第九十六話 祝福
カムイはエレーナの優しく撫で、ゆっくりと彼女を抱きしめる。二人は穏やかな時間を過ごす。
エレーナは嬉しそうな声をだす。
途中、エレーナが涙を流す。
カムイは慌てて動きを止める。
「ご、ごめん!!」
エレーナは小さく首を横に振る。
「違うの……」
そして、震える声で続ける。
「こうして……カムイと愛し合えるのも……なくなっちゃうのかなって思って……」
するとカムイはエレーナを強く抱きしめる。
「そんなことない! いつでも来るから!
その度にこうやって一緒の時間を過ごそう!」
エレーナは涙を流したまま、嬉しそうに彼の名を呼ぶ。
「嬉しい……カムイ」
窓の外では、夜風が優しく吹いていた。
すると、寝室の扉がバンッと開き、「こら〜!」とアリアが入ってきた。
カムイは驚いて体を起こす。
「お、お母様!?」
アリアは両手を腰に当て、少し怒ったように言う。
「も〜! カムイ! エレーナ!
なんで私に黙ってたの!!」
のけものにされたことを、はっきりと怒る。
カムイは慌てながら
「ご、ごめんお母様!」
「ごめんなさいアリアさん!」
エレーナも顔を赤くして謝る。
アリアは「も〜!」と小さく呟き、ベッドに飛び込んでくる。
「私も一緒に寝るわ!」
すると、レーゼもやってくる。
「あ〜!!みんなずる〜い!」
「ちょ、みんな!ベッド狭いから!」
カムイは慌てる。
四人の仲の良い時間が始まる。
カムイは少し困ったように、それでも嬉しそうに彼女を受け入れる。
「まったく♡」
四人が寄り添う。
夜の寝室に、仲睦まじい声が静かに広がっていく。
翌日。
カムイはグリルに呼ばれ、ロイヤルフォース騎士団の本拠地へと向かう。
グリルの執務室。
「失礼します」
「おお。 来たか!」
グリルは落ち着いた様子で迎える。
「ご苦労だったな」
「いえ、僕は倒すべき相手を倒しただけなので」
「そうか……」
グリルは少し落ち込んだ様子。
無理もない。
ずっと友と呼んできた男の経歴が、不正なものだったのだから。
カムイは頭を下げる。
「申し訳ありません」
父親のことを素直に謝る。
グリルは目を見開き、改めて彼に感心する。
「……お前は本当に強いな。」
精神的にも強いカムイを、改めて見直した。
少し間を置いてから、現状を伝える。
「レオナが奴から話を聞いているのだが
……正直見込めんな。
ずっと黙秘を貫いているそうだ」
「そうですか……」
執務室に、重い空気が流れる。
グリルは窓の外を見つめながら、次の言葉を選んでいた。
グリルは尋ねる。
「カムイ……お前、神聖力が使えるのか?」
神聖力をもつ人間は数千年に一人産まれる。
あの戦いで、カムイが神聖力を持つ逸材だということが国中に広まった。
カムイは潔く認める。
「……はい。 使えます」
グリルは感慨深げに頷く。
「そうか……まさか生きているうちにこの目でみれるとは。」
少し間を置いてから、改めてカムイを見つめる。
「カムイ! お前は将来、この国を背負う男になるだろう。
そのために、まずは第一部隊を立て直すのだ」
「はい!」
カムイははっきりと答える。
グリルは微笑む。
「よし! いい返事だ。
隊長任命の手続きには時間がかかる。
しばらくはゆっくりしてろ。
これからは忙しくなるぞ!」
「わかりました!」
執務室の空気が、少しだけ明るくなる。
グリルは椅子に深く座り、彼の将来を静かに見据えていた。
騎士団本部から出てくるカムイ。
すると「カムイく〜ん!」とナリアがやってきた。
「ナリアさん!」
嬉しそうに応えるカムイ。
ナリアは彼の手を握り、声を弾ませる。
「おめでとう!! 本当におめでとう!」
「いえ!ナリアさんが決闘の賛成をしてくれたおかげですよ!」
ナリアは首を横に振る。
「ううん! 君の実力の結果だよ!」
「ありがとうございます。」
「一緒に任務につけるの、楽しみにしてるね!」
「はい!」
ナリアは少し体を密着させ、声を落とす。
「それと、たまには私の屋敷に遊びに来てね♡」
カムイは顔がニヤけてしまう。
「はい」
騎士団の本拠地前で、静かな約束が交わされていた。
翌日。
騎士学校に登校するカムイ。
リディアと共に教室へ向かう。
激闘を繰り広げたわりに、彼は元気だった。
リディアは笑いながら言う。
「本当にタフね!」
「だろ〜?」
カムイははっきりと答える。
リディアは少し声を落として続ける。
「本当すごい戦いだったね。
カムイが生きててくれてよかった♡」
「ありがとう。リディア」
二人は共に教室に向かう。
教室に入ると、クラスメイト全員がカムイの姿を見て大騒ぎする。
みんな決闘の様子を見ていたらしい。
「カムイ! 本当に勝ったのか!?」
「隊長になるってマジ!?」
「在学中に第一部隊の隊長だぞ!」
騎士団の隊長になるということで、教室は熱気に包まれる。
リディアは少し呆れたように、彼の隣に立つ。
「……また、注目の的ね」
カムイは苦笑いを浮かべる。
教室全体が、彼の勝利を祝福する声で溢れていた。
授業が終わり、カムイは職員室へ向かう。
「失礼します。 ルーナ先生」
ルーナは書類から顔を上げ、彼を迎える。
「あら、カムイくん。」
カムイは少し真面目な顔で切り出す。
「実は……騎士学校の中退の件で来ました。
ロイヤルフォース騎士団の部隊長になるから、学校もやめないといけなくて。」
ルーナは静かに頷き、少し寂しそうに言う。
「そうよね...さすがに両立は無理よね。」
「……はい。 僕も正直寂しいです」
ルーナは少し微笑み、続ける。
「でも、任命まで時間がかかるのよね?」
「はい」
「なら最後までしっかりと思い出を残しましょうね!」
「はい!よろしくお願いします」
職員室に、温かい空気が流れる。




