↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/97

第二十八話 お誘い

 ベッドの中で、カムイはリーラに甘えまくっていた。

 子供のようにくっついてくる。

 リーラはそんな彼の様子を見て、心の中で小さく思う。

(こうしている時は、可愛いんですけど……)

 彼女は優しく彼の頭を撫でていた。



 すると、カムイがふと顔を上げ、意を決したように尋ねる。

「リーラ。お父様と一緒にいるの...無理してない?」

 その突然の質問に、リーラの顔から血の気が引いた。

 カムイはリーラに抱きつきながら

「僕...知ってるんだ。

 この間、たまたま...覗いちゃって...」

 リーラは罪悪感で声が出なかった。



 そんなリーラにカムイは優しく話す。

「でも安心して!お母様には黙ってるから!」

 カムイは彼女の手を握り、真っ直ぐに見つめた。

「リーラ!無理だけはしないでね!

 僕はいつでも味方だから!」

 その言葉に、リーラの胸が熱くなった。

 嬉しくて、少し涙ぐみそうになる。

 彼が怒りもせず、責めもせず、ただ自分の味方だと断言してくれたことが、何より救いだった。

 ベッドの中で、二人は静かに寄り添う。



 数日後。

 この日、リーラは再びレオンハルトと過ごしていた。

 リーラは心の中で虚無感に晒されていた。

(私……何をしているんでしょう……)

 かつての冒険仲間であり、思いを寄せていたレオンハルト。今ではその息子とも深い信頼関係を築いている。

 こんなことをアリアが知ったらどう思うか。

 侍女長の心は複雑に揺れ続けている。



 ある日の騎士学校。

 カムイとリディアは、今日も二人で庭園のベンチに座って昼食をとっていた。

 リディアが話している。

 だが、カムイは明らかに上の空だった。

 自分の家庭のことを考えていた。

 最初は時間が解決するだろうと思っていたが、いまだに不仲な両親。

 リーラのことも気がかりだ。

 流石に、そろそろ本気で動いた方がいいのではないか。

 そんな思いが頭を巡る。



「ねぇ?カムイ?聞いてる?」

 リディアがようやく、カムイが自分の話を聞いていないことに気づいた。

 カムイは慌てて顔を上げる。

「あ、ごめん。」

 優しい彼女は怒る様子もなく、心配そうに覗き込んでくる。

「何かあったの?」

 その言葉に、カムイは小さく息を吐いた。

(今、俺が相談できるのはこの子くらいか……

 情けねぇな……神のくせに子供に相談するなんて。)

 藁にもすがる思いで、彼はすべてを正直に話し始めた。

 レオンハルトの不祥事で、夫婦仲が凄まじく悪くなっていること。

 母親が笑顔を作っているだけで苦しそうなこと。

 リディアは静かに聞いていた。

 真剣な表情で彼を見る。

「……そうなんだ。」

 短く、でも確かに受け止める声だった。

 カムイは初めて、自分の家庭の醜い部分を晒した。



 リディアは思いついたように話し出す。

「ねえ、カムイ。

 私とあなたの家族で遊びに行かない?

 みんなで遊べば、楽しくなって仲直りできるかも!」

 突然の提案に、カムイは目を丸くする。

「えっ!?」

 彼は「いや〜」と少し考え込んだが、悪くはないとも思った。

(グリルさんやレオナさんもいるんだ。

 二人がレオンハルトとアリアの仲直りを手伝ってくれるかもしれない。)

「わかった!やってみようか。」

 提案を受け入れると、リディアは少し頰を緩めた。



 カムイがお礼を言うと、彼女は恥ずかしそうに視線を逸らす。

「ぜ、全然いいよ。

 ……カムイが喜んでくれるなら、私も嬉しい♡」

 最後の部分は小さな声だった。

 カムイはよく聞こえず、首を傾げる。

「えっ?なんか言った?」

「ううん!なんでもない!!」

 慌てるリディア。



 二人の様子を、教室の窓から見ていたアリルとリザが会話をしていた。

「ほんとラブラブだね〜、あの二人。」

 リザが楽しそうに言うと、アリルも微笑む。

「そうだね。舞踏会が終わってからより一層仲良くなった気がするね。」

 リザは続けてニヤリと笑う。

「リディア...わかってるのかな?

