第九十八話 新生第一部隊
数日後。
カムイはロイヤルフォース騎士団から招集を受ける。
アリアとリーラに見送られて屋敷を出る。
「行ってらっしゃいませ、おぼっちゃま」
リーラが優しく声をかける。
アリアも微笑む。
「頑張ってね、カムイ」
「うん!行ってきます!」
彼は軽く手を振り、馬車に乗り込む。
ロイヤルフォース騎士団の本拠地。
整った身なりで入っていくカムイ。
第一部隊の騎士が丁寧に案内をする。
「カムイ・ヴァルハート様! こちらへ!」
カムイは驚きの扱いに少したじろぎながらも、ついていく。
「……あ、ありがとう」
廊下を進み、第一部隊の拠点の一室に通される。
ソファに座るカムイ。
部屋の中は静かで、窓から差し込む光が床に落ちている。
彼は深く息を吸い、心の中で思う。
(ここから……始まるのか)
新しい立場が、静かに彼の肩にのしかかり始めていた。
すると、一人の男が入ってくる。
とても巨大な男だった。
2メートルは軽く超えているだろう。
カムイは心の中で思う。
(で、でけぇ〜)
すぐに立ち上がり、挨拶をする。
「初めまして。 カムイ・ヴァルハートです」
男は穏やかに告げる。
「どうぞ。お座りください」
カムイと男は向かい合わせに座る。
男が自己紹介をする。
「私はサンド・グランヴェルと申します。
第一部隊の副部隊長。あなたの右腕となる者です。」
彼はまず、第一部隊隊長の就任を讃える。
「カムイ様。隊長就任、おめでとうございます」
「い、いえ。 ありがとうございます」
カムイは少し緊張した様子で答える。
サンドは静かに続ける。
「私としても、こんなにもお若い上司を持てて驚いております」
部屋の中に、大きな体格の男の存在感が静かに広がる。
カムイは改めて彼の顔を見つめ、少し息を整えた。
さらにサンドはお礼を言う。
「元部隊長であるレオンハルトが原因で、第一部隊の戦力は落ちていました。
そんな中、そのご子息様がその悪路を絶ってくださった。
本当に感謝しております」
カムイは静かに答える。
「いえ。 僕も……あいつの愚行は見てられなかったので」
「謙虚な方ですね」
サンドは小さく微笑む。
二人は部屋の外に出て、第一部隊の様子を見て回る。
第一部隊は騎士の人数がとても多い。
レオンハルトの一件で数は減ってしまったが、まだまだ他の部隊には負けない数だった。
多くの騎士が訓練所でトレーニングをしている。
カムイは素直に感想を漏らし、心の中で思う。
(すげぇな。 これが国を代表する騎士団のトップ集団か!)
サンドは隣を歩きながら説明する。
「訓練所は常に開放しています。
今日は新しい隊長が来るということで、皆少し気合いが入っていますね。」
さらに食堂へ向かう。
「こちらが食堂です。 一日三食、しっかり出ます。
夜勤の者のために、簡単な食事も用意されています」
カムイは頷く。
「なるほど。 人数が多いと、食事の準備も大変そうですね」
「はい。厨房の者たちも誇りを持って働いております」
次に治療室を案内される。
「こちらは治療室です。
戦場から戻った騎士の治療を行います。
優秀な治癒魔法の使い手が常駐しております」
カムイは興味深そうに中を覗く。
「ちゃんとした設備ですね」
最後に武器庫へ。
「こちらは武器庫です。
武器の手入れや、保管をする場所です。
隊長専用の区画も用意してありますので、後でご案内します」
丁寧に説明してくれるサンドに、カムイは心の中で思う。
(面倒見のいい人だな)
二人は廊下を歩きながら、第一部隊の日常を少しずつ共有していく。
カムイはサンドに案内されながら、少し遠慮がちに切り出す。
「あの……サンドさん」
サンドは穏やかに笑う。
「カムイ殿。そうかしこまらなくて結構ですよ。
気軽に呼んでください」
カムイは少し照れながら答える。
「わ、わかった。じゃあサンド」
「はい」
カムイは真剣な顔で質問する。
「急に僕みたいな......この間まで学生だった人間が隊長になって、嫌じゃないの?」
サンドはふっと笑い、静かに答える。
「そんなことですか」
少し間を置いてから、続ける。
「私は、あなたとお父上の戦いを見ておりました。
……凄まじい戦いでした。
しかもあなた様は数千年に一度の神聖力の使い手。
あの戦いを見て、私は確信したのです。
次の第一部隊の隊長はあなたなのだと」
カムイは少し驚き、言葉を失う。
彼は無意識のうちに、人を惹きつけていた。
廊下を歩きながら、サンドの大きな体が隣に並ぶ。
新しい信頼が、静かに芽生え始めていた。
その後も説明をしてもらい、部屋に戻る。
サンドから今後の流れについて説明を受ける。
「明日は第一部隊隊長の任命式と、レオンハルトの処刑が行われます。
任命式の前に、第一部隊の小隊長達と面会をしていただきます。」
カムイは少し緊張した様子で頷く。
サンドは続ける。
「そしてその次の日は、ロイヤルフォース騎士団の部隊長達による会議です。
予定はまだまだ多いですが、よろしくお願いいたします。
私も、しばらくはサポートのため、カムイ様に付き添います」
カムイは額に汗を浮かべ、心の中で思う。
(まずい……めっちゃ忙しそう)
ルミエル時代。
美の神の仕事をサボりまくっていた。
急に仕事がやって来て、早くも嫌になりそうだった。
彼は小さく息を吐き、サンドに答える。
「……よろしくお願いします」
翌日。
本拠地へと向かうカムイ。
部屋ではサンドが出迎えてくれた。
「おはようございます。カムイ殿」
まずは、カムイの隊長就任を祝して、第一部隊隊長としての鎧がプレゼントされた。
真紅に輝く美しい鎧。
ヴァルハート家のイメージにぴったりの色だった。
サンドは少し遠慮がちに説明する。
「最初は、赤はお父上を彷彿されるかもしれないという否定的な意見がありました。
ですが、やはりカムイ殿には赤が似合います!
炎使いにピッタリです!」
カムイは少し照れながら受け取る。
「あ、ありがとう」
とても高価で、性能の良さそうな鎧だった。
改めて自分が、人の上に立つ者だと実感させられる。
着替えるカムイ。
鎧はぴったり合う。
サンドは満足そうに頷く。
「サイズは良さそうですね!」
鏡に映る真紅の姿を見て、カムイは静かに息を整える。
新しい立場が、はっきりと形になっていた。
次に隊長専用の執務室に案内されるカムイ。
彼がこれから執務に取り掛かるための部屋だった。
すでにそこに、第一部隊の小隊長たちが待っていた。
小隊長。
大勢の騎士が所属する第一部隊は、五つの小隊に分けられている。
それぞれの小隊には隊長がいる。
カムイやサンドの次の地位の五人だ。
五人の精鋭が椅子に座って待機していた。
サンドが静かに紹介する。
「皆待たせた。
新しいロイヤルフォース騎士団、第一部隊隊長のカムイ・ヴァルハート様です」
五人の視線が一斉に彼に向く。
部屋の空気が張りつめる。
カムイは深く息を吸い、姿勢を正した。




