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南条翔は其の狐の如く  作者: つゆのあめ/梅野歩
【肆章】九代目南の神主代行
59/158

<七>妖祓と雪童子の戦い




 大通りを駆け抜けた妖は『7』のつくコンビニの敷地に飛び込んだ。



 方向転換して氷柱を放ってくる攻撃を冷静に受け止め、後転して避ける。

 着地した朔夜は相手の弱点を見つける。それは戦法がワンパターンだということだ。護身術程度に妖術は使えるようだが、妖祓と対等に渡りあえるほどの戦闘をこなしていない。


 ならばワンパターンの攻撃を突けば勝てる。


 基本的に相手の使う妖術は、吹雪と氷柱。遠距離放出系の術が多い。放出にも限りがある。止んだところを見計らえば。


 自分が距離を詰めると、相手が距離を取るために手の平を開いて氷柱を放ってくる。連続して飛んで来る氷の刃を後転、飛躍して避ける。


 手の平を結ぶ動作を目にした。放出が止む瞬間だと察し、アスファルトを蹴って懐に潜り込む。


 瞠目した雪童子の腹部に拳を入れる。


 間際で受け止められたものの、上段蹴りによって妖の視界を奪うことに成功した。雪之介の掛けていた眼鏡が宙を舞い、駐車場に転がる。


「高校生でも妖祓か。動きはプロだね」


 路面を氷結させて体勢を崩しにかかろうとする雪童子に、口角をつり上げる。


「そりゃ幼少からの賜物だよ」


 滑る障害物も平然と乗り越え、今度こそ腹部に拳を入れる。

 痛恨の一撃だっただろうに雪之介は、痛みに持ち堪えると、蹴りを返して大きく後ろへ飛躍した。


 顎から伝う汗をぬぐい、「参ったね」飄々と笑みを浮かべる。


「妖祓を舐めていたわけじゃないけど、これは想像以上だ。もう少し力が通ると思ったけど、やっぱり僕は普通の高校生だなぁ」


「普通の、ねぇ」


 皮肉を籠める。何処が普通なのだか。



「はは、おかしいかい? 妖の僕が普通の高校生を語るなんて。生憎、化け物を除いては普通の男だよ。学校に通って、勉強をして、友人と遊んで。妖と化した翔くんも本来はそうやって暮らす筈だった。化け物を隠して生きようとしていた。けれど、それすら彼はできなかった。何故なら彼は宝珠に“選ばれた”妖だったから」



 言葉を詰まらせてしまう。余裕を取り戻した雪之介は、腹部を擦っていた手を止めて、朔夜を見つめてくる。


「君は知っているかい? 異質に見られる辛さを。化け物として見られるその辛さを。僕も彼も、それを抱えて生きなければいけなかった。いや、人間界にいる限り、その想いを抱えて生きなければいけないんだ」


 飛鳥が敷地に飛び込んでくる。脇目にも振らず妖は語りを続ける。


「僕の両親は妖だけれど、生まれた場所も育った土地も人の世界。他の人間と同じように育った。なのに、種族が違うために“化け物”扱いさ。人間と違う能力を持つことすら苦痛だった時期もあったなぁ」


 おかげで人間になりたいと切に願う、哀れな化け物となってしまった。

 自嘲する雪童子は己の眼鏡を探すべく、視線をあちらこちらへ向けている。

相手の隙は多い。けれど朔夜は動けずにいた。今ならば確実なる勝利が掴めるというのに。


 コンビニの小さな駐車場の一角、車体の下に転がる眼鏡を見つけた雪之介は視線を戻してくる。


「翔くんもね。異質に見られる辛酸を常に味わっていた。自分の意思関係なしに妖に種族転換した彼は、いずれ起きるであろう種族の摩擦を予測していた。でも片隅で願っていた。君達と同じ人間でありたい、関係を崩したくない、と叶わない夢を抱いていた。彼も結局“化け物”となってしまったのだから」



「違う! ショウは」



「何も違わないよ和泉くん。何も――だけどね、憶えておいて。彼は何処にいようと、住む地が、生きる場所が、身を置く世界が違おうと自分は幼馴染達が大好きなんだ。君達の気持ちを裏切り、それこそ憎まれたとしても、いつか対峙することになったとしても。彼の覚悟や想いは本物なんだ。僕はそんな白狐の努力を無駄にさせたくない」



