞー!」



そう言ったのは、隣に腰掛けるシルキー隊のメンバーの1人だ。今日は隊の全員で、シルキーの入れ替え戦を観戦に来ていた。その声は本人に届いたようで、こちらの方をチラリと見ると、うんざりしたようにため息をついた。




「さぁ、一回戦!カードは大注目のこの2人!」



威勢のいい声が、拡声の魔道具を通して隅々まで広がりわたる。ちなみに実況の女性はミリアさんが街で直々にスカウトしてきた方らしい。元八百屋だそうだ。



「入団わずか一年と少しで下位部隊の隊長に就任、更にはランク表を上り詰めた期待の少女!持ち味は広い視野と冷静な戦況分析とのことです!現在53位、シルキー!」



会場に、拍手がまばらに広がった。シルキーの昇級スピードはギルドの中でもかなり珍しいようで、ちらほらと噂が広がる程度にはすでに認知されているようだ。



「対するはこちらも入団してわずか3年!元は町工場の出ながら、その魔道具の取り回しはあのエルクーツク開発長も一目置くほど!伸びの良い筋力ステータスも魅力です!現在48位、アガーフィークス!」




そう説明されたのは、シルキーの正面に立つ黒髪の青年だ。ぺこり、と会場に向けて一礼をしている。



アガーフィークスさんは確か今年24歳で、平均年齢の低いこのギルドの中では比較的上の年齢だ。



しかしこちらも入団してすぐ50位以内に入り込んだ秀才で、今回は期待の新人2人の対決になっていた。



「それではーー入れ替え戦一回戦、始め!」




・・・



「ミリア!もう始まってんぜー!」




闘技場に着いた途端、そう声を掛けられた。

孤児院からの仲でギルドの創立メンバーのカロンだ。男性ながら紫色の長髪の彼は、愉快そうに闘技場の中心に注目していた。




「お疲れー。お、ほんとだ、シルキーも頑張ってるね!」




魔法で拡張された地下闘技場は、元孤児院を改造したギルドの施設の中でも1番大きなもので、建物からやや離れた場所に位置している。



その会場の中心に置かれた闘技スペースでは、すでに新人2人の闘志が火花を散らしていた。




アガーフィークスが持ち味を活かし、砲撃系統の魔道具を用いてシルキーを攻め立てている。

対するシルキーは飛んでくる砲撃や魔法をすんでで交わしているものの、防戦一方といった様子だった。




「あちゃー、シルキーの獲物は剣だからな、こりゃちと分が悪いか?」




「あれ、カロン詳しいじゃん。いっつも入れ替え戦には興味ないくせに。」



言うと、カロンはポリポリと頬を掻いている。若干気恥ずかしそうだ。




「あー、お前だってそうだろ。アイツのこと気にかけてんのはよ。」




まぁ、正直図星だ。大魔王の心臓(ハート)の相方という点を差し引いても、シルキーは私たち、特に孤児院メンバーが気にかけてしまう理由があった。




「...シルキーはアガーフィークスと違って魔力量が多いわけじゃないから。もちろん威嚇用の射撃道具くらいは持ち合わせてるだろうけど、流石に防がれちゃうかな。」




「おい、話を逸らすなよ団長さん。」



カロンがフン、と鼻を鳴らす。そうしている間にも戦闘は続き、シルキーがじわじわと追い詰められだした。



ギルド内での対人戦の勝利条件は幾つかある。



魔力切れによる昏睡や、体力ステータスが一定割合を切った場合。本人が負けを認めた場合など、複数あるが、基本的にどちらかの試合の続行が不可能と判断された場合に勝敗が決まるシステムだ。




「おっ、見ろ。シルキーが仕掛けるぜ。」



現状ではシルキーの体力が削られつつあり、このままいけば敗北の可能性が高い。

ちょうど本人も同じことを考えていたようで、砲撃を躱すシルキーの立ち回りに動きがあった。




・・・




(このままじゃジリ貧だな。まあ、ここまでは想定通りだ。)



飛んでくる砲撃をかわしながら、シルキーは仕掛けのチャンスを窺っていた。しかしこれ以上続けていてもらちが空かない。一度立て直しを図るために、シルキーはアガーフィークスから大きく距離を取った。





(砲撃系の魔道具は中距離での威力は高いが減衰も大きい。まあ、詰めなきゃあたしの攻撃も通らねーんだけど。)





一度、大きく呼吸を整える。アガーフィークスはこちらの様子を伺いながら、ジリジリと距離を詰めてくる。




(魔力じゃ劣るが、俊敏性と反応速度はこっちが上。近距離戦に持ち込めれば勝ち。...なんてのは、向こうも分かってるよな。)




事前に下調べした情報から相手の能力を思い出す。戦いとは情報戦だと、ギルドメンバー全員がミリアに教え込まれていた。




「ま、あとは気合いだ気合い。」




その場で軽く屈伸をすると、足に意識を集中させる。魔力を脚部に集中させ適切に放出すれば、微差ながら俊敏性を高めることができる。ミリアから直々に師事を受けた、シルキーのとっておきだ。




しかし魔力の放出は繊細な技術の上に魔力効率が悪く、実際に実戦で使うものは少ない。魔力の少ないシルキーはこの一回で勝負を決めるつもりだった。




(あとは...頼りにしてるぜ、私のスキル)



