第9話 驚きに満ちた日
シュヴェートが、昨日起こった伏魔殿での落盤事故の後始末があると言ったことにより、クラス一同の今日の訓練は休みとなった。
さて、休みとな。そう、休み。勝ったな、ガハハw!寝よ。
いつもは訓練している時間だが、今日は休み。生唯はその余暇を余すこと無く睡眠に費やすことを決め込んだ。大きく伸びをしてベットにゆっくりと倒れ込み、そのまま足をスライドしてベットに乗る。タオルケットに包まり、蹲る。肌にはタオルケットの心地よい感触が伝わり、思わず笑みをこぼす。
やっぱタオルケットだよな。
タオルケットに全幅の信頼を置いて、深い眠りの中へと潜り込んで行こうとしたその時、生唯の部屋へと侵入者が現れた。
「生唯!いるんでしょ!出てきて!」
いつも嫌な時に来るよな……。
持ち前の大声で部屋の外から室内まで声を響かせる優絆。生唯も負けじと耳を塞ぐが、何故か脳内に直接響くような声で聞こえた。
こいつ直接脳内に……!?
流石に耐えきれなかった生唯が観念して外に出ると、優絆が嫌にわざとらしい笑顔で、
「いやー、開けてくれてよかったよ。それでさ、ちょっと」
「結構です。」
嫌な予感がしたのでドアを閉めようとすると、ドアに足を挟み込まれた。
「ちょっと、まだ話は終わってないんだけど。」
笑みを維持している優絆の額には青筋がややうっすらと立っており、生唯は堪らずドアから離れ、布団へと逃げ込んだ。
「やめろ!来るなぁ!」
布団で身を隠し蹲る生唯が叫んだ。しかし無常にも近づいてくる足音。生唯の心拍が増え、息も荒くなってきた。
「今すぐ出てきて?今のうちに出てきたら怒らないであげるけど?」
「ウゾダドンドコドーン!今まで同じような発言を何回も聞いてきたけど、一度だって本当だった試しがない!」
「私が嘘を吐くとでも?」
「ウン。」
「よし、折檻。」
優絆がタオルケットを剥ぎ取り、生唯の足を掴む。
「痛っ!やめろぉ!」
生唯が悲鳴を上げた。これでもかとシーツを強く掴み、引力に抗う。その様子は立場が違えば強姦――無論、違わなくても強姦だが――に値するほどのものであった。
「やめろぉ、死にたくない!」
必死の抵抗も虚しく、生唯は部屋の外へ連れていかれた。廊下を十数メートル引きずられた後、突然優絆が、
「お前を怒らないと約束したな?」
と話しかけた。
「そうだ優絆…。助けて…。」
「あれは嘘だ。」
「うあああああああ!!」
何時ぞやぶりのフックが深々と脇腹に食い込み、衝撃に悶える生唯。
「昨日言ったよね?明日休みになるから一緒に街へ遊びに行こうって。生存祝だって。」
「確かに言ってたけど拒否したでしょ。」
「幼馴染の誘いを断る人がどこにいるんですかね?」
未だ嘘くさい笑顔をキープしている優絆が生唯を見つめる。
「わかったよ。でもせめて財布だけは持ってこさせて。」
あわよくばそのまま逃げてしまおう。
良からぬ考えを抱いていた生唯。しかしそれすらも見透かすよう優絆が、
「私も一緒についていくから。」
と一言。
―――BADEND―――
生唯は心のなかで白旗を振り、自身の休日を放棄し投降した。
衛兵に話しかけ門から城下に出た生唯は、目前の大通りの人混みに溜め息を吐きながらも、燥ぎながら先行する優絆を追いかけた。
「ちょっと落ち着きなさいよと。逸れるよ。」
「だって久しぶりの休みだもん!今日は美味しいものをたくさん食べるぞ!」
美味しいもの、ね。それはいいね。
生唯もまだ見ぬ美食に期待をはせたが、優絆が思い出したように
「あと買い物!今日は色々見ちゃうぞ!」
と発した。
それは話が変わってくるなあ。
そう、優絆の買い物は大変なのだ、優柔不断過ぎて。
今日はいつ帰れるかな…