 次の瞬間、雪之介が眼鏡を取りに行くために駆け出す。

 遅れを取った朔夜が、急いで後を追うが先手の差で妖が眼鏡を拾うと、駐車されている軽自動車のボンネットを台にして宙に身を投げる。


「凍れ」


 瞳を青白く光らせ、雪童子は両手を地上に向けて冷気を放つ。瞬時にアスファルトの表面が氷結した。地上にいた妖祓の足も厚い氷に閉じ込められる。


「しまった。足場を取られた」


 魔除けの塩を撒くが溶けるのに時間を要する。この機を逃す雪童子ではない。

 着地と同時に地を蹴って懐に入ろうとしてくる。


「私の存在を忘れないでね!」


 危機を察知した飛鳥が護身術を発動させる。

 彼女は数粒の小石を拾うと、霊気の炎を纏わせて妖に放ったのだ。雪の妖にとって火は最大の弱点。雪之介も例外ではなく、燃え盛る火を見るや顔を引き攣らせて後ろに飛躍。


 幾つかは凍らせるなり、避けるなりの対処を取っているが、その余裕のなさは御覧の通りだ。


「朔夜くん。法具なしの私達じゃ一人相手でもきついよ」


 自由となった足首を動かし、朔夜は不満気に鼻を鳴らす。

 できることなら飛鳥には、手を出してもらいたくはない。これは彼と自分の勝負なのだから。


 きっと飛鳥も承知はしてくれているのだろうが、現状を見ると法具なしでは確かに一人では不利だ。相手は護身程度の妖術を得ている。


 自分達が幼馴染のことを諦めれば、相手も引いてくれるだろうが、それでは此方の立場がないのだ。


「なら飛鳥、凍った路面を対処してくれないかい? 僕はあいつの相手をするから」


 あくまで、手は出さないで欲しい。態度で示すと、飛鳥に呆れられてしまった。

 仕方がないではないか。自分も男、意地とプライドが己を突き動かすのだから。

 飛鳥が凍った路面を溶かすために自分の魔除けの塩を取り出す。流し目、準備が整ったと判断した朔夜は仕掛けに出る。


 火を極端に恐れている妖と対等に渡り合える手段は一つ。小石を拾うと、霊気を蓄積させて相手足元を狙う。


「アツッ!」


 距離を持って避ける雪之介が、小さな悲鳴を上げる。氷の妖にとってそれほど火は熱いものなのだろう。

 術で凍らせようとするが動きが鈍っている。最大限にまで火を警戒している様子。

 舗装されたアスファルトで拾える小石なんぞ高が知れているため、威力は然程ないがこれは申し分ない反撃だ。


「錦。僕達が勝ったら、ショウに会うための仲介役になれ!」


 小石を投げてから戦利品を要求すると、「勝ったらね!」即答が返ってきた。

 交渉成立だ。負けたらどうするかは後で考えよう。勝ったら、幼馴染に会う確かな契機を掴もう。そしてどうする? そんなのまた後で考えたらいい。


 どうしたいかなんて自分にも分からないのだ。あの関係に戻りたい、それ以外は自分にも。




 小石を拾うために移動する。

 路面を瞬時に凍らせて妨害してくる雪童子だが、その氷を溶かすために相棒が魔除けの塩を撒いて対処してくれる。彼女は自分以上に、道具の使い方が長けている。法具なしでも広範囲で路面に張った氷を溶かすができる。


