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第五十四話 目撃

 翌日。

 この日もひたすら北へと進んでいく。

 日が照りつける荒野を三人で歩く。

 誰もが暑い中を黙々と進む。

 ふと、エレーナがカムイに水筒を渡す。

「はい。」

「ありがとう」

 慣れた感じのやり取りだった。

 その様子を後ろから見ていたゼノヴィアはふふっと小さく笑う。

 息の合った二人に、温かいものを感じる。

 ギラル山脈までの道は、まだまだ長い。



 荒野を一日中歩き崖の間に差し掛かったところで夜を迎える。

 三人で食事を済ませ、それぞれテントに入って就寝する。

 エレーナがぐっすり眠っているのを確認したカムイはそっとテントを抜け出し、隣のゼノヴィアのテントへ向かう。

「ゼノヴィアさん……」

 中では彼女がまだ起きていて、剣の手入れをしていた。

「はい?どうされました?」

 突然の訪問に少し驚く。



 カムイは彼女に擦り寄り、甘えるように言う。

「いや〜ゼノヴィアさんと一緒に寝たいな〜と思って♡」

 ゼノヴィアはカムイへの警戒心は薄く、ふふっと優しく笑った。

「いいですよ」

 優しい笑顔で答える。

 心の中ではこう思っていた。

(カムイ様……甘えたい時もあるんですね)

 彼女は剣を傍らに置き、テントの中を少し広くして、彼を迎え入れる。

 夜の崖の間に、二つのテントの明かりが小さく揺れていた。



 カムイは改めてゼノヴィアが美人だと感じた。

 顔立ちは可愛らしく、ダークエルフならではの魅力。人としても神としても、彼にとっては新鮮だった。

「?」

 首を傾げるゼノヴィア。彼はギュッと抱きしめる。

 甘えまくる彼に少し動揺したゼノヴィア。

「ちょ、ちょっと!カムイ様!?」



 ゼノヴィアは戸惑いながらも、彼の腕の中にいることを嫌だとは思えなかった。むしろ、その温もりが離れてしまうことを、ほんの少しだけ惜しいと感じていた。


 その後。二人だけの温かい時間を過ごした。

 ゼノヴィアはカムイの優しさをより一層感じた。



 会話の最中、ゼノヴィアは一つ勘違いをしていたことが分かった。

 彼女はカムイとエレーナが恋愛関係だと思っていた。

 二人の仲の良さや戦いでの息の合った様子から、そう思い込んでいたらしい。

 特にエレーナのカムイに対する態度が分かりやすかったとのこと。

 そのときカムイはよくよく考えた。

(あ〜……そうか……)

 リディアの時と同じだ。

 この歳の女の子の恋愛感情にあまりにも疎い自分。

 美の神だった頃は数え切れないほど女性を口説いてきたのに、肝心のところでは鈍感なままだった。



 二人はその後も長い夜中を過ごし、距離も縮まり、お互いを親しく呼ぶようになった。

 そして眠りについてしまった。



 夜が明ける。

 目を覚ましたエレーナ。

 隣にカムイがいない。

「あれ?もう起きたのかな?」

 外に出ると、いい朝日が差し込んでいる。

 彼女は伸びをして辺りを見渡す。カムイの姿はない。



 隣のゼノヴィアのテントが閉まっていることに気づく。

 起こすついでにカムイのことを聞こうとテントの入り口を開ける。

 すると、とんでもない光景が目に飛び込んできた。

 一気に顔が真っ赤になるエレーナ。

「な、な、な、何やってるのーーー!!!!!」

 朝っぱらから荒野の崖の間に、エレーナの大きな叫び声が響き渡った。

 鳥たちが驚いて飛び立つ中、彼女の怒りと羞恥が入り混じった声が、朝の空気に広がっていく。

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