第九十一話 連続
風呂から上がり、体を拭くカムイ。
寝室に向かう途中、心の中で思う。
(リディアもエレーナも。あんなに俺のことを……ありがたい限りだな。)
とても満たされていたカムイ。
今日は気持ちよく寝れると思い、寝室の扉を開ける。
寝室に入った瞬間、カムイは固まった。
彼の考えは甘かった。ほんとに甘かった。
すっかり忘れていたのだ。
我が家で最も愛の大きい女の存在を。
アリアが待っていた。
彼女は微笑み声をかける。
「カムイ。やっと来たわね」
どうやらアリアは、カムイとエレーナがいちゃついていたことに気づいていたらしい。
カムイは固まる。
「お、お母様……」
「さぁカムイ。おいで」
アリアはベッドからゆっくりと降り、彼の手をとる。
カムイは苦笑い。
「いや〜お母様……今日はもう流石に……」
しかし、アリアは彼をギュッと抱きしめる。
「そんなのダメよ。
お母様だってカムイを甘やかしたいんだから♡」
彼女の目は本気だった。
息子を甘やかしたくてたまらない気持ちが滲み出ている。
アリアは少し寂しそうな声で尋ねる。
「それとも……若い子達と仲良く過ごしてたら、もうお母様じゃ嫌?」
カムイは、アリアを悲しませてはいけないと思い抱きつく。
「きゃっ」
「そんなことないよ! お母様は僕の中で一番だよ」
アリアの目が潤み、嬉しそうに微笑む。
「嬉しいわ」
二人は幸せな時間を過ごす。カムイはアリアに甘えまくり、彼女は頭を撫でてくれる。
「お母様、最高だよ。」
「ふふ……カムイの気持ち、伝わってくるわ」
暖かい空気が寝室に流れる。
カムイはアリアに甘えまくる。
同時に、彼女を悲しませてしまったことを謝る。
「ごめんね! ごめんねお母様」
元々はこの家で二人きりで暮らしていた。
毎日毎日アリアに甘えて、彼女を喜ばせてあげようと決めていた。
しかし、成り行きとはいえ、エレーナとレーゼを家に招き、リディアとはより仲良くなった。
少しずつ二人の時間が減ってきてしまった。
その事実が、今になって胸に重くのしかかる。
アリアは彼を抱きしめる。
「いいのよカムイ。
あなたがこうして私に甘えてくれるなら。
お母様は……カムイが幸せなら、それでいいの」
カムイは彼女の言葉に嬉しくなる。
「お母様……大好きだよ」
「私も大好きよ。カムイ」
親子の愛がより深くなった。
この家で最初に築いた絆を再確認できた日だった。
カムイは再びアリアを抱きしめる。
「お母様は、僕の大事な人だよ」
「ええ。」
カムイはさらに声を上げる。
「絶対に! あいつに勝って、お母様を幸せにするぞ!」
「嬉しいわカムイ」
「お母様……」
二人は寄り添い、静かに抱き合う。
アリアは彼の頭を優しく撫で、小さな声で囁く。
「カムイ……」
カムイは彼女に抱きしめられながら目を閉じる。
心の中で誓う。
(絶対にあいつに勝って、この人を幸せにするんだ!)
寝室の明かりを消し、二人は眠りにつく。
長い夜が、ようやく穏やかな終わりを迎えようとしていた。