 動くことに何ら支障はなく、小さなちいさな小石を三つ拾うと雪之介に放つために接近戦にもつれ込む。


 距離を詰められることは、自分とって不利だと雪之介は理解している。

 そのため距離を保つために地を蹴って飛ぶ。待ち望んでいた機会だった。


「これで終わりだ」


 無防備となる着地の瞬間を見計らい、霊気を蓄積させた小石を投げる。

 狙うは足。自由を奪えば、相手は降参を口にしてくれるだろう。これは調伏するための戦ではない。妖に与えるのは必要最低限のダメージで良い。

 賢い雪童子は此方の目論見を察したのだろう。


「しまった。それが狙いなんだね」


 小石が跳ね返されたのは、直後のことだった。

 瞠目するのは術を放った朔夜、的となる運命だった雪之介、路面の氷を溶かしていた飛鳥。

 両者の間に割って入った少年は、、上がった息をそのままに、構えていた通学鞄を下ろす。


「ふーちゃん……どうして此処に」


 彼、東西冬斗の乱入によって優勢だった空気が崩されてしまう。

 全力疾走してきたのだろう。肌寒い春の夜にも関わらず、冬斗のこめかみからは汗がにじみ出ていた。


「や、やっと追いついた。くそ、揃いも揃って足が速ぇんだよ。バスケ部副キャプテンの名が廃るんだけど」


 三つほど呼吸を置き、上体を立てた彼が朔夜達を睨んできた。


「お前等何なんだよ! 雪之介に恨みでもあんのか! よく分からんけど、二人がかりは卑怯だろう。俺が参戦してやらぁ! さあ、どこからでも掛かって来い」


 通学鞄を勇ましく大きく振る冬斗に、血相を変えたのは雪之介である。


「何でもないってば。大丈夫っ、ぎゃっ!」


 加減のない拳骨が、雪之介の頭部に落ちた。声にならないほど痛かったようだ。彼はしゃがみ込んで、身もだえている。


「な、何も本気で殴らなくても」


「本気で殴らねぇと、本気で心配したって意味にはなんねぇだろうが! お前、まじ喧嘩売ってんのか!」


 呆けたのは雪之介の方だ。頭を押さえたまま、ぽかんと相手を見つめている。

 そんな雪童子の首を腕で絞め、冬斗はこめかみに青筋を浮かべて悪態をついた。


「お前はどんだけ人に心配を掛けたと思ってやがる。ちったぁこっちの身にもなれ。そんなに俺が頼りないか」


「ギブギブっ!」


 悲鳴を上げる雪之介を解放すると、その額を何度も人差し指で突き、冬斗は聞く。


「俺が人間だから頼れなかったのかよ、お前。またそうやって人間は弱いからぁ、とかムカつくことを思って相談すらしなかったのかよ。狙われていることを隠してやがったのかよ」


「そ、そんなこと」


「あるじゃねえかよ。なかったらな、その場で相談の一つでもするだろう。お前はいつだってそうだ。種族を気にして俺達と一線を引きたがる。妖怪? 化け物? だからなんだよ、お前はお前じゃねえか」


 蚊帳の外に放り出された朔夜は思い出す。幼馴染に告げた言葉を。

 妖になる彼に、心は人間でいて欲しいと願った自分。分かったと、笑って承諾した彼。


 けれど彼は自分達の手を振りほどいて、妖の世界に帰ってしまった。彼は幼馴染とずっと一緒にいたいと願っていたのに。


「人間様は弱いだろうけど、やるときゃあやるんだ。よし、妖怪! 来いよ!」


 現実に思考を戻した朔夜は、飛鳥と顔を見合わせて溜息をつく。まだ妖と見られているようだ。


「ふ、ふーちゃん! 彼等は人間だよ」


「だってお前と張りあっていたじゃないか。人間にしては次元がちげぇよ」


 冬斗が訝しげに雪之介を見やる。


「なんていうのかな。霊媒師なんだよ彼等。僕達、妖の天敵というか」


「霊媒師。んー、あれかお祓いする人間ってことか? でも相手は人間なんだろう? なら俺でも勝てる! おんなじ人間なら勝てる!」


 「いや、多分負ける」「なんでだよ人間だろ!」「そうなんだけど」「バスケ部副キャプテンを信じろって!」「そういう問題じゃなくて」「じゃあどういう問題だよ」「彼等は人間の味方で」「お前の敵は俺の敵だろ?」「ふーちゃん……」「あ、なんだよその目!」



「怪我するよ、ふーちゃん。僕を思うなら、是非ぜひ身を引いて欲しいんだけど」


「うっるせぇ! お前の危機を知って、のうのうと帰れるか阿呆!」



 彼は本気で怒っていた。

 けれどそれは、雪之介のことを思ってのことだろう。妖と人間、異種族を理解した上での訴えなのだ。

 相談してくれなかった歯がゆさと苛立ち、そして心配をすべてぶつけようと雪童子を追い駆け回している。殆ど初対面だが。彼等の関係の深さを垣間見た気がした。


(すごいな)


 嗚呼、羨ましい。本当に羨ましいと思った。異種族を諸共しない彼等の絆に大きな羨望を抱く。


 朔夜は思う。

 もし自分達が妖祓でなく普通のヒトの子で、仮に幼馴染が今のように妖になってしまったら、今の自分達のように妖の彼を拒絶などしなかっただろう。妖祓だったからこそ、自分達は妖になる幼馴染にこう望んでしまった。“ヒトのままでいて”と。


 幼馴染はその言葉をどのように受け止めたのだろう? それは彼が望んでいた言葉なのだろうか?


