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三人

 生徒会室のドアが、音を立てて開かれる。乱暴、というほどのことでもないが、いつも礼儀正しい咲楽としては、異例と言えた。

「副会長、いる?」

 咲楽は、ドアを開けたまま生徒会室の入口に立ち尽くしていた。

「あら、会長。どうしたの、そんなところで。まあ、お入りなさいな。」

 対する市歌は、長い髪をさらりと手で撫で、優雅に咲楽を促した。初瀬は、咲楽のすぐ後ろに付いて生徒会室の入口まで来たが、咲楽が立ち止まったため、咲楽の肩越しに生徒会室の中を見ざるをえなかった。初瀬の位置からは、生徒会室の中は完全には見えなかったが、春藤は部屋にいるのかいないのか、特に発言をしなかった。

 咲楽は、迷いなく生徒会室に入ると、一番奥の自分のデスクに落ち着いた。

 生徒会室は、ドアから奥に長い長方形の形になっている。一番奥に窓があり、窓の前に「生徒会長」というプラスチック製の三角プレートの置かれた机がある。そこが、咲楽の机である。初めて初瀬が咲楽に会った時からずっと、咲楽はその机を使用していた。これに対し、副会長の市歌には、プレートが用意されているわけではない。ただ、入口から見て左側に、咲楽の机に90度横に向けて机が設置されており、これまで、その机を使っているため、そこが市歌専用なのだろうと推測できた。

 さすがに、今日初めて会ったばかりの、春藤の机があるのかまでは、初瀬にも分からなかった。ただ、生徒会室はあまり広い部屋ではない。咲楽と市歌の机を除いては、大きな正方形のテーブルがあるのみである。そのため、春藤の専用の机はないのではないか、と初瀬にも予測できた。

 先ほど、初瀬が廊下から見たときには、春藤の姿は見えなかった。角度の問題で、部屋の右側が見通せなかったのだ。

 ただ、初瀬も咲楽に続いて、中に入った際、入口から見て右側にあるテーブルで春藤がパソコンに向かっているのが目に入った。ただ、春藤の目は、ノートパソコンの画面ではなく、部屋の中にずんずん入っていく咲楽の姿を追っていたが。

 初瀬にも、当然ながら、まだ専用の机などない。とりあえず、春藤から少し離れた椅子に腰を落ち着ける。市歌は、ちらりと初瀬の姿を確認したが、特に反応はなかった。

 生徒会長専用席に座り、居住まいを正してから、咲楽は、手にした書類を勢いよく市歌に突き付けた。

「副会長、この書類のことについて、尋ねたいことがある。」

 伊達に生徒会長をしていない。整った顔に似合わず、さすがの迫力だ。

「あら、ハツセ君、ミッションに失敗したのね。お姉さん、悲しいー」

 お互いに座っているので距離はあるが、何の書類かくらいは、判別できたのだろう。市歌は、咲楽を見ずに初瀬に笑いかけた。

「副会長! 私が尋ねているのだ。返事をしないか!」

 とうとう、咲楽の声が怒りを帯びて強い口調となる。市歌はそれを待っていたかのように、

「会長。それで、何を聞きたいのかしら。」

(副会長の方が、はるかに上手だ……)

 初瀬はそう感じたが、いまさら二人を止めるすべなどない。

「この書類、私は決済していない。それをどうして、理事会に出せるのだ。」

「あら、そうだったかしら。ごめんなさい、他の書類と勘違いしていたわ。」

 市歌は、わざとらしく自分の頭を軽く叩き、ぺろりと舌を出した。

「しかも、この内容は何だ! 「生徒会予算適正化について、生徒会として努力できることは既に履行している」「生徒の活動については、学校側はその自主性を重んじるべきであり、不干渉を貫くべき」――こんな内容、これまでの生徒会の方針とも相違しているではないか‼」

「そ、そんな……。どういうことですか、副会長!」

 がたり、と初瀬の横で音がした。春藤が立ち上がった音である。初瀬も、咲楽が口にした文書の内容の強烈さに、口が挟めないでいた。

「そうか、メイ君も知らなかったのか。」

「そうですよ。それに、私だって、ここ数日は――」

「あら、メイちゃんには言ってなかったかしら。」

 暗に、咲楽には伝えていなかったと言っているようなものだが、咲楽はそこを咎めることはなく、

「それより、副会長、説明を――」

 椅子から立ち上がり、市歌に詰め寄りそうになった。春藤も後に続こうとしている。大混乱だ。

 初瀬は、本音を言えば、事情も分からないのにあまり関わりたくなかったが、この状況になってしまっては、やむをえない。

「待ってください‼」

 予想外のところから声が上がったためか、3人の動きが、ぴたり、と止まった。初瀬は、一つ、息を吸う。場の主導権を握るためには、この次が重要である。

「3人がばらばらにしゃべってても、話が始まらないと思います。まず、何があったのか、俺にもわかるように教えてください。」

 春藤あたりから、部外者が何を偉そうに、などと言わるかとも思ったが、初瀬の勢いに飲まれたのか、何も声が上がっていない。それを幸いと、初瀬は、さらに続けた。

「必要があれば、話はまた戻ればいいと思うので……まず、この数日ずっと外で活動していたという春藤さん、外で何をしていたのか、それは何のためだったのか、教えてもらえますか?」

ようやく、ヒロイン3人が勢ぞろいしたものの、いきなり喧嘩が始まります。しばらくこんな状況が続きますので、ご容赦を…

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