街通りを人を避けて進みながら遠い目をした生唯。すると視線の先に何やら不思議な幟を発見した。
「お、なんか名物って書いてあるよ。行ってみようよ。」
生唯が話しかけようとすると、優絆がもう既にアクセサリーの露店にいた。生唯が近づいてみると、
「うーん、こっちがいいかな?それともこっち?あっちのは結構色が好みなんだけど、デザインはこっちのほうがいいよね。」
と早速悩み始めている優絆の独り言が聞こえた。
「あ、生唯。生唯はどっちの方が良い?」
両手に指輪を持って優絆が尋ねた。右手には橄欖石のような宝石が施されたシルバーリング、左手には紫水晶のような宝石が鎮座する真鍮のリングがあった。
「うーん、どっち、ね。」
含みのある言い方をした生唯を、不思議そうな顔をして見つめる優絆。
「強いて言うなら右のリングかな。強いて言うならね。」
「強いて言うならって、一体どういうこと?」
少し語調を強めながら問いただす優絆に、気にせず並んだ商品を眺める生唯。暫くして、一つのリングを手に取った。
「これだね。優絆って確か十一月生まれだったから、これが誕生石だったはず。色のイメージもいい感じに優絆にあってるし。」
手に取ったリングを優絆に見せた。そこにはブルートパーズのシルバーリングがあった。
「ふーん、私の誕生石ってコレなんだ。確かにいいかも!ありがとう。」
どうやら優絆は気に入ったようで、指輪を持ちながら少し含羞んだ。
「じゃあ買ってくる!ちょっと待ってて。」
そう言い残し、少し先の女店主の方へ走っていった。
「お二人さん、おアツいねぇ。」
露店の店主がニヤニヤと笑いながら生唯に話しかけた。
「いやいや、ただの幼馴染ですよ。」
優絆を見ながら答えた。
「ふぅーん、そうかいそうかい。まあそういうことにしておいてあげるよ。」
「いや、本当にそんなんじゃないですって。」
「まあ、あっちはどう思ってるか分からんよ。」
「いや、彼女も僕と同じ思いだと思いますよ、多分。」
「まあまあ、俺ん時も最初はそうだと思ってたぜ。」
男店主が今まさに会計をしている女店主の方を見た。
「あそこにいらっしゃるのが旦那さんのお嫁さんですか。」
「そうだい。彼女は幼馴染だったが、若い頃に告白されてな。最初は冗談だと思ってたが、だんだん勢いを増して、最終的には襲われちまった。」
「襲われたんですか!?それはすごいですね。」
「まあ、あの時は枯れるかと思ったよ。」
「はは、本当ですか。大変でしたでしょう。」
少し遠い目をした男店主に、生唯は笑って応えた。少しの静寂の後、男店主が言った。
「まあ、色々あったんだよな。結局は成り行きだよ、成り行き。」
「成り行き、ですか。」
生唯は少し首を傾げ、喉仏を抑えた。喉仏を抑えるのは生唯が考えるときの癖である。
「まあ、要するに思わせぶりも鈍感なのも良くないって事だ。」
「思わせぶりでも鈍感でもないと思うんですがねぇ。」
生唯の発言に、男店主は苦笑した。その後は他愛もない世間話をして優絆の会計を待っていた。
生唯と男店主が話していた時、優絆と女店主もまた話し合っていた。
「あら、仲がいいのね。」
「まあ、幼馴染ですから。」
「ほんとにそう思ってるのかしら?」
ニヤケながら女店主は尋ねた。
「ほ、ほんとですって!なんですかもう!」
少したどたどしく返答した優絆。その様子に目を細め、優絆に更に告げる女店主。
「もしそうなら、早めにアタックしないと誰かに持っていかれちゃうわよ。」
「なっ、なんですか、アタックって!そんなのよく分かんないですよ!ないです!」
先程よりも慌てた様子で叫んだ優絆。
「オバサンが彼にピッタリな物を選んであげようか?」
「え、あっ、それは……。」
確かに、これは生唯の生存祝いだから!決して何か特別な感情が介するものでないから!