 戦意が喪失する。彼等に背を向けると、飛鳥に帰ろうと声を掛けた。これ以上、錦雪之介を相手にすることは不可だろう。

 なにせ彼には強い“味方”がいる。人間を守る職を就いている自分達にとって、相手は強敵だ。


「だろ?」


 同意を求めると、飛鳥はそっと頷き、預けていた通学鞄を差し出した。

 彼等を見やれば雪童子の友人であろう女子二人がコンビニの敷地に入り、雪之介の下に向かって走っている。大丈夫だったか、何が遭ったのか、東西は自分達を置いていくな等々会話が耳に飛び込んできた。


「待ってよ。和泉くん! 楢崎さん!」


 二人がコンビニの敷地から出ようと歩き出した寸の間、それを見た雪童子が止めに入って来る。


「決着、ついてないよ」


 その旨を伝えられると、もう着いたと朔夜は素っ気なく返す。

 この勝負は自分達の負けだ。妖だけならまだしも、人間を相手にはできない。自分達は妖祓。ヒトを守るための者。

 雪童子の利用は諦めて、自分達で幼馴染の手がかりを掴むと返した。


 するとおかしなことに、


「それでいいの?」


 雪之介が引き止めてくる。あんなにも繋がりを断ち切りたいと願っていたくせに。


「僕は翔くんと繋がりを得ている、数少ない妖。君達は覚悟を決めてぶつかってきているんじゃないの? なのに引き下がるなんて」


 引き下がりたいわけがない。

 けれど、引き下がる理由ができてしまった。


「お前にとって、その人間達はなんだい?」


 足を止めて振り返る朔夜は、此方の事情に巻き込むべき輩なのかと尋ねる。返事を聞かずとも分かる、彼にとってその人間達を巻き込むのは本望ではない。


「大切にするんだね。蔑ろにしていると、僕等のように繋がりを断たれるよ」


 呆けた顔を作る雪童子に、邪魔したと軽く詫び、今度こそ飛鳥とコンビニの敷地を出る。



「まっ、」



 雪之介の制止が聞こえた、直後のこと。


 コンビニと、その一帯周辺の建物の明かりが一斉に落ちる。停電だろうか。急に視界が悪くなり、通行人達は戸惑いの声を上げていた。

 朔夜と飛鳥も天を仰ぎ、停電だろうかと周りを観察する。


 しかし次の瞬間、肌を刺すような妖気が波紋のように波打ち、霊力を持つ二人に警鐘を鳴らした。複数の妖力を感じる。


「まさか。これは妖の仕業か」

 戸惑いの空気を裂くような悲鳴が聞こえた。コンビニの方からだ。体ごと振り返ると、自動扉をはじめとした硝子という硝子が次々に粉砕している。


 店内にいた人間達は悲鳴をあげ、その場で蹲っていた。


 外にいた雪之介をはじめとする人間達も、車に乗り込んだり、突然の出来事に頭を抱えて座り込んだり、ワケが分からないと佇んでいたり。人間たちは目に見えない現象に怖じていた。


