↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/97

第六十一話 最終兵器

 カムイのとんでもない速さと強さに、ルージュが目を見開いて驚く。

 シュバインも鋭く目を細める。

「あの力……あの時の……」

 かつて密猟者に追い詰められた際、カムイが放った炎魔法と酷似した何かを感じ取っていた。

 エレーナは自分の前に立った彼の背中を見つめる。

「カムイ……」

 カレンは手を頰に当て、うっとりとした表情を浮かべる。

「まあ♡ なんてお強いの♡

 やはり私の目に狂いはなかったわ♡」



 壁からゆっくりと体を起こすダリアン。信じられないものを見るような目でカムイを睨む。

 カムイは槍を肩に担ぎ静かに告げる。

「さ!早く!」

 ルージュが慌てて声を上げる。

「お、おい! 今のって……」

「早くいくぞ!」と急かすシュバイン。

 シュバインが短く頷く。

「……頼んだぞ、カムイ」

 エレーナは最後に一度だけ彼を振り返り、強く頷く。

 カレンも手を振りながら走り出す。

 四人は一気に部屋を出ていく。

 残された広い空間に、カムイとダリアンだけが対峙する。



 カムイとダリアンが睨み合う。

 ダリアンが低く唸る。

「小僧……何者だ!?」

 カムイは槍を肩に担ぎ、余裕の笑みを浮かべる。

「僕...いや、俺の名はカムイ・ヴァルハート!

 この世で最も美しく!強い男だ!」

 ふざけた回答に、ダリアンの顔が一気に歪む。

「ふざけるな!!」

 大剣と大槍を同時に振るい、猛攻を仕掛ける。

 カムイは槍を素早く構え、全ての攻撃を正確に受け止める。

 金属が激しくぶつかり合う音が、部屋に響き渡る。



 ダリアンは信じられないものを見るような目で彼を見つめる。

 こんな小さな子供が、なぜ自分の全力の攻撃を易々と受け止めるのか。

 二人の力は明らかに互角だった。

 体格的にもありえない。

 カムイは神聖力で自らの力を大きく底上げしている。

 それがわからないダリアンにとっては、異常としか言いようのない事態だった。



「甘く見るなよ!!!」

 カムイが槍を一閃し、ダリアンの大剣を弾き返す。

「くっ……!」

 ダリアンが一歩後退する。

 カムイはさらに踏み込み、連続で槍を繰り出す。

 ダリアンもパワードスーツの出力を上げ応戦する。

 火花が散り、床が抉れる。

 二人の激闘は、激しさを増しながら続いていく。



 先を進んでいくルージュ、シュバイン、エレーナ、カレン。

 ルージュが息を切らしながらシュバインに詰め寄る。

「お、おい! シュバイン!

 カムイのあれ……一体なんなんだ!?

 さっきの蹴り、人間の力じゃねえだろ!」

 シュバインは短く首を横に振る。

「俺にも詳しくはわからん。

 だが、一度俺もあの力に助けられたことがある。」

「助けられた?」

 シュバインは密猟者に追い詰められたときのカムイの炎魔法の話をする。さっきの力も、それに近い何かを感じたと。

 ルージュが頭を掻く。

「マジかよ……あの小僧、一体何者なんだ」



 エレーナは黙って走りながら静かに思う。

(初めて見る……カムイの本当の力)

 その力の波動は、かつて母親から聞いた話に酷似していた。

 神聖力。

 神々が使う特別な力。

(カムイ……あなたって一体?)

 彼女は胸の内で、静かにその可能性を噛み締める。



 四人はさらに奥へと進む。

 すると、ニコフから通信が入る。

「みなさん! その先に注意してください!」

 ルージュが刀を構え直し、声を上げる。

「よっしゃ! いくよ!」

 シュバインも無言で速度を上げる。

 エレーナとカレンも後に続く。



 一方その頃。

 公国中央では、別の激闘が繰り広げられていた。

 ゼノヴィアと幹部のマービア。

 二人の剣が激しくぶつかり合う。

 金属音が連続して響き、火花が散る。

 マービアが歯を食いしばって叫ぶ。

「くっ! 貴様! ダークエルフの分際で……!」

 ゼノヴィアは冷たく言い放つ。

「その発言は人種差別です!」

 言葉と同時に、さらに猛攻を仕掛ける。



 周りでは、ルージュの部下たちが戦闘ロボを次々となぎ倒していく。

 劣勢に立たされたマービアは一歩後退する。

「くっ……!」

 その隙を、ゼノヴィアは見逃さなかった。

 カムイからもらった魔力を最大限に出力する。

 剣が一気に加速し、マービアを薙ぎ払う。

 彼女は建物の壁に激しく激突し、そのまま動かなくなった。

 気絶したマービア。

 ゼノヴィアの勝利だ。



 ルージュの部下たちが大喜びで駆け寄ってくる。

「すげぇ!」

「さすがだぜ!」

 多くの人間に初めて讃えられたゼノヴィア。

 彼女は静かに、だが確かに嬉しく思う。

(これも……すべて、カムイ様のおかげです)

 彼女は剣を収め、静かに頷く。

「……行きましょう。

 まだ、終わってはいません」

 公国中央の戦線が、一つ大きく動いた。



 コライスンはモニターを見つめて短くため息をつく。

「マービアはやられましたか……」

 そのとき、扉が開き、ルージュたちが入ってくる。

 コライスンは冷静に立ち上がり、穏やかな笑みを浮かべて出迎える。

「これはこれは、みなさま。

 ようこそおいでくださいました」

 ルージュが刀を構え睨みつける。

「けっ!すかしやがって!さあ!潔く降参しな!」

 シュバインも銃を構えたまま、低く告げる。

「コライスン!

