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六芒星の襲撃  作者: 真言☆☆☆
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敵はさるもの


「 わからんのう。」

 森の中で猿の群れに囲まれた。

 ざっと、百匹はいる。

 

 たまに、猿の群れに出くわすことはあるが、

こんなにも多くないし、一緒に遊ぶことはあっても、

闘ったことはない。

 今日の猿の群れは違った。

 移香斎に、激しい敵意。いや殺気を持っている。

 そして、異常に興奮している。

 激しく木の枝を揺さぶり、牙を剝き、威嚇してくる。

 胸に手を当ててみたが、とんと覚えがない。

 

 野生の猿は本能に従って攻撃してくる。

 考えるより先に、体が動く。

 恐ろしく敏捷で、鋭い爪と牙で型にはまらない攻撃を

してくるから、やっかいである。

 突然、五匹が襲いかかってきた。

 移香斎の刀が、宙に煌めいた。

 五匹の猿が、地に落ちた。

 峰打ちである。

 のたうち回る猿の中、一匹だけが

牙を剥いて飛びかかってきた。

「 仕方あるまい。」

 移香斎は、真剣で斬った。

 只、斬っただけではない。

 左右の袈裟切り、一の胴、両車(腰部)を

瞬時に斬り裂いた。

 そして最後に、首を刎ねた。

 移香斎の腕前なら、首の皮一枚残して斬ることもできたが、

あえて大きく刎ね飛ばした。

 地面に転がった首に近づいて、高々と掲げた。

苦悶の表情を浮かべた猿の死に顏に対して、

返り血を浴びた移香斎は、凄味のある笑みを浮かべていた。

 あれほど騒がしかった猿の群れが、シ~ンと静まり返った。


 地面でのたうち回っていた猿まで、金縛りにあったかのように、

体が恐怖心で固まり、ガタガタと震えている。

 野生の動物は、本能で危険を察知する。

 猿は知能も高いので、尚更であろう。


 移香斎は、猿の首を群れの中心に向けて投げつけた。

 その首は、まるで生きた妖怪のように見えたに違いない。

「キエエエッ~」

 人の様な悲鳴、絶叫する大声があちらこちらからあがった。

 蜘蛛の子を散らすように、猿の群れは退散した。

 よほど恐ろしかったのであろう。

 あっという間に姿が見えなくなった。


「 ふう、無駄な殺生をせずに すんだ。

  去る者は、追わずじゃ。」

 移香斎は、ビュンと血降りをした後、納刀した。

 そして、やむを得ず斬ってしまった猿の冥福を祈り、

合掌した。

 

それから、きっと顔を上げた。

「 姿を 見せろ。」

 先程の猿の群れの中心の木に向かって、叫んだ。

「 ほう、見破っておったか。」

 一匹の大きな猿と見間違えるほど、見事に猿の毛皮を着こみ、

顔に化粧をした者が現れた。

「 この木猿の凶猿百襲の陣を破ったのは、

 貴様が初めてじゃ。 面白い。」

「 つべこべ言わず、かかって来い。」

 移香斎は、珍しく怒っていた。


 木猿は移香斎の周囲の木の枝から枝へ、飛び移った。

 本物の猿のようであった。

 じっと見ていると目が回るくらいの速度であったが、

惑わされることなく、八方目で隠剣にて静かに構えていた。

 突如、木猿が後ろから、襲いかかってきた。

 両手には、鉄製の鋭く長い鉤爪をはめている。

 並みの剣術家なら、無残に斬り裂かれていたであろう。

 移香斎は、振り向き様に、刀を無造作に振った。

ずばっつ

 両手の鉤爪だけを、斬り裂いていた。

「何い!」

 木猿は、驚愕した。

 移香斎にしてみれば、兜割りに比べれば、朝飯前である。


「 去る者は 追わずじゃったの。 あばよ。」

 これは敵わぬと本能で見極めた木猿は、逃げを決めこんだ。

 木から木へ、飛び移ってかなりの距離を逃げた。

『 まさか、ここまで、木の上まで追ってこれまい。』

 高をくくっていたその時、突如、何か大きな物が上から降ってきた。

 妖怪かと、背筋がゾオッ~とした。

 それは、木猿の背中にがっちりと被さり、羽交い絞めしてきた。

 今の世で言うプロレス技のフルネルソンであった。

 移香斎が、本物の猿の如く、追ってきたのであった。

 移香斎を甘く見ていた木猿が悪い。

 首、両腕を極め、なおかつ両足で両足を極めている。

「 貴様だけは、許さん。」

 そのまま、地面に激突させた。

ズシ~ン

 激しい土煙が上がった。


 地面に気絶している木猿から離れた移香斎は、

次の敵へと向かう。


「あと、二人。」

 心が熱くなるほど、冷酷になる非情の兵法家・移香斎で

あった。


 空には、鵜戸明神から聞いたことのある孫悟空の

筋斗雲のような雲が、風に流れていた。









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