シルキーのスキルは特段珍しいものではない。常時発動型で魔力消費は少ない。しかし他のスキルと比べてものすごい利点があるわけでは無いと、自身で評していた。

だがそれでも、有ると無いとでは雲泥の差がである。




つま先で地面をトントンと叩く。集中し、全魔力を足裏に込めるとーー次の瞬間、それを全て解放させ、一気にアガーフィークスの元へと駆け出した。




アガーフィークスもそれを察知していたようで、両手に持つ魔道具を一気に作動させた。素早く、丁寧な魔力注入により、数多の砲撃がシルキーを襲う。




「当たれば負け!かわし切れば、私の勝ちだ!」




俊敏性を極限まで高めるため、着用している防具は最低限のものだけだ。砲撃魔道具の威力なら、安全機能魔道具(セーフティ)が働いている闘技場内でも、直撃すれば気絶は免れない。




迫り来る砲撃を幾度となく交わしながら、魔力放出を使った高速移動でシルキーは距離を詰めていく。度重なる魔力放出により、おそらくだがこの攻撃の後、シルキーは魔力切れによる昏睡をするだろう。




(くそ、クラクラしてきやがった…だが!)




しかし無茶の甲斐あってか、その距離は着実に縮まり、シルキーが後一歩のところまで寄せ切った。




「くっ……!」




アガーフィークスが最後の抵抗に出た。懐から筒状の物体を放り投げる。シルキーの周囲を囲むように投げられたそれらは空中で各々起動すると、シルキーの方めがけ一直線に襲いかかった。




「おお、マジックミサイル(仕掛け花火)か!あいつ、いい魔力量してんな!」



戦況を見守っていたカロンが声を出す。

仕掛け花火は使い切りの魔道具で、魔力を込めれば自動的に対象を追尾して攻撃する。




お手軽でかなり便利だが、複数使うとなれば魔力消費は大きい。アガーフィークスも、ここが正念場だと認識したようだった。




取り囲むように発動したマジックミサイルが、シルキーを四方八方から襲う。




一瞬にして殺到する弾丸の群れ。逃げ道はない。


だが――


シルキーの口元にわずかな笑みが浮かぶ。次の瞬間、彼女の身体が踊り子のようにしなる。


肩を僅かに引き、首をかすめる弾丸を寸前で躱す。続けて腰をひねり、流れるような動きで横から迫る弾をすり抜ける。身体を反転させ、背後から襲いくる魔力の矢を紙一重で回避。


(ーー全部、視える!)


自分を取り囲む空間のすべて。飛び交う弾丸の動き。着弾と回避の最適解――その全てを、シルキーの脳裏が捉えていた。

戦場の全てが、俯瞰して認識されてゆく。

前後左右、そして死角すらも、彼女の「視界」の中にある。


そうして、縦横無尽に繰り出される攻撃を、まるで舞うように避け続け――

最後の一発が迫った瞬間、シルキーは膝を曲げ、一気に踏み込んだ。



風を切る鋭い音が響く。閃光が背後を掠めた刹那、彼女はすでにアガーフィークスの懐へと飛び込んでいた。


魔力切れで膝をつきかけるアガーフィークス。その首元へ、シルキーの刃がスッと添えられる。




「はは...ま、ここまで詰められちゃそうなるよな。...俺の負けだ。」



アガーフィークスが敗北を宣言した。会場がドッと湧き上がる。それと同時に一回戦終了の鐘が鳴り響いた。



「しゅ、終了ーーーー!勝ったのは、最後にとんでもない曲芸をやってのけた期待の新星!シルキーだーーー!」



・・・



歓声が響く会場の後ろの方で、カロンとミリアは一回戦を振り返っていた。




「アガーフィークスが爆撃系の魔道具を用意してたら、結果は違ったかもな。マジックミサイルは、あいつのスキルには相性最悪だ。」




「そうだね、フィークス君も経験を積んで、これからもっと成長していくだろうな。しかし…」




ミリアはまるで懐かしいものを見るかのように、魔力切れでその場にへたり込んでいるシルキーへと視線を向けた。薬剤師兼救護員のグレイルが慌てて駆け寄っていく姿も見える。




「"鷹の目"持ちの剣士か…ふふ。そんなの、どうしても応援したくなっちゃうよね〜」




「おー、やっと認めやがったなコノヤロウ。」



団長として、ギルドのメンバーには平等に接するべきであり、特別扱いをしてはいけない。




ーーそうは思っていても、やはり馴染みの深いスキル持ちの少女には肩入れしてしまう自分がいた。



敵の動きを先読みしているかのような回避。攻撃の隙を見逃さず、最小限の動きで切り込む鋭さ。かつて、共に訓練に励んだ相棒の姿が脳裏に浮かぶ。




「ほんと、これからの成長が楽しみだよ。…皆がスクスク育ってくれる環境を作ることが、私の何よりの願いなんだから。」




アガーフィークスもシルキーも、そしてハートも。いずれはギルドを支える大事な団員になっていくだろう。



彼らが無事成長できるように、その地盤を整えていこうと、ミリアは改めて自分の心に誓った。




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