第六十三話 解放
カムイがみんなの元へ駆けつける。
部屋の様子を見渡して、親玉であろう男が倒されていることを確認する。
彼はすぐにエレーナのもとへ駆け寄った。
「エレーナ!」
彼女は力なく彼にもたれかかる。
カムイは彼女の肩を支え、優しく告げる。
「よくやったな」
彼の声には、心からの安堵と喜びが滲んでいた。
ルージュが腕を組み、二人をじっと見つめる。
「あの二人……いい感じじゃないか」
シュバインも静かに頷く。
「ふむ……」
ふと、彼は少し前のカムイを思い出す。
あの頃、確か別の女の子——リディアという子と一緒にいたことを。
(……難儀だな)
心の中で短く呟く。
カレンが勢いよく駆け寄り、カムイに抱きつく。
「カムイ様♡ 無事だったのですね♡
さすがは、私の未来の旦那様♡」
「おい! やめろ!」
彼が慌てて引き剥がそうとする。
エレーナが明らかに膨れる。
カレンは全く悪びれず微笑む。
「あら、嫉妬ですか? 可愛らしいですわね」
「ち、違います!」
ルージュが大声で笑う。
「ははは! 賑やかだな〜!」
カムイが呆れたようにため息をつく。
シュバインが静かに告げる。
「コライスンは倒した。
まだ街の人々が残っている。」
カムイはカレンから離れて皆を見渡す。
「みんな、行こう。
残りの人たちを、助けに行こう。」
戦闘を終えた一同は、次の行動へと移る準備を始める。
一同は中央広場へと到着する。
そこでゼノヴィアや、ルージュの部下たちと合流した。
「お前ら!ゼノヴィアさんも無事だったか!」ルージュが声を上げる。
「はい!こちらは敵をすべて制圧しました」
無事に敵を全て倒したことが報告される。
すぐに捕えられた人たちの解放を急ぐ。
全員は牢屋へと向かう。
監禁されていた人たちを、次々と解放していく。
「助かった!」「ありがとう!」
感謝の声が広がる。
囚われた人たちを解放していると、空から複数の影が降りてくる。
フラスタリア王国の騎士たちが、ドラゴンに乗って到着したのだ。
ルージュの部下が通報してくれていたらしく、大急ぎで駆けつけたようだった。
「ロイヤルフォース騎士団、第六部隊です!
状況を報告してください!」
どうやらロイヤルフォース騎士団の第六部隊の人たちらしい。
カムイは騎士たちの姿を見た瞬間、顔を青ざめさせる。
「やべっ……!」
彼は慌ててゼノヴィアの後ろに隠れる。
「どうされたのですか?カムイ様?」
ゼノヴィアが驚いて振り返る。
「……ちょっと、都合が悪くて......」
父親から逃げている身だ。
あまり騎士団の人間に顔を見られるわけにはいかない。
状況を把握しているエレーナが、すぐに自分のローブを差し出す。
「これ、被って」
「あ、ありがとう……」
カムイはローブを深く被り顔を隠す。
騎士たちが広場に降り立ち、ルージュたちに事情を聞き始める。
騎士団がコライスンや公国関係者を連行。ドラゴンに乗せて飛び去っていく。
殺人や国家反逆罪くらいの罪になるだろう。
第六部隊の部隊長が、ルージュたちに歩み寄る。
長い紫の髪を優雅に流し、紫色の瞳を持つ女性——ナリア・ブランケット。
彼女は騎士団を代表して、丁寧に頭を下げる。
「この度は、王国に代わり心より御礼を申し上げます。
みなさまの活躍がなければ、街の人々を救うことはできませんでした」
ルージュが手を振る。
「いえいえ、当然のことをしたまですよ!」
シュバインがカレンの方を見て、ナリアに告げる。
「フラスタリア王国の、さらわれたご令嬢です」
ナリアがすぐに確認する。
「はい。確かに。
カレン・アイゼンフォルク様ですね。
ご無事で何よりです」
カレンは満足そうに頷くと、突然カムイのもとへ駆け寄る。
ローブを深く被って顔を隠している彼に、近づく。
「お、おい……!」
カムイが慌てて後ずさるが、彼女は構わず微笑む。
「大丈夫ですわ」
そのまま、ローブの隙間から彼の頰に軽くキスをする。
「ふふ♡
またいつかお会いできる日を、楽しみにしてますわ♡」
カムイの隣でエレーナが明らかに膨れる。
カレンは悪びれもせず、手を振ってナリアのドラゴンに乗る。
「それではみなさま! ごきげんよう!」
ドラゴンが空へ舞い上がり、カレンの姿が遠ざかっていく。
ナリアは飛び立つ前に、ローブを被った男の子をちらりと見た。
(あの子……どこかで見た気が……)
だが、まさか同じ騎士団の第一部隊隊長・レオンハルトの息子だとは気づかない。
広場に残された一同は、解放された人々を見守りながら、ようやく安堵の息をつく。
長い戦いが、本当に終わったのだった。