「来るっ! 飛鳥、構えて!」


 二人は反射的にさっきいた場所に戻ると、ただの人間である冬斗達の前に立つ。


「封魔結界!」飛鳥が結界を張り、

「妖金鎖!」朔夜が向かってくる黒い影に向かって術を発動する。


「僕の友人に何してくれるんだい?」


 拘束された黒い影に向かって、雪之介が鋭い氷柱を宙に召喚。それらを影に向かって放った。


「えへへ。良いコンビだね、僕達。手を組んだら、案外イケるんじゃない?」


 着地した雪之介が、ナイス連係プレイだとおどけてくる。


「冗談。死んでも、ごめんだね」


 二度としたくない連係プレイだと朔夜は溜息を零した。まさか妖と連係を取るなんて夢のようだと、飛鳥もついつい苦笑いを零している。


 結局、自分達は妖から逃れられない運命なのだろう。折角、職から足を洗おうとした矢先も、とんだ出来事。溜息をつきたくなるばかりだ。


「え、何? 何が起きているんだ? 、お前等は敵だろうよ」


 霊力を持たない冬斗が、ワケ分からないと目を白黒させ、自分達を交互に指差す。


「一時休戦だね」

「一時休戦だよ」


 雪之介と朔夜が声を揃えた。


「もう嫌だ。錦、どこかに行ってくれないかい?」


「そんなこと言って。嬉しいくせに」


 朔夜は顔を顰め、雪之介はケラケラと笑う。ますますワケが分からんと冬斗は首を傾げた。


 確かに、たった今まで対峙していたのだ。混乱するのも無理はないだろう。自分達だって、こんなことになるとは思わなかったのだが、そんなことも言っていられない。


「集中して。妖の気配が多いよ」


 飛鳥が忙しなく視線を配り、異常な数の多さだと目を眇めた。しかも妖力の値が高い。法具なしで祓えるレベルではないかもしれないと分析した。


「不味いね」


 朔夜は焦燥感を表に出した。護身術だけで、何処まで人びとを守れるか。せめて霊力を持たない人間だけでも避難させたいところだが。


「もう君達、妖祓でしょう? 肝心な時に限って役に立たないんだから」


 何をしているんだと腕を組んで呆れる雪之介に、朔夜は頬を引き攣らせた。


「妖のお前にだけは言われたくないんだけど」


 大体、人様に迷惑を掛けているのは、雪之介の同胞である妖ではないか。

 同族代表としてあれをどうにかしろ。親指で指示すると、雪童子は胸を張った。


「やだなぁ。低俗な妖と一緒にしないでよ。僕は人様に迷惑なんて掛けない」


 善意のある妖に対しては慈悲を向けるが、悪意のある妖には例え同胞でも手を下す。これが妖の世界の掟であり、理であり、価値観。

 同族殺しといえばそうかもしれないが、他者を傷付ける妖など、同胞とすら認められないのだ。よってあれは同胞ではないと雪之介。


「ま、どっちにしろ、あの妖達をどうにかしないと。多分、あれは鬼門の祠の瘴気を吸って強大な力を得た妖だよ」


 なにせ、此処南の鬼門の祠の結界は解けかけている。

 前以上に瘴気が溢れ、善悪関係なしに妖達が暴走を起こしているのだ。それに加え、頭領である北の神主が倒れた。悪しき妖達はこの機を逃さないだろう。


「北の神主が倒れた? あの赤狐が?」


 自分達を赤子のように扱った、あの赤狐が倒れたなんて。


「え、知らないの? 今、此の地の妖達は大騒ぎだっ、よ!」


 雪之介は手中に氷で模った短刀を召喚すると、頭上に飛躍した影に刃を突き刺す。その影はやがて六つ足の獣に姿を変え、痛みに呻いて霧散。不気味な断末魔に人間達は怯えの顔を見せた。


 雪童子の友人達も例外ではなく、一体何が起きているのだと忙しなく質問してくる。

しかし、答える余裕はなかった。


 妖祓を辞めようとしている間に、妖の世界ではそのような事件が起きている。だとしたら両親や長は奔走している頃だろう――もしかすると、長達は、いや祖父達は再び白狐を捕縛しようと目論んでいるのでは?


 十分に有り得る。妖祓は宝珠の力で祠を封印しようとしていた。宝珠を持つ白狐が狙われる可能性は十二分にある。


 それを朔夜が口にすると、白狐の体内に宿る宝珠は決して取り出してはならないと、雪之介が血相を変えて捲くし立てた。


「何故なら、白狐の体内にある宝珠の御魂は、彼自身の生命を繋いでいるのだから!」


 血の気を引かせたのは朔夜達の方だった。

 彼は決まり悪そうに唸って重い口を開く。


「翔くんが人間だった頃、彼は妖によって瀕死の重傷を負わされ、殺されかけた。そこにある妖狐が、自分の妖力を分け与えた」


 それによって、南条翔は命を繋ぎとめた。


「その妖狐は、宝珠の御魂を持つ特別な妖でね。それを受け継いだ彼は、宝珠によって生命を維持している。今の彼は自分で回復する力を持っていない。それだけ、妖から深手を負わされたんだ」


 時期がくれば生命力は回復し、体内から宝珠を取り出せる。


 言い換えれば時期がくるまで宝珠を取り出してはならないのだと雪之介。もし取り出してしまえば、南条翔は間違いなく死ぬ。そう真顔で答える。


(あの馬鹿!)


 朔夜は強い憤りを感じた。

 それならそうと、何故言わなかったのだろうか。宝珠については何度も尋ねた。言う機会は沢山あった。


 なのに彼という男は。


「くそ。怒る時間すら与えてくれないか」


 妖の影が揺らぎ、目に付く人間達へと向かっていく。

 朔夜は店内に侵入する妖達を捉え、せめて駐車場にいる人間達は助けなければ、と飛鳥に告げた。このままでは負傷者が増え、人々の命が脅かされる。


「わかっている。それは分かっているけどさ、朔夜くん」


 法具を持たない自分達の守れる許容は、せいぜい雪童子の友人達くらいだと飛鳥。行動を起こしたいのは山々だが、数が多すぎる。下手に動けば、彼の友人が危ぶまれる。


「せめて、動きを止めないと。みんな下がって!」


 雪之介も焦っているようだ。

 地を走る化け物達の足を取るため、コンビニの敷地全体を凍結させた。

けれども、妖達は苦にしない。何も知らない人間たちがパニックを起こすばかりだ。完全に悪循環に陥っている。


 店内から金切り声が聞こえた。


 得体の知れない何かが腕を裂いたと泣き喚いているOL。そんな彼女に恐怖のあまり発狂したのでは、と懸念する中年のリーマン。警察に電話しようとする店員。ワケも分からず涙を流す茶髪の風俗嬢。暗い店内が一層人々の恐怖心を煽っているようだ。


