ユメちゃんとの邂逅
……………………………………………
「あの...身分証明書、学生証しか持ってないけど大丈夫ですか...?」
「はい!大丈夫ですよ!」
……………………………………………
「あと...ユメちゃんと会えるって、ホントですか...?」
「もちろん!ちゃんと会えますよ!それも時間制限なしに!」
原田さんが徐ろにタブレットを取り出した。そこにはユメちゃんがいた。
私たちに手を振っている。
『あいちゃん、ゆうみちゃん、待ってるよ!』
「ユメちゃんがわたしの名前呼んでくれたぁあ!」
ゆうみは少し興奮気味になった。
私は、苦笑いすることしか出来なかった。
これから、何が起こるのか分からなかったからだ。
暫くして、研究所に着いた。
ちょっと寂れた感じの、薄暗い研究所。
「さ、中へどうぞ。」
原田さんが案内してくれている。
ゆうみと二人、手を繋いで研究所の無機質な廊下を歩く。
後ろに2人の男性。ずっと気になるな。護衛か何かなのか。
「やぁ。初めまして。私の名前は黒田海輔。ここの研究所の長をしているものだ。君達はユメちゃんに逢いに来た、違いないね?」
「はい!そうです!!!」
ゆうみが食い気味に応える。本当に合っているのか、これで...
「よし、じゃあ身分証を出してこの書面にサインしてくれるかな。そして印鑑を押してくれたらすぐにでもユメちゃんに逢えるよ。」
「わかりました!!」
またしてもゆうみが食い気味に答える。
書類を見たけれど、学校で習ってない漢字ばかりで読めなかった...。
「あいちゃん!早くサインしよー!」
ゆうみに押されるがまま、そのままサインして印鑑も押してしまった。
「サインと印鑑ありがとう。これからユメちゃんに逢う手続きを進めるよ。まずはそこのベッドに二人とも横になってくれるかな。」
言われるがまま横になった。すると、後ろで待機していた男性ふたりが素早く手足を縛りつけてきた。
「ちょっと待って!こんなの聞いてない!」
「書面に書いてあるじゃないか。大丈夫だよ。何も怖いことはないからね。」
そう言って、黒田さんは私達の腕に注射を打った。
気がついたら、いつものユメちゃんの部屋にいた。
ゆうみも隣にいる。
「ここまで...来ちゃったんだね。」
ユメちゃんは暗い顔で言う。
「何がどうなってるの?」
私は興奮気味のゆうみを抑えて聞いた。
「私からは詳しく言えないけど...もう、こうなると元の世界に戻れないんだ。」
「いいの!ゆうみ、あの家いやだ!もう殴られたくないの!」
「ふふふ、そっか。そこのキミは...?どうなの...?」
ユメちゃんがゆうみから私に目を向けた。
「えっと...まだ頭の整理がついてなくて...」
「そうだよね。私の部屋、自由にくつろいでいいから、落ち着いて整理できたらなって思うよ。」
「ありがとう、ございます...」
見覚えのあるソファに座って考えた。
私はよく分からない書面にサインして、印鑑を押して、それから...それから...?どうなったんだっけ...?
なんだか、頭がぼんやりとしてきた。
「大丈夫...?水、飲む?」
ユメちゃんが声を掛けてくれた。
憧れの人が目の前にいるのに全く感動できない自分がいる。
「すみません、大丈夫です。思い出そうとすると頭がぐらぐらして...」
「そうよね...でも安心して、ここは何も危険がない場所。永遠が認められる唯一の安全な場所なの。いわばシェルターね。だから、大丈夫だよ。」
そう言ってユメちゃんが抱きしめてくれた。
涙が出てきた。
もう、両親の罵声も、毎月3000円の生活もしなくていいんだ。制服が汚くて虐められることもないんだ。そう思うと心から安心できた。
「ねぇ、貴方たちの名前は?」
「なかむらゆうみです!」
「華川愛です。」
2人揃って名前を応えた。
「じゃあ、ユウミちゃんとアイちゃんね。よろしくね。」
「私、ずっとここで一人ぼっちだったの。だから、ふたりが来てくれてすっごくうれしい!これから、仲良くしてね!」
ユメちゃんはとびきりの笑顔で出迎えてくれた。
「ここではね、好きなお洋服も着れるし、好きな見た目になれるんだよ。ユメがここでの暮らしを案内してあげる。きっと、2人の部屋がどこかにあるはず。」
そう言って、ユメちゃんは歩いていった。私達もそれについて行った。
「あ!ここだね!新しく追加されてる!青と赤色の部屋!ここがアイちゃんとユウミちゃんのお部屋だね!相部屋なんだねぇ!」
ユウミと顔を見合せて、にやっとわらった。
私たちは、ずっといっしょだもの。
「この鏡。これでね、なりたい自分になれるようにイメージして目を閉じると...ほら!好きな服着れるし、髪型も変えられるんだ!」
鏡を見つめて、目を閉じてみた。私はずっとインナーカラーを入れてる女の子に憧れてた。それで、ゆうみとお揃いの赤いワンピースで...
『ポンッ』
音がした。目を開けると、ユウミとお揃いのワンピースを着たインナーカラーの私がいた。ユウミの頬には絆創膏が沢山貼ってあった。
「2人共できたね!おめでとう!あとは、いつも通り、この部屋で新しい生活を自由に過ごしていいんだよ。何してもいい。配信するも良し、見るもよし、寝るもよし、なんでもよし!じゃ、私は配信があるからお暇するね!」
そう言ってユメちゃんは爽快に去っていった。




