表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
21/27

21話 元王女と騎士団長の誓い

 真っ白な薔薇が咲き誇る庭園に敷き詰められているのは、ルクシオン侯爵家の象徴とされる深味のあるグリーンにシルバーの刺繍が入ったカーペットだ。ローラとカイルが共に歩くバージンロードには、トリアント王国最高品種と言われる大輪の白い百合が咲いている。


ふわ、ふわと浮いているのは、王立魔法院主席魔法師セドリックの魔法で生み出された「光のバルーン」と呼ばれる、淡い明かりを灯す透明な七色のしゃぼん玉のような球体だった。遠征での勝利という輝かしい功績を引っ提げて帰還した騎士団団長カイルの挙式となれば、共に戦った魔法師たちも張り切るというもので、ルクシオン邸の庭園には魔法師たちの協力による煌びやかなガーデンウェディングが用意されている。

 

 その豪華な飾り付けの中には、ローラが自ら作成した、自動でフラワーシャワーを降らせる「小型飛行船」なるものまで飛んでいる。ガーデンの四隅に浮かぶスピーカーもローラ特製で、小型のプロペラを回しながら旋回し、野外ステージのオーケストラの音楽をさらに迫力ある音響へと変化させていた。


錬金術師と魔法師の合作があちらこちらに散りばめられている。


ゴーン、ゴーンと重厚な鐘の音が響き、ルクシオン邸宅からガーデンウェディングの会場に入ってきたのは、純白のドレスに身を包んだローラと、騎士団の正装に身を包んだカイルだった。

二人がガーデン入り口を彩る薔薇のアーチを潜り、お辞儀をすると、両脇から無数の明かりが放たれる。キラキラと宝石が舞うような眩い光が二人を包み込んだ。


 幻想的な風景がガーデンを覆い尽くす。空から舞い落ちる花びらと、会場を優しく照らすライト。そして、二人の姿をより輝かせる細かな星屑のような煌めき。


わあっと歓声が上がる。プリンセスラインの純白のドレスには、クリスタルとダイヤが散りばめられていた。小柄なローラをエスコートしながら、カイルが神父の前に立つ。軽やかなピアノの旋律が二人を出迎える。


神父は二人の前で、穏やかな表情を浮かべている。


「新郎、カイル・ルクシオン。汝は病める時も、健やかなる時も、ローラ・ルクシオンを愛し慈しむことを誓うか」


「はい。誓います」


「新婦、ローラ・ルクシオン。汝もまた、病める時も、健やかなる時もカイル・ルクシオンを愛し慈しむことを誓うか」


「はい。誓います」


「それでは、大いなる神の祝福がこの二人の魂を永遠の光で包み、共に歩む人生が希望に満ちるように――さあ、誓いの口づけを交わしたまえ」


二人はどちらからともなく視線を重ね、カイルがローラのベールを捲る。長い睫毛に彩られた琥珀色の大きな瞳が降り注ぐ陽の光を受けて煌めいている様を、カイルの漆黒の瞳が「美しい」と言いたげにじっと見つめ返していた。


 カイルはローラの柔らかな頬へそっと手を添えると、身を屈め、長い睫毛を伏せるローラの小さな唇へと、羽根が触れるほどの繊細さで口付けた。

ローラの小柄な体を包み込むカイルの影。触れるだけのキスを終え、離れていくカイルの姿に、ローラは

 

 ふっと目を開ける。その愛おしさに満ちたカイルの眼差しに、ローラの胸がきゅんと音を立てた。高鳴る心臓の音に、瞬きさえも躊躇うほどの衝撃を受ける。

小さなティアラが飾られたローラの髪を優しく撫でるカイルの長い指先に、彼女の顔が赤く染まった。


「……カイル様……」


「綺麗だ、ローラ……。愛している」


二人が誓いの口づけを交わすと、オーケストラの神聖な旋律がガーデン会場へと鳴り響いた。

カイルがローラへと腕を差し出し、エスコートする。


「カイル様……、私も愛しています」


隣へと並び立つ長身のカイルを見上げると、ローラは幸せそうに微笑んだ。


――カーン、カーンと高い鐘の音と、華やかなガーデン全体に溶け込むオーケストラの音を背に、二人は参列者に向かって笑顔を見せながら歩いていく。


 魔法師や騎士団の騎士たちが拍手で二人を送り出す。二人を包む空気は幸せそのもので、祝いの言葉が至る所から贈られる度に、カイルとローラは幸せそうな微笑みを返した。


花馬車へと乗り込んだ二人を、参列者たちは一輪の花を手に、温かな拍手と祝福の声で見送った。


これから向かうのは、夫婦となった二人だけで過ごす初めての旅――ハネムーンだった。


「カイル様……」


「ローラ」


互いの名を優しく呼び合うと、二人は自然と唇を重ねた。祝福の歓声を背に花馬車はゆっくりと走り出し、夫婦となった二人を新たな未来へと運んでいく。


どこまでも続く青空の下、二人の幸せな旅路が、静かに始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