 コンビニばかりに気を取られていると、獣のかたちをした妖の一匹が黒炎を放った。


 倣って他の妖獣も口から黒炎を放ち、自分達の周りを炎で包む。妖は見えずとも炎は見えているようで、人間達のどよめきが聞こえた。

 対抗するように雪之介が吹雪を呼ぶが、複数の小さな火力が一つになることで凄まじい炎へと変わり、それは轟々とうねりを上げる。


「あ、熱いっ! 溶ける!」


 雪之介が悲鳴を上げ、滝のように汗を流した。

 雪の妖怪にとって、火を操る妖怪は天敵他ならない。見る見る、和服を汗で濡らす。否、それは汗ではなく、雪の結晶が溶け始めた証拠であった。


「錦っ!」


 戦力の要である雪之介が片膝を折ることで、事態が悪化していく。

 妖祓を辞める気持ちで法具を手放したが、今となってはその法具が恋しいものだ。法具があれば、こんな悪戦を強いられずに済んだのに。


「朔夜くん上!」


 黒炎を放った妖達が飛躍して自分達に鋭利ある犬歯を向けてきた。飛鳥は結界を強化するが、妖すべてを回避はできない。



(やられ――っ)



 耳のつんざく雷鳴が轟いた。

 何が起きたのだ。視線を持ち上げると、青い稲妻が飛躍した妖の身を焦がしていた。

それは駐車場にいる妖達を次々に呑み込んでいき、やがて店内にいる妖達にまで手が伸びる。妖達は深まる夜の闇に断末魔を発し、順に消滅していく。


 取り巻いていた炎は、強い風が根こそぎ攫い、瞬く間に消えた。朔夜達は炎に焼かれることなく、雪之介も溶けずに済む。


 固唾を呑んで周囲を観察していると、生き残っている妖達が天を見上げ、何かに怖じたように身を小さくした。つられて天を見上げる。

 ドライブする人間に分かるよう、背丈を高くしている『7』の標識の上に人が立っていた。否、それは人の容に似た妖。


 闇を照らすような眩しい白張を身に纏い、夜風に持ち前の黒髪と耳、そして白い三尾と靡かせている。手には白い下地に赤の輪が描かれた、蛇の目模様の和傘。


 それを持っている輩に、朔夜と飛鳥は息を呑んでしまう。


「ショウ……」


 縦長の瞳孔を膨張させ、妖はぎらつく赤い瞳を地上に向けていた。両隣には巫女と銀狐を従えている。


 その妖は暴君に振る舞う妖達を見据えると、空に轟く遠吠えを発した。


 妖狐が額に漆黒の二つ巴を浮かべると、地上を這う妖達が一層怯えを見せる。あの巴は妖であれば誰もが知っていた。だからこそ妖達は怖じるのだ。

 和傘を閉じ、妖狐は「去れ」ヒトの世界から手を引けと命じる。


「此処で何をしている、我が同胞よ。赤狐が倒れたことを機に、この地を好き勝手できるとでも思っているなら考え直した方がいい。お前達が思っているほど、我々は甘くない」


 頭領に集い、慕い、神職に携えている妖はごまんと要る。自分もその一人だと妖狐は目を細めた。



「我が名は三尾の妖狐、白狐の南条翔。またの名を九代目代行南の神主と申す。宝珠を宿す我が声を聞き、思うことがあるのなら前に出てくるがいい。何もなければ、直ちに立ち去れ。今ならまだ命は救ってやろう」



 その若き妖狐は、己を妖だと受け入れ、【九代目代行南の神主】だと名乗った。


 あの夜、妖の世界に帰ってしまった時から覚悟はしていたが、ついに来てしまった。ただの人間だった幼馴染が、“南の神主”を名乗った


 白き狐が殺気立つ。


 地上で恐れおののく妖達が、我先に闇へ還っていくが、それは建前。彼等は白狐の背に回り、勇猛果敢に飛び掛かった。


「残念だ。良心が少しでも残っていれば、改心を期待し、見逃したというのに」


 白狐は独り言を風に乗せると、仲間と宙に身を投じ、振り下ろされた鋭い爪から逃れる。黒髪の巫女と銀の狐が姿を変え、妖を彷彿させる大きな狐に変化。妖達に鋭く太い犬歯を向け、その身を食いちぎる。


 宙を返ってアスファルトに着地した白狐は、和傘を勢いよく振り下ろす。


 青い稲妻が四方八方に迸り、彼を喰らおうとしていた化け物が塵と化す。

それを回避した妖には和傘を横一線に振り、風を生んで身を断ち切った。鋭利ある空圧によって吹き飛ばされた妖達の身は、細切れとなり、雨のようにぱらぱらと地へ落ちていく。


