第二十九話 プロフィール2
少しだけ大事な内容をカミングアウト。
正の正体を想像していただければ嬉しいです。
ニューニューヨークにある『GF』本部総長室。
そこで一人の青年がコーヒーを片手に記憶デバイスと向かい合っていた。青年のもう一方の手はキーボードの上を走っている
デジャヴを感じるが彼はその動作をしている。
「ふむふむ、全員合流したか。時雨もこれで一安心だろうな。まあ、周と由姫の裏技があれば狭間の鬼なんて三人で戦えるんだけどな。まあ、あいつらはそのことを知らないからいいか」
青年が見ているのは記憶デバイス上に送られてきた一通のメールだ。
膨大な添付データの存在を示すランプが光っているが青年は気にしない。添付データを空けていなくても青年はその内容を知っているから。
だけど、それをしてしまえば青年自身が疑われかねないので、青年は添付データを開ける。
「やっぱりの内容か。新しいプロフィールね。っと、内容が違う?」
青年は首を傾げた。だけど、すぐに首を戻す。
「入隊人数が一人多い? 七葉が入ったのか。あの、不確定要素が? まあ、いいか。新しく来たのは、由姫、佐野浩平、七葉プロフールか。オレの知っているものとデータが少しずつ違っているから面倒だけど、まあ、中身を見ているか」
・白百合由姫
・新暦1023年3月31日生
・魔術素質:不明
・得意魔術:不明
・戦闘ランク:不明
・異名:無
「やっぱり、不明だらけだな。まあ、今の時点ではそうなるか。第76移動隊で二人目の不明キャラということにしておこう」
ちなみに一人目は周のことだ。
・佐野浩平
・新暦1022年12月12日生
・魔術素質:水
・得意魔術:狙撃魔術
・戦闘ランク:BB
・異名:無
「この二人は変わらないか。まあ、周達六人のデータがかなり大きく違っているだけだし、あまり差異はないか」
・白川七葉
・新暦1023年5月1日生
・魔術素質:風
・得意魔術:伝達系魔術
・戦闘ランク:B
・異名:無
「ふーん。こういう能力か。伝達系が得意なのに雷属性じゃないのが面白いな。でも、どうして違ってくる? 示された未来と。まるで、誰かが介入しているような感じだな。いや、介入しているというべきか。お前もそうだろ?」
青年が振り返りながら尋ねる。すると、そこには、いつの間に入ってきたのか海道正の姿があった。
「おや、気付かれてしまったか。さすが、『GF』第一特務隊長善知鳥慧海というべきか」
「さすがって、オレはそこまで見くびられているのか? だとしたら心外だな。オレはそこまで鈍くもないし弱くもない。で、何の用だ?」
正が小さく笑みを浮かべた瞬間、正の視界から慧海の姿が消えていた。そして、押し当てられる無骨なまでのただの剣。
「後、お前が知るオレと今のオレは違う」
「君は僕と同じだと思っていたけど?」
「違うな。お前とオレは見ているものが違う。オレが見ているのは今からの未来だ。お前が見ているのは過去。違うか?」
正の目が若干細くなる。
慧海はふっと笑みを浮かべて剣を引いた。
「まあ、いいさ。オレはお前が周と接触していることを知っている。止めはしないさ。ただ、あいつは強いぞ」
「君は、僕をどこまで知っているんだい?」
「そうだな。ほとんど知らないというべきか。オレもお前も、世界の終わりを知るから動いている。でも、あいつなら、周ならその未来を回避する能力はある」
そして、慧海はパチンと剣を鞘に収めた。
「誰が介入したか知らないけど、あいつの強さは上がっている。まあ、オレには及ばないさ。一生な」
「なら、君が未来を回避すればいいんじゃないかな?」
その言葉に慧海は肩をすくめた。その動作に正も頷く。
二人は知っているからこそあまり動かない。非常に大事な時にならない限り。
「でも、あいつを舐めていると、お前は公開するぞ。オレがつけた最強の器用貧乏。その意味を知ると思うけどな」
慧海が言い終わると同時に正の姿が消えた。そして、残される一枚の紙。
慧海はその紙を拾い上げた。そして、書かれている内容を見つめる。
・善知鳥慧海
・生年月日不明
・魔術素質:大地
・得意魔術:操作系魔術
・戦闘ランク:S
・異名:『無敵』