 カムイとあんなにラブラブすることの危険性が。」

 二人は教室内を見渡すと、他の女子生徒たちがやきもちを焼いて羨ましがっているのがわかった。

 アリルは穏やかにフォローする。

「ま、まあ、リディアちゃんはとてもいい子だよ。」

 リザも納得したように頷く。

 庭園のベンチでは、カムイとリディアが次の予定について話し始めていた。

 家族同士の行楽が、静かに決まりつつある。


 

 学校が終わり、リーラと馬車で帰るカムイ。

 車内で彼はすぐにリーラに甘えまくる。

 彼女の腕に抱きつく。

 カムイは彼女の肩に頭を預けたまま話し始める。

「あのねリーラ。

 今度、リディアの家族とうちの家族で、丘の方でピクニックに行くことになったんだ。」

「本当ですか!?」」

 リーラが少し目を見開く。

 カムイは続けて理由を説明した。

「うん。流石にそろそろお父様とお母様には仲直りして欲しくて……

 リディアに相談したら...そうしようって。」

 リーラは静かに微笑む。

「流石はリディア様ですね。」



 カムイはさらに体を寄せる。

「それに。リーラに辛い思いさせたくないから。」

 リーラは少し目を見開いた。

「おぼっちゃま……」

 その言葉が、胸に温かく染みていく。

 父親との関係に悩んでいる今だからこそ、カムイの真っ直ぐな優しさがありがたかった。

「ありがとうございます。おぼっちゃま」

 馬車の揺れに合わせながら、二人はそのまま穏やかに話を続けていた。



 その日の夕食。

 相変わらず沈黙した食卓だった。

 食器の音だけが重く響いている。

 カムイは意を決し、静かに口を開いた。

 シルバレイン家とのピクニックの件を話す。

 アリアが驚いて顔を上げる。

 レオンハルトもチラッと息子の方を見た。

 アリアはすぐに断る前提で、丁寧に言葉を選ぶ。

「で、でもね、カムイ。

 お父様もお忙しいし、リディアちゃんのご家族だって...」

 しかし、カムイは引かなかった。

「大丈夫だよ!

 リディアから聞いたんだけど、もうすぐ騎士団の任務が終わって、しばらく休暇が取れるんでしょ?

 ねっ?お父様!」

 レオンハルトは短く返事をする。

「あ、ああ……」



 アリアは考え込む。

 否定する理由が、見当たらない。

 彼女は俯きながら、夫の方を見た。

「どうですか?あなた...」

 レオンハルトも少し沈黙したあと、ゆっくりと口を開く。

「……いいんじゃないのか。」

 短い、しかし肯定の返事だった。

 アリアは小さく息を吐き、息子に向かって言った。

「それじゃあ、お言葉に甘えて行きましょうか。

「やったぁ!」

 カムイが大喜びで声を上げる。

 その無邪気な様子を見て、アリアは心の中で静かに呟いた。

(ありがとう、カムイ。)

 気を遣ってくれた息子への、感謝の気持ち。

 沈黙の食卓に、久しぶりに小さな希望の光が差し込んでいた。



 一方、シルバレイン家。

 カムイをピクニックに誘った日の夜。

 リディアはグリルとレオナの仕事部屋にやってきた。

「お父様!お母様!」

「どうした?リディア?」

 グリルが顔を上げる。

 リディアは興奮気味に、ヴァルハート家とのピクニック計画を話した。

 レオナはすぐに目を輝かせる。

「へー!面白そうじゃないか!ぜひやりたいね!」

 グリルも満足そうに頷いた。

「うむ!」

 リディアは大喜びで手を叩く。

「やったぁ!じゃ、明日カムイに話してみます!」

 嬉しそうに部屋を出ていく娘の後ろ姿を、二人は見送った。



 扉が閉まると、グリルが小さく呟く。

「なんだがリディアのやつ……カムイと出会ってから、より一層明るくなったな。」

 レオナも同意するように腕を組む。

「そうだな!カムイにはなんかこう……人を明るくする才能があるのかもしれんな!」

 そして、ニヤリと笑って続けた。

「リディアの旦那には、そういう人が良さそうだな〜」

 いたずらのような言葉に、グリルが激しく動揺する。

「な、何言ってんるだお前は!ま、まだそういうのは早いぞ!!それに!俺より強い奴でないとダメだ!」

 レオナはそれを聞いて、豪快に笑いまくった。

 仕事部屋に、夫婦の明るい声が響いている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。