 和傘を開いて肉片を避ける白狐は口角を持ち上げ、赤い眼を光らせた。


「次は誰だ。白狐は逃げも隠れもしない」


 白狐が妖に微笑む。その眼光の鋭さと、綺麗に微笑する表情に恐れをなしたのだろう。小心者の妖達は命惜しさに闇へ消えていく。

 風と共に妖達の気配は消え、停電しているコンビニに静寂が戻った。聞こえてくるのは、人間達のパニックになった声や、すすり泣く声ばかり。


 しかし朔夜の耳にも、飛鳥の耳にもそれは入ってこない。ただただ、妖の世界に帰ったもうひとりの幼馴染を見つめていた。


「ショウくん」


 飛鳥が名を呼ぶものの、妖狐の耳には入っていないようでコンビニ全体を見渡し、意味深に吐息を零す。

 彼女がもう一度大声で名を呼べば、ようやく妖狐が視線を流した。

久しく見る彼の眼は本当に鋭い。


「妖祓。此度一件の騒動は妖に非がある。真摯に詫びよう」


 そんな言葉が聞きたいわけじゃない。畏まった口調など彼に不似合いだ。もっと砕いた物の言い方をしてこそ、自分達の知る幼馴染だというのに。


「ショウ。君はこの数週間、家族も僕等も心配させて……何をしていたんだい」


 気持ちは届かず、かつて幼馴染だった妖狐は、ヒトの世界に家族などいないと言い放つ。耳を疑いたくなった。



「我は南の地の妖を脅かす同胞、並びに人間は決して許さない。南の地は、三尾の白狐の地とする」



 今宵よりこの地は、代行の白狐が統治すると声音を轟かせる。

 然るべき神主が現れるまで、この白狐が領地の責任者だと述べ、何かあれば己が責を取り、何かあれば己が領地を荒らす輩に天誅を下すと明言した。


「憶えておくがいい、妖祓。白狐は現時点において、この地の頭領だということを」


 それは警告他ならなかった。

 無慈悲に同胞に手を出せば、幾ら幼馴染であろうと彼は神主代行の名に置いて人間に刃を向けるつもりなのだ。

 なにより妖を優先すると彼は遠まわし告げている。何故なら彼は妖達を先導する“南の神主”代行に就いてしまったのだから。


 三尾を持つ白狐が白張の袖を翻した。飛鳥が駆け寄ろうとすれば、彼の周りに青白い狐火が集い始める。近付くなと無言の威嚇に彼女は足を止めた。

 一度だけ顧みる彼の弱弱しい眼光は、本当の心を垣間見たような気がする。その表情は確かに自分達の知る幼馴染だった。


 再び足を動かす白狐。行ってしまう。折角再会した幼馴染が。


「待てよショウ! 君は僕達とまともに話すことすらせずに、また置いて行くのかい!」


 足の代わりに声が出る。


 怒りに震えているのか、はたまた別の感情に震えているのか、朔夜の声が上ずった。

 轟々と青く白く燃える狐火を従え、闇夜に還る白狐は振り返らない。彼は置いて行くのだ、思い出も家族も自分達の関係もすべてこの世界に。


「どれだけっ、心配していたと思うの。ショウくん。私達も、おじちゃんもおばちゃんも、ショウくんを待っているんだよ!」


 泣き出しそうな相棒の声に狐の耳が微かに動く。相手の歩調が遅くなった。



「知らない、今の俺はお前達を知らない。今のお前達も俺を知らない。俺はショウじゃない。三尾の妖狐、白狐の南条翔。此の地の次代神主を待つ、代行神主だ」



 以前の翔ではありえない言動である。これが種族の壁なのか。嗚呼、自分達の間には明らかな壁が出来ている。高く厚い壁が出来ている。


「ちょっと、僕を置いて行かないでよ!」


 それまで片膝をついていた雪童子がすくりと立ち上がる。

 体が冷え、回復したのだろう。友人の輪から飛び出し、二人の脇をすり抜けて代行神主の後を追った。


「あ、雪之介! またお前は勝手にどっか行こうとする!」


 冬斗が呼び止めると、彼は足を動かしたまま体を此方に向けて後ろ歩き。


「化け物には化け物の事情があってさ、今夜は白狐と妖の世界に帰るよ。ふーちゃん達は妖祓のお二人さんに送ってもらって」


 辛酸を味わっている最中、能天気な声が妖祓をご指名する。

 間の抜けた顔を作る二人に対し、雪童子は満面の笑顔を作り、「僕の友人をバス停まで送ってあげてくださいな」なんぞとのたまってきた。

 目を点にする朔夜達に、雪之介は人を守るのが仕事でしょうと指摘する。


「まがいものでも妖祓なのだから、ちゃんと友人を安全なバス停まで送ってよ? ふーちゃん達は、ただの人間だし」


