表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/35

週明けの曇天

 9月11日、月曜日。

 ここ数日、快晴だったのに比べると、曇り気味の空模様である。そんなことが影響してか、初瀬は週明けであるにもかかわらず、なんとなく憂鬱な気分で登校した。否、週明けだから憂鬱、とも考えられるが。

 もちろん、今日の朝も、咲楽の目覚まし、朝食、同伴登校と、朝の行事が目白押しであった。

 教室に入ると、今朝も藤原俊とたいら忠空ちくの二人が近付いてきた。家が近いのか、いつも一緒に登校している。以前、初瀬は二人に、お熱いねえ、と冷やかしたことがある。が、自分にもブーメランで返ってくるので、そうした冷やかしもできなくなってしまった。

「初瀬よ、つかぬことだが。お前、昨日、生徒会長と一緒に歩いてなかった?」

「俊と一緒に遊んでいたら、偶然、見かけたのよ。」

「うっ……、見てたのか。まあ、確かにそうだが。」

 初瀬は嫌そうに答えた。

「やっぱり、付き合ってるっていう噂は本当だったの?」

 忠空は、初瀬の机に両手をついて、身を乗り出した。

「いやいや、そんなんじゃないから。」

「じゃあ、何で日曜日に二人で買い物してたりするんだよ。」

「いやいや、たまたま休みの日に、時間が空いたのでな。」

 口が裂けても、同じ家に住んでいます、などと言える雰囲気ではなかった。

「ま、なんでもいいがな。すまんかったな、からかって。」

 藤原は、両手を上げた。こうしておけば、注目している他のクラスメートが重ねて聞きにくくなるだろうという、彼なりの気遣いかもしれない。

「えー、私は教えてほしいなー」

 忠空は、藤原の配慮に気づいていないらしかった。

「いずれにしても、人の噂も七十五日と言うからな。生徒会長は、あれだけの有名人やから。しばらくはみんなから注目されるだろうが、あまり気にしなさんな。」

 そう言ってから、藤原は、忠空と、昨日二人で見た映画の講評を始めた。

(すまん、気を遣わせてしまって。)

 初瀬は、心の中で藤原に手を合わせた。ただ、咲楽との関係を、これから人にどう説明しようかと思うと、今ひとつ気は晴れなかった。

「だから、あんな映画やめとこうって言ったのよ。」

「そう? 下手なホラー映画より、グロかったやないか。」

「ただグロいだけの映画と、ホラー映画を一緒にしないで!」

 そして、二人でプチ喧嘩を始める。どうやら昨日、藤原と忠空も、ダイオウグソクムシの映画を見たらしい、ということは分かった。


 昼休みも、咲楽の作ったお弁当を二人で味わう、はずだった。ただ――

「雨、ですね。」

「こればかりは、どうしようもありませんが……」

 屋上に出る踊り場から、咲楽は恨めしそうに空を仰いだ。

「やむをえません、本日は屋内で召し上がっていただくことしましょう。」

「もしかして、教室ですか?」

 せっかく、教室のクラスメートの興味も少し薄れてきたところである。なのに、咲楽のお手製の弁当なんか食べていたら、注目度マックスに逆戻りとなるのは、間違いない。

「それでもいいのですが、生徒会室に参りましょうか。」

「いいですね。そうしましょうか。」

 生徒会室なら、副会長の春日しゅんにち市歌いちかがいるかいないか、だろう。教室よりも、よほど落ち着いて食事できるに違いない。初瀬は、そのように踏んでいたのである。

 その見通しがいかに甘いものだったか、初瀬は、直後に思い知ることになる。

 屋上への階段から生徒会室は、東西に長い校舎の東から西に歩いていくだけであったので、さほどかからずに到着した。

「昼休みは、副会長も不在かもしれません。練習もあり、忙しいのです。」

 春日市歌という人物は、悪い人間にも見えないが、とらえどころのない印象がある。

(そういえば、副会長は、何か部活をやってるのか、聞いてなかったな。)

「練習、ですか?」

「申し上げておりませんでしたか。副会長は、演劇部の部長を兼務しております。舞台が近い、とのことで。」

 咲楽は、話しながら生徒会室の中に入り、部屋の中が無人であることを確認した。それから、机の上にランチマットを敷いて、手早く弁当を広げ始めた。

「しばし、お待ちください。すぐに、昼餉ひるげの準備をいたします。」

「あ、ありがとうございます。」

 そうこうしているうちに食事の準備が整い、二人で仲良く箸を手に取った。

「いただきます。」

「あ、殿様。こちらの卵焼きから、まずはお召し上がりください。」

「殿様、ナフキンをお持ちくださいませ。」

「殿様、お茶をおつぎしましょう。」

「殿様……」

 いつもながら、咲楽のお世話は非常にまめであった。

(まるで世話女房みたいに……)

と考えたところで、初瀬は、一人で気恥ずかしくなった。

「殿様?」

「あ、いや、美味しいので、つい。」

 不思議そうに顔を見上げてきた咲楽に、初瀬は、何とか答える。

「もう、殿様はお上手ですね。」

 そう言いながらも、まんざらでもなさそうな咲楽。

 そんなとき、なごやかな雰囲気をぶち壊すように、生徒会室のドアが、文字通り、どかん、と大音量を響かせながら開いた。

「会長、久しぶりでござった! 実は、会計の件で……」

 副会長かと思いきや、聞きなれない女子の声であった。初瀬は、その女の子の姿を見て……三度見くらいした。なぜなら、その女の子は、何故か、忍者装束だったからである。

 2歩、3歩と部屋の中に歩みを進めたところで、その女子は、初瀬に気づいた。

「ぬぬ、くせ者‼ 会長から離れろ‼」

(また変なのがキターー!!)

 徐々に、自分が、変なキャラの登場に慣れてきているような気がして、初瀬は微妙な気持ちになった。

ここで、またまた新キャラの登場です。これで、予告していたキャラは大体出てきたかな、と思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