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第五十七話 裏切り

 ニコフはルージュを必死に止める。

 ルージュ「離せ!おいニコフ!!」

 カムイは叫ぶ。

「なんでシュバインを悪く言うんだ!」と。

 ルージュは怒りをあらわにして叫ぶ。

「うるさい!

 シュバインのやつはな!ムールマールの人たち、

 さらにヨルンの里の人たちの拉致・監禁に関わってんだぞ!」

 衝撃的な事実がその場に落ちる。

 カムイは完全に唖然とする。

「シュ、シュバインが!?!?」

 エレーナも声を震わせる。

 ゼノヴィアも目を見開いたまま固まる。

 村の入口に、重い沈黙が広がる。



 シュバイン。カムイが唯一師匠と慕う男が、ヨルンの里の壊滅に関わっているという事実。

 彼の手が、槍を握ったまま小刻みに震える。

「……嘘だろ……」

 ルージュは刀を下ろさず、冷たく彼を見つめる。



 カムイたちの反応を見て、やはりシュバインと関係はなさそうだと判断したニコフ。

 彼の説得の末、ルージュはようやく落ち着いた。

 カムイたちは、ルージュのアジトに案内される。

 何段も重ねた畳の上にあぐらをかいて座るルージュ。

 三人は彼女の前で座る。

 ルージュが事の経緯を説明し始める。



 始まりは数ヶ月前のヨルンの里の崩壊だ。

 襲撃をしたのは、なんとフラスタリア王国の貴族。

 ルージュは元からヨルンの里の悪い噂に疑問を抱いていた。

 その噂のせいで、貴族による襲撃は正当化されてしまっていた。

 そんな中、当時ハンターだった彼女は単独で里の人々の救助を行っていた。

 エレーナが小さく呟く。

「私がヨルンから逃げた後に、この人が救助をしてくれてたのね……」

 救助した人たちを彼女が作ったこの村、ラスカ村に匿っていた。

 さらにはこの村のことが知られるのを防ぐために、ルージュはハンターをやめた。



 そのヨルンの里を襲撃した貴族が谷の方で小さな国を作った。

 名前はライデンビッヒ公国。

 科学と魔法が組み合わさった国だ。

 その国の者が、最近付近の人々を攫っているらしい。

 ラスカ村で匿っていたヨルンの里の人たちも、次々に攫われていってしまった。

 カムイが強く言う。

「戦わなかったのかよ!」

 ルージュは苦々しく答える。

「無茶言うな!あいつらはやばいんだ!」



 なんとライデンビッヒ公国は、戦闘ロボを何体も保有している。

 その数は計り知れない。

 彼女は村の人々を地下のシェルターに避難させるだけで、精一杯だった。

 アジトでは重い沈黙が落ちる。

 ヨルンの悲劇の裏に、さらに大きな影が存在していた。



 ルージュが「しかも最近……」と言いかけたとき、一人の部下が血相を変えて飛び込んできた。

「あ、姉御!」

「なんだい!」

「また、あいつがきました!」

 彼女は舌打ちをする。

 そしてカムイを見て冷たく言った。

「ちょうどいい!自分の目でしっかり見な!」

 外に連れて行かれる三人。



 そこには戦闘ロボが数体いた。

 そして中央に立っているのは、なんとシュバインだった。

 カムイは完全に唖然とする。

「シュ、シュバイン……」

 彼はカムイを見ても無表情のままだ。

 ルージュが叫ぶ。

「シュバイン!お前!」

「ルージュ。村人はまだいるだろ?ヨルンの生き残りが。いるならさっさと出すんだな。」

「けっ!お前みたいなハンターの面汚しに、教えるわけにはいかないね!」

 シュバインは短くため息をつく。



 カムイが声を上げる。

「シュバイン!なんで!」

 彼はこちらを見るが、何も言わない。

「なんとか言えよ!」

 向かっていくカムイ。

 彼の前に戦闘ロボ二体が立ち塞がる。

「邪魔だ!」

 槍で攻撃するも、硬すぎるボディに弾かれる。

 続けて反撃をくらい、彼は地面に倒れる。

「カムイ!」

 エレーナが駆け寄る。

 ラスカ村の広場に、重く冷たい空気が満ちていた。

 師匠と弟子が対峙する異常な光景だった。



 シュバインはエレーナをじっと見て、静かに言う。

「お前。ヨルンの生き残りだな」

 戦闘ロボに短い指示を出すと、すぐに彼女は捕まり、拘束されてしまう。

「エレーナ!!」

 カムイが必死に叫ぶ。

 シュバインたちは彼女を連れたまま、あっさりと立ち去ってしまう。

 戦闘ロボの重い足音が、村の外へと遠ざかっていく。



「くそ!」

 彼は地面を殴りつける。

 ゼノヴィアがそっと寄り添う。

「カムイ様……」

 ラスカ村の広場に無力感が広がる。

 エレーナが攫われ、シュバインが敵として現れた現実が、重くのしかかっていた。

 ルージュが近づいてくる。

「……あいつは、ライデンビッヒ公国に雇われてるんだ」

 カムイは拳を握りしめたまま、俯くしかなかった。



 村に戻るカムイたち。

 重い空気が全員にのしかかる。

 ニコフが深く頭を下げる。

「すみません、カムイ様……

 私が代わりに捕まっていれば……」

 カムイは静かに否定する。

 ルージュが腕を組んで言う。

「見ただろ?シュバインのやつを

 あいつは...最近この村に現れるようになったんだ」

「なんで...なんでシュバインはあんな奴らに味方してるんだよ!」

 彼女は冷たく吐き捨てる。

「ハンターなんて結局は金が全てさ。

 報酬が良ければ、汚い仕事だろうが誰だって飛びつく。

 私は...そういうのを見ているのが嫌で、ハンターをやめたんだ」

 カムイは拳を握りしめたまま否定する。

「違う!それは一部のハンターだけだ!シュバインは...」

 そう言いかけるも、先ほどの現実が彼の言葉を遮る。

 自分が慕っていた師匠の姿と、今の現実が、激しく衝突していた。



 カムイがハッキリと宣言する。

「僕!行くよ!ラインビッヒ公国に!行って奴らをぶっ倒してやる!」

 ルージュは少し考えてニヤリと笑った。

「そうかい...よく言った!」

 彼女は褒めるように続ける。

 ルージュたちも、ただ黙って見ているわけではなかった。

 ライデンビッヒ公国に忍び込んで、捕まった人たちの解放を考えていた。

 それがレジスタンス活動である。

「よし!あんた達にも手伝ってもらうよ!」

 彼女の言葉に、ニコフも頷く。

 カムイは拳を握りしめる。

「……絶対に、エレーナを取り戻す」

 ゼノヴィアも静かに剣を握る。

 ラスカ村のアジトで、新たな作戦が動き出そうとしていた。

 ライデンビッヒ公国への潜入。それが次の目標だ。

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