脳内で生唯へのプレゼントの理由を正当化した優絆は、少し下を向き、耳を赤くしながら弱々しく呟いた。
「お願い……します……。」
女店主は再び目を細めながら、
「任せんしゃい、いいのを選んであげるよ。」
と力強く答えた。
「随分長かったね、何かあったの?」
待ちぼうけしていた生唯が優絆に尋ねた。
「ちょっとサイズの調節に悩んでね、ごめんごめん。」
ふと優絆の左手を見ると、先程よりもピッタリと小指にフィットしているリングがあった。
「結構似合ってるね、いいじゃん。」
「そ、そう?ありがとう!」
少しモジモジしながらも元気に礼を言う優絆。生唯は少し首を傾げたが、気にせず話を続けた。
「ていうか、さっき面白い幟見つけたから見に行きたいな。」
「うん、良いよ。あ、でもちょっと待って。」
優絆がそっとポケットからあるものを取り出した。
「これ、生唯の生存祝いに!」
ふと見ると、美しい宝石のネックレスだと分かった。宝石は日光を浴び柔らかく青白い光を反射し、乳白色に輝いていた。
「おお、ありがとう。」
ネックレスを首につけ、近くにあった姿見を覗いて見た。
「結構似合ってる、かも?」
「大丈夫!女店主さんにも手伝ってもらったから。」
あー、だから長かったんか。というかこの宝石、どっかで見たことが…。
じっと鏡を見つめる生唯に優絆が尋ねた。
「やっぱ気に入らなかった?」
「そういうわけじゃないけど、ただなんか見たことあるような宝石だなって。」
生唯の発言を聞いた優絆が、思い出したように話し始めた。
「そういえば、月の力がどうのこうのって。」
「ああ、月長石みたいな感じかな。」
「月長石、なんかすごそう。」
もう一度ネックレスを見る。結構大きく、しかも光沢もつややかであった。
結構高そうだけど…大丈夫かね?
疑問が浮かんだ生唯は尋ねた。
「それより、お金は大丈夫なの?払おうか?」
「いや、大丈夫。ギリギリね。」
「でもこの後ご飯とか食べないの?」
「あっ……。」
後先考えずにプレゼントを買ってしまった優絆は、少し考え込んでからか細い声で話した。
「ま、まぁ。ダイエット中ですし……。」
「愚かだなぁ、そうに決まってる。まあ奢りましょう。」
「おお!やったー!」
そんなこんなで平和なやり取りを交わし、生唯と優絆は先程から生唯の気になっている幟の場所へと向かった。
「おぉ、名物料理だって。」
オシャンティーな雰囲気が漂う木造のレストラン。入口付近にはテラス席があり、何人かが大きなソーセージを肴にビールを嗜んでいる。今日ぐらいのいい天気にはぴったりだろう。店の中は何やら賑やかで、何かしらのイベントが行われているようだ。
「ブラートブルストだって。美味しそう。」
生唯のお腹が疼くように鳴った。
「ここにする?」
優絆に尋ねた。
「うん、いいね!」
生唯と同様に空腹で、もう既に涎が垂れそうな優絆が激しく首肯した。入店すると、スパイスと肉の香しさが生唯らの鼻腔をくすぐり、脳に食欲を掻き立てた。店の奥ではキッチンが見えるようになっており、ソーセージの彈ける音が耳に幸福をもたらした。席に座った生唯と優絆はメニューを眺め、注文を済ませた。
「結構迷っちゃったけど、やっぱおすすめを選んでおけば間違いないよね。」
「まあ、そうでしょう。」
メニューの多さに迷った二人だった。
「お、なんか大食いバトルしてるみたいだよ。」
店の奥を見た優絆が生唯に呼びかけた。
「ほら、二人が戦ってる!大きな男の人と、後もう一人は………!?」
選手を見ていた優絆が、鳩が豆鉄砲を食らったように言葉をつまらせた。
「ねぇ、どうしたの?急に機能を停止して。」
生唯が呼びかけるも優絆は反応しない。不審に思って生唯もそちらの方を見た。
「あっちに何が……っはっ!?」
生唯も呆気に取られた視線の先には、熱々のソーセージホットドックを爆速で食べる理慈の姿があった。先に我を取り戻した優絆は未だ固まる生唯に話しかけた。
