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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第五十四話 査問会

ニューニューヨーク『GF』本部評議会室。そこの中央にオレはいた。


オレを取り囲むように机が円を描き、そこには年老いたご老体がたくさんいる。評議会の爺共だ。


一応、時雨と慧海の二人もいるが、進行させるのは評議会側だ。


「以下の内容におかしな部分はないな」


爺の一人がオレが査問会に呼ばれた原因を読み上げていた。簡単に言うならオレが書いた報告書の改造版だ。


「ありません」


オレは淡々と答えた。


何ら間違いはない。『ES』と手を組んだのはオレの判断だし、作戦に失敗したのは指揮官のミスだ。


評議会からすれば『ES』と組んで失敗したことが許せないと思うけど。


「『ES』と組んだ挙げ句、失敗。この責任をどうつもりかね?」


爺の一人がニヤリと笑みを浮かべる。


オレを攻めていることが時雨や慧海の復讐だと考えているようだ。又聞きした話だから詳しくはわからないけど。


「責任は感じています。ですが、このまま狭間市を放っておけません」


「だから、お前は失敗している。責任を取り、潔く身を引いたらどうかね?」


「総長からの命令があるならそうしますが、ないなら引きません」


「餓鬼が」


向こうはこちらに聞こえないように言ったようだが、静かなこの場では逆に丸聞こえだ。


オレは子供だから気にしない。爺共からすれば五分の一ほども生きていないオレがこんな口だから嫌なのだろう。


「私はまだ戦えます」


あくまで挑発するようにオレは言う。おそらく、時雨や慧海は無表情の内側では笑いをこらえるのが大変だろう。


「貴様は負けたのだ! いい加減に認めろ! 負けたものの責任の取り方は」


「どう負けたか説明をお願いします」


オレはこの瞬間を待っていた。


今言われたのは負けたということ。失敗したと負けたでは意味が違ってくる。


オレ達はただ、失敗しただけ。


「鬼を封印出来なかった。それが負けと言わずして何と言う!?」


「失敗はしました。しかし、鬼の封印は一歩手前まで成功しています。貴族派の介入が無ければ封印に成功していました」


そう。オレが油断した時に音姉は『鬼払い』を命中させていた。だから、介入が無ければ可能だったというのは事実だ。


「あー、発言いいか?」


そんな中、慧海の声が聞こえる。


慧海はゆっくり立ち上がった。


「一応、貴族派について調べた情報を教えようと思ってな。貴族派は魔王派、議会派に続く第三勢力。ただし、議会での権限はかなり低いな。気になる点は、メンバー構成が不明である点と、魔界五将軍の一人がいる」


その言葉にオレは耳を疑っていた。


魔界五将軍は魔界の中でも強さの桁が違う五人に与えられる称号だ。主に、五つの属性に分けられる。


「名前は『浸透』のクラリーネ。役割は水帝だ」


クラリーネという名前には聞き覚えがある。確か、レヴァンティンを受け止める硬度の頸線を操る敵。


「ただ、魔界五将軍の中では変わり者らしいな。ギルガメッシュに聞いた話だが、実際の実力はそれほど高くないらしい。ただ、精神攻撃がかなり得意らしい。対戦相手を狂わすくらい造作もないとか」


「そう聞くと、こんな子供では荷が重いな。援軍を最速で送ればいいではないか」


評議会側がその言葉で笑みを浮かべる。


多分、慧海も笑みを浮かべているのだろう。獰猛な獣の笑みを。


「精神攻撃で人は操られるだろうな。民間人も。それを突破するのか?」


民間人を殺そうとする貴族派を狙って最速で向かうのと、民間人が敵となった中、貴族派を倒すのでは難易度が変わってくる。


慧海は確実にこれを狙っていた。断言出来る。


「『GF』の民間人大虐殺。さぞ面白い記事になるだろうな」


「善知鳥慧海! 口を慎め! ここは査問会だ!」


「査問会だか何だろうか知らないが、お前らがやろうとしていることは大惨事にしかならない! 自分達のプライドのためにそれを起こそうとするなら、オレは全力で阻止するさ。周」


背中をぞわっと嫌な感覚が撫でた。


殺気というにはあまりに軽い。だが、確実に狙っている。


「受け止めろ」


オレはレヴァンティンを取り出す暇なく振り返りながら腕で顔を守った。


衝撃は、軽い。そういう風にしたからだ。だけど、慧海が振り切った剣によりオレと慧海の間は床が激しく粉砕されている。


「それが、お前のレアスキルか」


慧海がニヤリと笑みを浮かべた。


オレの体には薄い衣のようなものがかかり、攻撃の威力をほとんど吸収していた。


「慧海は相変わらず無茶するな。周、そのレアスキルはお前が生き残った理由だよな? あの日、『赤のクリスマス』で」


オレはゆっくり頷いた。


「あの状況下ですら生き残ることが出来る防御力を持ったレアスキルか。余裕でSランク認定でいいよな」


「時雨の好きにしろ。おい、お前らが考える援軍より、周の方がよっぽど頼りになるぜ。それとも、そいつらと周が戦ってみるか?」


正直に言って使えるとは思わなかった。


こっちのレアスキルはあの日から発動出来なかったレアスキルで、発動していなかったら確実に死んでいた。


「くっ、わかった。お前らの好きにしろ。だが、責任はお前らで取れ」


爺共からすれば慧海の攻撃力は知っているはずだ。『無敵』の異名を持つ慧海の実力はまさに無敵。音姉で八回に一回しか勝てない。


本当の理由は別のところにもある。


「責任ってわかってるよ。そもそも、第76移動隊が全滅したなら、オレも時雨も首を切る覚悟だ。だが、一つだけ言っておく」


慧海は爺共に向かって指差した。


「お前らが何を計画しているか知らないけどオレらを舐めるなよ。死にたくないならな」


これって、オレの査問会だよな?


周の新しいレアスキルの名前は『天空の羽衣』。能力は限定的絶対防御。限定的です。

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