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六芒星の襲撃  作者: 真言☆☆☆
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3/7

やだねえ

「おっと、危ない!」

 山へ続く野原で、いきなり弓矢が顔面目掛けて飛んで来た。

 本気でないのはわかっているが、狙いは正確であった。

 並みの剣術家なら、瞬殺であった。

 移香斎は、飛んで来る弓矢を瞬きすることなく、

難なく右手で掴んで止めた。

 そして、無造作にポ~イと放り投げた。

「 姿を現せい。 」

 弓矢の形状、重さ、しなりなどを素早く分析し、

尚且つ相手を挑発する意味も込めてである。

 この男、意外とあざとい。


「 ふん、今のはあいさつ代わりだ。

  今からが、本番だ。覚悟しやがれ!」

 三十三間先の腰ほどの高さの草むらから

襲撃者が姿を現した。

 筋骨隆々の仁王像を思わせる大女であった。

 

 ちなみに、一間けんは、六尺で、約1.818m。

 弓矢の最大射程距離は六十六間で、約119.988m。

 殺傷有効距離は、その半分くらいまでであろう。

 

 移香斎は、無造作に三十間まで、歩み寄った。

 林の中ならともかく、何も身を隠す物が無い野原なのに、

実に落ち着いている。

「いざ、参られよ。」

 移香斎は、真剣を抜き、珍しく青眼に構えた。


「月影姉さんの仇、この金矢様がとらせてもらうよ。」

 実は、この金矢、同性の月影に惚れていたのであった。

 幼いころから、大女ゆえに男どもから恋愛の対象と

見なされることなく、女としても見られなかった。

 その点、月影は、容姿端麗で憧れでもあったし、

金矢にも優しく接してくれたからである。

 もちろん、忍び故の忍ぶ恋であった。


 先程、月影に弓矢を背中に射てしまったことが、

相当ショックで、移香斎への怒りに燃えていた。

ビュウ~ン

 唸りを上げて、同時に三本の弓矢が飛んで来た。

 強弓を引く力もさることながら、たいした腕である。

 三本同時に放ったのに、人中、水月、丹田、

狙いは正確であった。

 それ故に正中線に沿っていたので、左足を一歩進めて、

刀を使うことなく、右八相に構えを変えただけで、かわした。

 普通は、弓矢相手ならば、間合いを縮めようと、

50mを全力で疾走するするはず。

 並みの者でも、6、7秒ぐらいであろう。

 移香斎は、5秒を切る自信はあった。

 その短い間に、いかに相手に矢継ぎ早の技があってしても、

二、三筋と弓に矢をつがえ、狙いを定めて放つことはできない。

 すなわち、勝負は一の矢で決着するはずである。


「 次!」

 移香斎は、走ることなく、ゆっくり歩いて五間詰め、

次の攻撃を促したのであった。

 金矢は、移香斎の舐めた真似に怒りに眼がくらみそうになったが、

深呼吸をして、堪えた。

 そして、またもや三本同時に、打ち込んだ。

 今度は、横にである。

 かわさなければ、真ん中の弓矢に当たる。

 右か、左に躱せば、どちらかの弓矢に当たるはずであった。


「何つ。」

 移香斎は、刀を使うことなく、スウッと身をかがめて、

かわし、居合腰になった。

 縦にも横にも小さくなった。

 刀は、右手だけで前に突き出している。

 見たことも無い構えであった。

 ここまで、虚仮こけにされたのは、初めてである。


「 次!」

 移香斎は、またもやゆっくり歩いて、五間詰め、

次の攻撃を促したのであった。

 その間合いは、二十間。緊迫の間合いである。

 金矢は、形振り構わず、攻撃に出た。

 五本の弓矢を同時につがい、移香斎の頭上高く打ち放った。

 五本の弓矢は、放物線を描き、バラバラと移香際の頭上に落ちる。

 五本同時にかわすことは不可能であり、気をとられている隙に、

もしくは態勢を崩したところを一矢入魂で射る。

 最後の矢は特別性であった。

 長さは、通常の1.5倍。

 矢の先は、通常の5倍の大きさである。

 更に、先端に鉛を仕組んで重くしているから、

速度は加速し、破壊力は倍増する。

( 運動エネルギー E=0、5×M×V×V)

 必殺の一撃であった。


 移香斎が空中にある五本の弓矢に気が向いた瞬間、

必殺の弓矢を渾身の力を振り絞り、骨まで砕けよと、

自信を持って打ち込んだ。

 金矢は、勝利を確信した。


「 何じゃ!」

 移香斎は、帯を素早く外すと左手で高速で振り回し、

五本とも見事にからめとったのである。

ゴオオツ バキッ

 そして、居合腰の構えで、右手で刀を突きだし、

特別性の弓矢を刀身に当てて、矢の軌道をそらして、

かわしたのであった。

 まともに受ければ、刀は折れる。

 うねって飛ぶので、かわすのも難しい。

 かすっても骨までやられる。

 何たる動体視力と集中力、剣技の冴え。

 もはや、神の領域。


 金矢は、茫然と立ち尽くした。

 弓使いとしての誇りは、ズタズタに砕かれた。

「さあ、やれよ。」

 ゆっくりと近づいて来た移香斎に、負けを認めた。

「 いいや、女を斬る刀は、持っておらん。

  それにじゃ・・・。」

「それになんじゃ。」

 途中で言葉を止めた移香斎に、金矢はいぶかった。

「 そなた、きれいな瞳をしておる。」

「やだねえ、何言ってんだい。早くしてよ。」

 女扱いされたのも珍しいが、

きれいだなんて生まれて初めて言われた。

 たとえ、それが弓使いとしてであっても、

物凄く嬉しかったのである。

 この男なら、斬られてもいいと思ってしまった。

「 承知。」

 熟した柿よりも顔が真っ赤になった金矢目掛けて、

移香斎の真剣が煌めいた。

スパッツ

 弓矢だけを真っ二つに斬り裂いたのであった。

「それでは、後ほど。」

 移香斎は、去って行った。

 その後ろ姿を不思議な感情で見送る金矢であった。


「 あと、三人。 」

 移香斎は、とても楽しみであった。

 忍びの中にも、あれほどの弓矢使いがおる、

心から感嘆していた。


 空には、心の臓の形に似た雲が浮かんでいた。






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