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第九十二話 決闘

 決闘当日。

 ロイヤルフォース騎士団の第一部隊隊長の座と命をかけた戦い。

 噂は国中に広がり、大きな騒ぎとなっていた。

 会場の準備も、国中の騎士団が総力を上げて行っていた。




 家で準備を整えたカムイ。

 アリア、エレーナ、レーゼに見送られる。

 朝の光が、静かな家の中に差し込んでいる。

 アリアは彼の顔を見つめ、小さな声で告げる。


「カムイ……気をつけてね」

「うん!」


 エレーナは唇を噛みしめ、真剣な目で彼を見る。


「絶対に勝ってよ」


 レーゼは小さな両手を握りしめ、元気よく声を上げる。


「カムイお兄ちゃん頑張って!」


 カムイは二人にしっかりと頷く。

 そして、玄関で振り返り、短く告げる。


「行ってきます」


 その一言だけを残し、家を出る。

 扉が静かに閉まる。




 テーブルに座るアリアたち。

 不安で仕方ないが、カムイに勝利を祈るしかない。

 しばらくして、エレーナは静かに杖を構え、闘技場の映像を映し出す魔法を使う。

 闘技場には魔法カメラが設置されており、誰でも見られるようになっていた。

 光の画面がリビングに浮かび上がる。




 闘技場はすでに大盛り上がりだった。

 国中の騎士が集まり、巨大な円形の会場を埋め尽くしている。

 そこにはグリル、レオナ、リディアの姿もあった。

 グリルは腕を組み、じっと闘技場の中央を見つめる。

 レオナも無言で、厳しい表情のまま眺めている。

 リディアは両手を胸の前で握りしめ、心の中でカムイの勝利を祈っていた。




 別の席では、ロイヤルフォース騎士団の第六部隊隊長のナリア・ブランケットも座っていた。


(カムイ君……まさかこんなに早く行動に移すなんて……)


 正直、驚いていた。

 会場の熱気が、映像を通して家の中にも伝わってくる。




 アリアは画面から目を離せない。

 レーゼはエレーナの袖を握り、小さな声で言う。


「カムイお兄ちゃん、大丈夫だよね?」

「大丈夫よ。信じましょう。」


 誰もが、戦いの始まりを待っていた。




 闘技場。

 別の観客席では、第三部隊の面々が集まっていた。

 そこへやってくる部隊長のゴルグル。

 部下が声をかける。


「ゴルグル隊長!こちらです!」


 特別席の椅子を引く。

 ゴルグルはゆっくりと腰を下ろし、穏やかに笑う。


「ほほほ。すまんのぉ〜」


 深く腰をかけ、闘技場をじっと見つめる。

 第三部隊の部下たちが、ひそひそと話し始める。


「しかし、なぜレオンハルト様のご子息はこんな戦いを?」

「ああ。まだ騎士学校在学中の身だろ?」

「最近の第一部隊の弱体化と何か関係があるのか?」


 各々が憶測を交わす。

 無言でそれを聞いていたゴルグル。

 心の中で静かに思う。


(あの小僧……まさかここまでやるとは……)


 かつて見込みがあると思っていた小僧が、思い切った行動を起こしたことに驚いていた。




 観客席の隅。

 立ち見で見守るのは、ハンターのシュバイン。

 彼は腕を組み、黙って闘技場を見つめていた。

 表情は変わらない。

 しかし、その視線は誰よりも鋭く、中央を捉えている。




 ギルドでもカムイの知り合いのハンターたちが、モニターの前に集まっていた。

 画面に映る闘技場の様子を誰もが見守っている。

 受付嬢のメロンも、カウンターからじっと画面を見つめていた。

 心の中で、彼の名前を呼ぶ。


(カムイ君……)