 貴様の企みも終わりだ。

 諦めて、街の人たちを解放しろ!」



 コライスンは彼らの言葉を無視するように、エレーナの方を見る。

「おお! 君がヨルンの生き残りですか!

 よかったですよ。まだいてくれて」

 エレーナは軽蔑した目で彼を見据え、声を荒げる。

「ふざけないで!

 里のみんなをあんな目に遭わせておいて……!」

 彼は肩をすくめる。

「あれは仕方のない犠牲ですよ。

 偉大な進歩のためには、ある程度の犠牲は避けられません」

「犠牲……? 人の命を……!」



 悔しがるエレーナの隣から、カレンが前に出る。

「相変わらず、人の心がないですのね……コライスン叔父様」

 エレーナが驚いて振り返る。

「叔父様?」

 なんと、カレンとコライスンは親戚だった。

 カレンの父親の弟。

 コライスン・アイゼンフォルク。

 彼は穏やかに笑う。

「おお。カレン君。

 君も来ていたのか。

 いい加減、私の手伝いをしてくれる気になったかい?」

 カレンはきっぱりと首を横に振る。

「お断りです!

 あんな悪趣味な研究、こちらから願い下げです!

 人の命を実験材料にするなんて……最低ですわ!」

 司令室の空気が、一気に張り詰める。

 血縁でありながら、完全に敵対する二人の視線が交錯していた。



 コライスンは短くため息をつく。

「やはり...君には理解してもらえないか……」

 カレンを見つめて、残念そうに続ける。

「兄上も人が良すぎる。

 成功とは、犠牲の上に成り立つというのに!」

 ルージュが吐き捨てるように言う。

「けっ! コイツ! 腐ってやがる!」

 コライスンは静かにボタンを押す。

 司令室が一気に変形し、広い戦闘ルームへと姿を変える。

 床が開き、中から巨大な魔物が姿を現した。

 何やら激しく改造されているらしく、全身がサイボーグ化している。



 シュバインが目を見開く。

「コ、コイツは……!」

 コライスンは、魔界の魔物を捕まえて改造を施していた。

「こいつは...まあ最終兵器といったところです。まだ試作段階ですがね。あなた達を倒すには十分です。」

 自身の科学力と、ヨルンの人たちの魔力が組み込まれている。

 エレーナは声を震わせて叫ぶ。

「こ、こんなもののために……

 里の人たちを!」



 コライスンは自らを電子化し、魔物の中へと入り込んでいく。

 少し苦しそうにしながらも、完全に一体化する。

 知性と力を兼ね備えた、最強の人工魔物の完成だった。

 一体化したコライスンが、エレーナに向けて低い声を発する。

「あなたも取り込んで、さらに完全なものにしてみせますよ!」

 ルージュが刀を構え、吐き捨てる。

「化け物が……!」

 シュバインも銃を構え直す。

「行くぞ!」

 巨大な改造魔物と、四人の戦いが、今始まろうとしていた。



 カレンが前に出て手を掲げる。

「みなさま!」

 彼女の周囲に淡い光が広がり、補助魔法が発動する。

 カレンは補助魔法が得意。

 ルージュ、シュバイン、エレーナの三人に、強化の光が宿る。

 ルージュが刀を振るいながら声を上げる。

「ありがたい! 体が軽くなった!」

 シュバインも銃の構えを安定させ、カレンに短く告げる。

「お前は離れていろ!」

「はい! 言われなくても!」

 彼女はすぐに部屋の隅へと逃げ、安全な位置から三人を見守る。

 エレーナが杖を構え、静かに、しかし力強く宣言する。

「いきます!」

 強化された三人が、巨大な改造魔物へと一斉に飛びかかる。

 コライスンの低い笑い声が、魔物の体から響く。



 魔物と同化したコライスンの力は計り知れなかった。

 ルージュもシュバインも、全く歯が立たない。

 エレーナの魔法も全く効かない。

「くそぉ……!」

 ルージュが歯を食いしばって立ち向かう。

 だが、刀が激しい衝撃を受け刃こぼれを起こす。

「なっ……!」

 次の瞬間、コライスンの巨大な拳が彼女を捉える。

「ぐあっ……!」

 トドメを刺されそうになった、そのとき——。

「ルージュ様!」

 天井から、ニコフが飛び込んできた。

 彼の防御魔法が展開され、コライスンの攻撃を防ぐ。

「ニ、ニコフ……!」

 ルージュが息を切らしながら顔を上げる。

「遅くなりました!」



 ニコフがすぐに彼女のそばに降りる。

 エレーナも声を上げる。

「先生!」

 コライスンが、ニコフの姿をじっと見つめる。

 そして、低く笑う。

「ははは! これは素晴らしい!」

 彼はニコフの魔力の波動を感じ取り、すぐに理解したようだ。

 この男も、ヨルンの里の生き残りであると。

「ヨルンの血を引く者が、もう一人……!最高ですよ。

 あなたたちを取り込めば、私の実験はさらに完全なものになります!」



 ニコフが冷静に杖を構える。

「あなたに、里の力を渡すつもりはありません」

 シュバインが銃を構え直す。

 カレンが隅から声を飛ばす。

「みなさま! 大丈夫ですか!?」

 ルージュが壁から体を起こし、刀を持ち直す。

「ああ……おかげでな。

 だけど、こいつ……本当に手強い」

 コライスンの巨大な体が、ゆっくりと向き直る。

「さあ、続けましょうか。

 私の計画を……妨げないでいただきたい」

 再び緊張が走る。

 ヨルンの生き残り二人を含む五人と、魔物化したコライスンの戦いが、さらに激しさを増そうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。