「う、うん。そういう趣味だってあるんだってことだよ。話しかけないであげよう。」
「そ、そうだね。」
理慈に気づかれないよう、ゆっくりと視線を戻した。しかし、両者ともに目を合わせられずにいた。しかし、気まずい空気を打ち破るように料理が届いた。頼んだのは名物らしいニルベルガーソーセージの12本セット、プレッツェルにポテトスープ。
「美味しそう…。」
「そうだね…。」
空腹の二人は料理をまじまじと見て、思わずして息を呑んだ。二人はまず、湯気が立ち上るソーセージをフォークで刺し、そのまま口へと運んだ。噛んだ瞬間、溢れる肉汁の暴力。噛めば噛むほど粗挽きの豚肉が口の中で存在感を増し、芳しいハーブの香りが鼻を突き抜ける。ほのかに香る柑橘のような香りが肉の脂っこさを軽減させ、何なら清々しさすら感じさせる。
「うっま…。」
「おっ…ほふ…。」
熱さと美味しさで語彙力を失った二人はパンと付け合せのポテトサラダとともに再び一齧り。ポテトの甘みとまろやかさに包まれ、ソーセージのスパイスのパンチが和らげられ、パンとのベストマッチを披露する。マスタードをふんだんに付け、食べる二人。今度はマスタードのスパイシー感と酸味が肉の味を引き立て、更に食事の手を加速させる。二人は途中から一言の会話もなく、スープの最後の一口まで無心で食事を続けた。
「「ご馳走様でした。」」
ほぼ同時に食事を終えた二人。テーブルの上には先程までの食品が綺麗さっぱり無くなっていた。先に口を開いたのは生唯だった。
「いや〜、美味しかった。」
「そうだね。」
「じゃあ、出ようか。」
「うん。」
席を立ち、会計を済ませようとカウンターへ向かったその時、店の奥から歓声が聞こえた。
そういえば大食いしてたんだっけ。委員長はどうしたんだろうか。
ふと奥に目を向けた二人。またしても驚愕した。
「大食いバトル!勝者は飛び入り参戦の人知れぬ女王!サチカ・ワタナベ!」
「「マジか……。」」
なんと如何にも大食漢そうな男とダブルスコア程の差をつけての圧勝。鳴り響く歓声に答えていた理慈であった。
「とりあえず、祝う?」
優絆が尋ねた。生唯は少し呆気にとられながらも、
「そうだね。」
と返した。もう一度理慈の方を見て、拍手を贈る二人。その時歓声や拍手に応えるために辺りを見渡した理慈と目が合う二人。
「え。」
呆然とした理慈。二人はすかさず
「「ブラボー!」」
と叫びながら会計を済ませて店をあとにした。
「待っ、待ってください!お二人とも!」
逃げるように退店した生唯と優絆を追いかけるように、理慈が走って追ってきた。思わず生唯達も進む足が速くなり、理慈が更に動揺して
「ちょっ、本当にっ、待って…。早いぃっ…。」
と弱々しい声を上げた。流石に気が引けた二人は立ち止まり、理慈の到着を待った。まもなくして追いついた理慈は息を切らしながら、
「はぁ、はぁ…。やっと追いつきました…。どうして二人とも逃げるんですかぁ。」
と目を潤ませて話した。
「いや、人に言えない趣味なのかなって思ってねぇ…。」
「うん、話しかけないであげようと…。」
「二人して、立ち止まってって言ったじゃないですか!」
耳を赤く染め、理慈が叫んだ。
恥ずかしいんだろうけど、流石にいじり過ぎかね。
生唯は理慈に向き直って、一言告げた。
「誰にだってそういう趣味があるよ!じゃ!」
振り返って立ち去ろうとする生唯。理慈はすかさず
「待っ、待てぇぇ!」
と叫び、一気に生唯の手を引いた。いきなり手を引かれた生唯は理慈とぶつかり、そのまま道に倒れた。生唯は理慈の上に倒れないよう手をついたが、手を引かれていたせいで理慈の腕を抑え込むような体勢になってしまった。
ちょっt、体勢がっ!これはまずい!端から見たら道の往来で女性を押し倒す犯罪者じゃん!
