第4話 公爵令嬢と学院レクターの魔法大会分析。魔法とは何か、久しぶりに考察します(久しぶり)
同日、王立学院
「魔法大会のデータ、読ませてもらったよ。実に興味深いデータだった」
ギリアム先輩が来たわ。
今日は各々自由時間なの。研究室には私一人。なんとなーく、時間が空いているときは研究室に来てしまうわね…。たまり場みたいになっているわ。とはいえ、私も本調子じゃないし、本当はゆっくり休んだ方が良いのかも知れないけれど。
なんだか、秋口っていつも調子が悪い気がするのよね…。風が一気に冷たくなるから、身体がついてこないのかも知れないけれど。
ちなみに、ギリアム先輩も二日に一度は顔を出すわ。暇、ってことは無いと思うのだけれど。
「会食とか、お茶会とか、大丈夫なんですか?」
ギリアム先輩を迎え入れて、お茶を入れる。コーヒー、少しは持って帰るんだったかしら。全部コレットにあげちゃったから。仕方ないわよね、『お姉ちゃん』なんて言われたら、思いっきり甘やかしてあげたいし…。元気にしているかしら?
「今は全部断っているんだよ。夕食時だけにしてくれ、ってね。そういうフランソワも、最近はパーテーションの向こうばっかりじゃないか」
補足だけど、食堂ってパーテーションで仕切られてるのよね。貴族様と平民(特待生)で。お互い相互に干渉しない、と言うわけ。
「最近はお誘いも落ち着いてきたので」
一時期、それこそ魔法大会の直後は手当たり次第にお誘いが来たのだけれど。断り続けていたせいかしら。特にグランド・ディベートの後は一件もないわ。
「それはそれで奇妙だな…?」
「奇妙、ですか?」
「ま、気にしなくてもいいかな。彼らも現金だからね。気が向いたらまた誘ってくるさ」
「このままが平穏無事で良いんですけど」
これは本音よ。貴族同士のなれ合いとか、苦手なのよね。
「ところで、今日は魔法大会について議論をしたいのだけど」
以前、セドリック先生と散々議論したけれど、確かに当事者の話は聞いていないわ。ここは是非、ギリアム先輩の意見も聞きたいところね。
そもそも忘れていたけれど、この研究室の設立はシオンの魔力9999の秘密を解く、という目的だったのだし。ブラウン運動と違って、こっちの方はあまり成果が無いけれど。
議論を始める前に、まずはデータを振り返りましょうか。
・魔法を使うと気圧が増える
・シオンだけ、気圧が減る
・バナード・アイアンサイドの魔法(鉄躯鋼装)は磁気反応あり
・雷系魔法は電気反応あり
・ギリアム先輩とシオンの決勝戦では、磁場も電力も気圧も狂いまくっていた。
「という感じですね。折角ですし、決勝戦のお話を聞かせてもらえません?」
決勝戦だけはデータが取れなかったのよね。魔吸槽が破裂したから、それどころじゃ無かったのよ。
「ああ、面白い経験だったよ」
「シオンの魔法ですか?」
「その通り。アレは何というか…魔法の常識が狂う魔法だったね」
「同意ですわ。ギリアム先輩はシオンの魔法、どう思います?」
そうだね、と前置き。
「質量を減じている、あるいは気圧を操作している…。いずれかだと思うよ。僕の戦いより、ミレーヌ戦とバナード戦の方が示唆に富んでいると思うね」
「二回戦と、三回戦ですね」
「その通り、まず第一。これは僕の魔法もそうだけど、シオンは向かってくる魔法をすべて『消滅』させている。通常考えられないね」
「防御魔法って、要するに相殺魔法ですもんね」
「流石、詳しいね。魔法を相殺する、要するに防御するにはいくつか方法があるけれど」
1.対抗する魔法を放って打ち消す。
2.防御魔法を展開する
「大別すると、この二つしかない」
「ミレーヌ殿の風流回天と、バナード殿の鉄躯鋼装が典型ですね」
「ああ。ミレーヌの場合は身体の前に風の流れを作り出し、弾き返す魔法だ。どちらかと言うと1.の対抗魔法に近いね。一方でバナードは2.防御魔法の典型になるかな」
「そもそも、1と2ってどう違うんです?」
「特に2の方がイメージし辛いだろう。基本は盾の役割だよ」
「矢じりを弾く、みたいな?」
「その通り。逆に1は剣で鍔迫り合いをするイメージだね」
「どちらも、魔法の物理効果自体は発生している、と言うわけですね」
「その通り。一方でシオン君は、魔法そのものを消滅させている」
「そこが変なんですよね。私の知識だと、たとえ魔法でも物理的存在でガードはできたはずですけれど」
「その認識は正しいよ。雷魔法とは相性が悪いけれどね」
「感電しますしね」
「その通り。ただ、バナードの石礫みたいなものは盾で防げるし、僕の火焔魔法も、原理としては大量の水でもぶっ掛ければ消失する」
「炎龍を消そうと思ったら、セダンテ川が干上がるくらいに必要になりそうですけど」
炎龍は火焔系最強魔法の一つよ。学院ではギリアム先輩しか使えないんじゃないかしら?
「それは言いすぎかな? でも、相当な水が必要なのは確かだね。ただ、消すことは不可能じゃない」
「つまり、魔法は物理現象である…このあたりは、私たちの推測と同じですわ。そういえば、折角の機会なので聞いておきたいんですけれど」
「なんだい?」
「私、魔法が使えないからイメージができなくて。魔法を使う時の感覚、ってどんな感じなんですか?」
「そうだね、表現が難しいけれど…。詠唱手順は理解してるね?」
「ええ。召喚、指示、発動の三段階ですわ」
「その通り。まず召喚だけど、僕は手のひらに何か別のモノが乗る、というか宿る感覚がある」
「精霊様、ですか?」
「そうかも知れないね。で、発動の段階では、身体から何かが吸われる感覚がするね。魔力の消費じゃないかな、と僕は思っているよ」
という事は、精霊の定義を変えたほうがいいのかしら。
グランド・ディベートでは大気の構成について、原子か精霊かで論議したわけだけれど。
「精霊は存在する、その役割は世界を満たしている訳ではなくて、魔法のトリガー…火打石みたいなもの、と考えるとスッキリしますね」
手のひらに精霊が載る(召喚)
→ 発動の時に体内の魔力が吸われる(消費される)
であるなら、理屈は通る訳よね。
「その考えは面白いね。精霊はあくまで触媒であり、実際は原子などの物理現象に介入する、と言うわけだ」
実際、魔法で火をつけても、火打石で火をつけても結果は同じなのよね。木材でも燃やしたら、どちらも灰になるわ。
魔法大会でのグラウンドだって、所々に焦げ跡とか、水が流れた跡が残っていたわけで。
「でも、シオンだけは違うんですよね」
「彼の魔法は結果が残らないからね」
「ついでに、魔法以外でも消せるみたいですよ」
「そうなのか?」
「ええ。岩石とか、チェーンメイルの腕とか、消してましたし」
「チェーンメイルの腕?」
「フェンリル・ベルクで色々あったんです」
そういえば。
ふと、思い出したわ。ハンス。最近見ていないけれど、もう学院に戻ってきているのかしら?
その時だったわ。アルフォンスが駆け込んできたのは。
「フランソワ、大変だ!」
「ど、どうしたの? アルフォンス」
私も失念しがちなのですが、この研究会ってばシオンの魔力9999の謎を解く、のが第一義だったんですよね。冒険ばっかしてますけど
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いつものお願いします!!!!
※この作品は『カクヨム』様および『アルファポリス』様にも連載しています。