 唖然の愕然である。

 自分達に狙われたことなど念頭から消したように、横着ぶった仕事を押し付けてくるなんて。あの雪童子は随分といい性格している。


 朔夜の沸点が急激に下がり、こめかみに青筋が立った。追い撃ちをかけるように雪之介が片目を瞑って舌を出す。


「今度はもっと強くなって僕を誘ってよ。また愉しく遊ぼうね」


「あ、遊ぼうだって? お、お前っ、あれだけ僕達に追い詰められておきながら」



「負けって認めたくせに。ちゃんと、敗北は認めてよね。い・ず・み・く・ん」



 片目を瞑ってぺろっと舌を出す雪童子は粉雪を散らし、今度こそ白狐の後を追った。

 堪忍袋の緒が切れたのは朔夜である。銀縁眼鏡のブリッジを押すと、盛大に口元を痙攣させ、己の霊気を昂らせた。


 あまりの剣幕に飛鳥は固唾を呑んでいるようだった。


「錦、今すぐ戻って来い! お前だけは祓う。妖祓をやめる前に必ず祓ってやる。その余裕の塊をかき氷にして食ってやるっ!」


 あっかんべえ。雪之介は、わざわざ振り返って挑発してくる。もはや見過ごせない小癪な妖である。


「できるもんなら、やってみてよ。お腹壊すと思うよ」


 ケタケタと笑う雪之介は、銀狐に跨る白狐の後ろに乗り、妖狐達と共に夜空へとのぼっていく。

 冷たい木枯らしが吹いた。雪の結晶が混じるその風に乗り、妖達は不気味な闇夜へと消えていく。闇こそ彼等の還る場所なのだ。



「……ったく、錦も腹立つけど、ショウにも腹が立つ。何も言わず行くなんて」


 薄らと怒りが冷め始めた頃合いを見計らったかのように、「なあ」それまで傍観に立っていた冬斗が友人を代表して声を掛けてくる。

 親友の件があるため、不機嫌と警戒心を露骨に出している。


「なんだい?」

「なんだい、じゃねえよ」


 彼は右の手を腰に当てる。


「お前等は雪之介の何だ?」


 ふてぶてしく鼻を鳴らし、バス停の道中で説明してくれよ、と命令してきた。

 態度よりも、彼の言葉に反応を示してしまう。いま、なんと。


「お前等。送ってくれるんだろ? なら、その途中で説明できるじゃんか」


 既に冬斗の中で、自分達がバス停まで送ると仮定付けられている。承諾した覚えもないのに。


 そこを指摘すると、


「雪之介が言ったんだ。それに従うのがベストだ」


冬斗が肩を竦める。癪ではあるが、自分達は力のない人間。力のある妖の指示は、自分たちにとって必ず有益なもの。


 だから指示に従うのだと冬斗は溜息をつき、「か弱い俺等をちゃんと送れよ」と、傲慢にのたまった。

 さすがは雪童子の友人である。雪之介といい、その友人といい、どっこいどっこいの横着っぷりだ。もはや恐れ入る領域である。


「……錦っ、説明するのが面倒で、妖の世界に行ったんじゃ」


 この友人達は、見るからに事情の隅々まで追究しそうなタイプである。

 頭痛のしてくる状況に深い溜息が零れた。


「こんなにも恐ろしい目に遭ったのに……君達は、なんで妖と関わるんだい」


 朔夜は疑問を投げかけた。

 すると、冬斗が疑問符を頭上に浮かべる。


「なんでってそりゃ。雪之介の置かれた状況を知るためだろ?」


 さも当たり前のように答える。


「あいつはすぐ妖怪だの人間だの、理由をつけて俺達から逃げちまう。誰よりも種族とやらを気にしているくせに、誰よりも種族とやらを理由に走り出すんだ。だから追い駆けるんだよ。それこそとっ捕まえておかないと、また馬鹿をしでかしそうだな」


 手間の掛かる奴だと愚痴る彼は、小さな苦笑いを零した。


「種族のことで一々雪之介が逃げるなら、俺はいつまでも追い駆け続ける。それが人間になりたがっている……。あいつにしてやれる、俺の精一杯だ」


 追い駆けないと何も始まらない。でなければ、説明もしてくれないのだと、冬斗は肩を竦めた。その横顔は、さみしそうだ。


「お前等は追い駆けなくていいのか? さっきのやつ、お前達の知り合いだろ?」


 置いて行くなと訴える前に、どうしてその足で追い駆けないのだ? 追い駆けることは不可能なのか?


 自分には理解できないと冬斗は瞬き、二人を見つめた。呆ける妖祓達をいつまでも見つめた。



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