生唯がすぐ手をどかそうとした時、横から優絆が
「大丈夫?ほら、手を取って。」
と助けを出した。手を取って立ち上がった生唯は理慈に対し手を出しつつ
「ごめん、大丈夫?でもいきなり手を引かれたからその点に関しては理解してね?」
と弁解をした。理慈は手をしきりに動かしながら
「だ、大丈夫ですぅ。」
とたどたどしく答えた。
大丈夫かな?まあ大丈夫か。
そう考えた生唯は、
「とりあえず話を聞いてほしいんでしょ?僕達も食事したばっかだから、歩きながら話す?」
と提案をした。
「うん、そうしよう!」
と元気に答える優絆。
「委員長はそれで大丈夫?」
「は、はい、そうしましょう。」
どうやら平静心を取り戻した理慈も了承したので、一同は大通りを下って行った。幾ばくか進んだ所で、優絆が尋ねた。
「で、いいんちょ。さっきは大食いバトルに出てたけど、趣味なの?」
「いきなりぶち込むなぁ。さすが優絆。さす優絆」
まあ、ゆっくり経緯を話してよ。
「ねぇ生唯、心の声とセリフが入れ替わってるよ。逆だよ、逆。」
「スマソ。」
「えっと〜、話していいですか?」
目を白黒させながら問いかけた理慈に、生唯は頷く。
「まず、大食いは私の趣味なんです…。」
ほう、見た目に反してすごいなぁ。
「小さい頃から疲れたときや休みの日にストレス発散で食べてたら、だんだん量が増えてきてしまって、ただ食べるのだと少しもったいないから大食いに挑戦してみたんです。」
「へぇ〜。どのくらいまで食べられるの?」
優絆が尋ねた。
「多くて五キロくらいのものを食べたことがあります。」
生唯らを襲う本日n度目の驚愕。驚愕に慣れてきてしまって硬直から解かれるのも早くなった生唯が、すかさずツッコミを入れた。
「五って。食べ盛りにもほどがありますやん!」
すかさず両側から脇腹にチョップを入れられた。
「続けます。元の世界でははしたないと思ってあまり活動できなかったんですが、この異世界なら誰にも見られないだろうと思って、今日やろうと思ったんです。昨日のことも有りましたし、生唯さんにも悪いことをしてしまったと思って…。」
ふと生唯を見る理慈。ぽかんと頭に疑問符を浮かべている生唯は
「え?なんかあったっけ?」
とあっけらかんに答えた。
「もう、生唯って馬鹿だね。ねえ、委員長。もう行きましょ。」
「えっ、あっ、でもまだ謝罪が。」
「いいっていいって!」
優絆が理慈のそばに立ち、理慈の手を取って先を行く。
いいですね、百合。
脳内で不純なことを考えながら、生唯もその後を追っていった。
「さて、今日も疲れたな。」
部屋の中で一人呟いた生唯。一人でいる時は脳内の言葉を口に出すのが癖である。
「昨日眠くてできなかったこれからの身の振り方を考えなくっちゃね。」
自身の力、その活用法。他者の蘇生ができるのであれば軍事利用。できないなら不死身の戦士か人体実験の被検体。バレたらそんな未来しか無い。
「もう駄目だぁ、おしまいだぁ。殺される。…っははっw」
自分で言っておかしくなったのか、苦笑いした。
現状自身にしかバフを掛けられないから、その能力のみだと思わせればぎり平気かな。それとも…。
ふと左手を見た。人差し指にはステータス確認用の指輪が嵌めてある。
コイツ、能力が使用できないこととレベルアップしたこととかしか教えてくれないんだけど。無能かな?
試しに、指輪に【生きる】を発動させてみた。指輪は淡く光ったが、やはりエラーメッセージを吐いた。
「無理かぁ、やっぱ。」
窓の外をみて呟いた。
「よし、決めた。ひとまずはレベル上げだ。」
今後の方針を決めた生唯は、とりあえず寝ることにした。