 あの日の夜。

 怒りに満ちた彼の顔が、脳裏に蘇る。

 忘れられない印象が胸に残っていた。

 モニターの光が、静かなギルドの中を照らしている。

 誰もが、ただ戦いの行方を見守るしかなかった。




 フラスタリア王国から離れたラスカ村にも、この決闘の話は伝わっていた。

 ラスカ村のルージュのアジト。

 部下が急いで入ってくる。


「すんません姉御!」


 中央では、ルージュが座って部下たちとモニターを見ていた。

 彼女は画面から目を離さず、いつもの調子で怒鳴る。


「おせぇぞお前ら!」


 ルージュの隣には、ダークエルフのゼノヴィアも座っている。

 ゼノヴィアは静かに尋ねる。


「カムイ様……どうしてご自身のお父上に決闘など?」

「さあな?

 でも噂じゃ、ロイヤルフォース騎士団は、今戦力が落ちてるらしい。

 その原因が、カムイの父親って言われてるみたいだぞ!」


 ルージュは腕を組み、画面を見つめながら答える。

 ゼノヴィアは目を見開く。


「この戦い……王国の未来がかかってるかもな」


 モニターの光がアジトの中を照らす。

 部下たちは息を潜め、画面に映る闘技場の様子を見守っていた。




 いよいよ決闘が始まる。

 司会が大きな声で、まずカムイを紹介する。


「入場!挑戦者、カムイ・ヴァルハート!」


 入場してくるカムイ。

 会場が大きな歓声とざわめきが混じり合う。

 司会は続ける。


「この決闘は親子対決!

 彼はロイヤルフォース騎士団の部隊長であるレオンハルト隊長の息子でありながら、ハンターとしても名を上げた異様な経歴の持ち主であります!」


 観客席がざわつく。

 本来、騎士の子がハンターになるなど前代未聞だ。

 噂程度に聞いたことのある者も多い中、皆が「本当のことだったのか」と納得する。


「第一部隊隊長の息子が、ギルドで働いていたなんてな」


 そんな声が、あちこちから聞こえてくる。

 カムイは静かに中央へ歩み、対戦相手を待つ。




 数時間前。

 闘技場の控え室。

 一人座り込むレオンハルト。

 目の前には、愛用の鎧が置かれている。

 彼はカムイのことを考えていた。

 あれは本当に息子なのか?

 という疑問が頭を離れない。

 屋敷を出て行ってから何かあったのか?

 いや、違う。

 出て行く時にも感じた、あの威圧感。


(一体なんなんだ!? あいつは?)


 心の中で何度も繰り返す。

 今日の戦いは、ただの親子対決ではないと確信していた。

 レオンハルトは鎧を見つめ、低い声で呟く。


「……倒さなくては。」


 その瞬間、頭の中で誰かの言葉が蘇る。


 ???「勝ちたいですよね?」


 レオンハルトは首を横に振り、強く言い放つ。


「俺は負けん!」


 控え室の空気が重く沈む。

 鎧の金属光沢が、彼の決意を静かに映していた。




 現在。闘技場。

 レオンハルトが入場する。

 評判が落ちているとはいえ、第一部隊の隊長。

 会場の盛り上がりが一気に高まる。

 司会が大きな声で紹介する。


「入場! ロイヤルフォース騎士団第一部隊隊長、レオンハルト・ヴァルハート!」


 レオンハルトは歓声の中歩く。

 紹介が終わり、二人は中央で向かい合う。

 睨み合う二人。

 カムイがニヤリと笑う。


「よう!逃げずによく来たな。」


 と挑発。

 レオンハルトはそんな挑発には乗らずに、

 やはり目の前の男は、息子ではないのではないかと疑いを強める。




 お互いに武器を構える。

 空気が張り詰める。

 試合開始の合図が鳴る。


「始め!!!」


 同時に二人は突っ込み、武器が激しくぶつかり合う。


「ガキンッ!!」


 衝撃波が会場を走り、観客が一斉に息を飲む。

 会場は衝撃に包まれる。

 カムイの槍とレオンハルトの剣が火花を散らし、二人の力が真正面からぶつかり合う。

 本気の戦いが、今始まった。

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