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異世界に居ようが僕は生きる  作者: 塗りたくる飲む焼きそばフラペチーノ
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第10話 能力を”生か”そう

休みが終わった次の日、少しやつれた顔のシュヴェートとトレーネが現れた。

「皆さん、今日からは週に二回、自身の能力を強化する訓練を開始します。」

トレーネが呼びかけた。

ほう、能力の強化か。いいね、できればもっといい感じに強化したいよね。今考えてる構想を実現するには能力の強化が必須だもんね。

また右手で喉仏から顎までを抑えて考え込む生唯。その時、理慈が手を挙げた。

「質問よろしいでしょうか?」

「はい、どうぞ。」

「能力の強化っていうのは、どのように行われるのでしょうか。」

質問に対し、少し考え込むトレーネ。すると、シュヴェートが隣から問いかけた。

「そうだな、まず、お前たちは大砲の使い方が分かるか?」

「いえ、わかりません。」

「まあ、大体の奴らがそうだろう。だから大砲について知るところから始めなければいけない。大砲について理解が深まれば、危険性や利便性、活用法を思いつくだろう。能力への理解は手っ取り早い強化方法だ。」

シュヴェートのわかりやすい解説に、クラス一同納得した。

前からうっすら思ってたけど、シュヴェートってやっぱ頭いいよね?

シュヴェートの技量に感心していた所、シュヴェートが続けて言った。

「まあ、威力や使用時間を上げるなら、レベルアップや反復練習で魔力量を上げなければいけないがな。」

それって…。

「ああ、訓練だ。」

クラス一同の心を見透かすようにシュヴェートが言った。

「ちょっと、私の仕事を取らないでくださいよ。」

隣のトレーネが頬を膨らませながらシュヴェートをどついた。

「グフッ、ちょっと待って、力強いんだから君。」

生唯が意外にも打たれ弱いシュヴェートにギャップ萌えを感じている最中、トレーネが再び話し始めた。

「まあ、ここでは訓練をできないので外へ行きましょう。」

一同は講堂を後にした。













「では、実際に能力を使ってみましょう。」

訓練場についたらトレーネが呼びかけた。あたりには武器や道具、妖魔、怪我人などあまりにも多種多様な物体が存在していた。

「能力は何が対象になるかわからないので、ここにはいろいろな物品があります。まず、能力を使うには能力名を唱え、ポワっとしてください。あ、ちなみに発現した力はあくまで解釈の一形態なので、まだ派生の余地があります。また、一度発現した能力は別途で技名をつけることもでき、つけた技名を唱えるとそれに紐づけた能力が発動します。おそらく、個人の意識で能力が固定されるからだと考えられていますね。」

へー、そうなのか。それよりちょっと待って、ん?ポワッと…?

「とりあえずポワッとしたら、力がファーと抜けてく感覚が発生すると思います。そうすれば何かしらが発生しているということです。もし起こらないのであればおそらく対象の問題です。そうなったらここにおいてある様々な道具を手に持ったり近づいたりして発動してみてください。」

何かすっごくふわふわした説明だなぁ。

生唯と同様に思ったのだろうか、シュヴェートが

「おいおい、随分曖昧な表現だな。とりあえず、体に力を入れ少し熱を持った感覚の後、気が抜けるように感じたら、だろう。」

おお、完璧な言い換えだ。国語得意なのかな?

「能力によっては対象を細かく区切ったり大きくしたりすることもできますが、大体の場合は魔力が足りずに発動しません。今のうちは暴走の恐れもあるのでやめておきましょう。」

なるほどね、区切らないとできないのか。

「では、始めましょう。」

トレーネの合図とともに各自が距離を取りつつ能力の実証を開始した。

さて、まあ僕の能力はなんて誤魔化すべきか。無難にバフかな。

ふと手に取った、刃の潰れたナイフに能力をかけてみる。やはり、エラーが出てしまった。

じゃあ、刃先のほんの少しの部分にかけてみたらどうかな?

少し探究心が芽生えた生唯は、近くに落ちていた木の枝を左手に取り、右手のナイフを強化せずに当てた。ナイフは木の枝に当たったが、何十回もギコギコと引いた所で枝は切れない。

まあ当たり前、じゃあ刃先のほんとに先端。一センチかける一ミリにも満たない面積ならどうかな。

少し意識を集中させ、ナイフの先端まで体の輪郭を伸ばすイメージを想像した。まるで自身の体の一部のように、じっくりと感覚を伸ばしていった。

指の先、ほんの少しの部分を想像する感じ…。

限界まで意識した刃先に力を込め、

「【生きる】。」

と優しく唱えた。すると、今度はエラーが出ずに、ナイフの先がほのかに光った。そのまま棒をナイフで優しく撫でると、スーッと斜めに入っていき、枝は音もなく切断された。断面は驚くほど滑らかで、まるで切断されていないかのように組織の損傷もなく、枝をくっつけるともとと同じようにくっついた。

「くっついた?なぜ?」

疑問が湧いた生唯は、今一度その棒を振ってみる。棒はくっついたまま、一本としての性質を顕した。首に手を当てた生唯は、同じナイフで生唯が持っていた鉛弾を一つ取り出し、さっきと同様にナイフを当てた。今度は感触こそあったものの、スーッと真っ二つに切ることができた。切断面はやはり滑らかで銃弾の表面よりも光沢があり、くっつけるともとに戻った。

「ほうほう…。」

思わず呟いた。もう二つ実験をすることを思いついた生唯は、近くにあったナイフよりも丈夫な剣を取り、しゃがんだ。足元には雑草が生えており、生唯はそれを能力を使わずに切った。もちろん、刃の潰れたナイフでは切ることはできず、半ばちぎれる形でようやく切り離すことができた。次に能力を発動させて切ると、触れるやいなやはらりと地に落ち、断面はやはり滑らかであった。落ちた草の上部を下部にくっつけて馴染ませてみると、元の草に戻った。

「やっぱそうか…。」

腑に落ちた生唯は、もう一つの実験を始める。持ってきたいかにも丈夫そうな剣を地面にそっと置き、再びナイフを握る。力を込めたナイフは、刃先を幽かに光らせながら剣の刀身に当てられたが、強く弾かれる感触が生唯の腕にかかった。

「ぐッ…!」

ナイフに全体重をかけて思わず声が漏れた。瞬間、ナイフにヒビが入り、砕け散る。

「うぉッ!びっくりした!」

破片が当たりそうになり驚いた生唯だが、得られた実験の結果には満足していた。

「あーね、納得した。」

つまりは、この【生きる】という能力でできるバフはあくまで能力に掛かった対象の最大限の潜在能力を引き出すもので、対象の力を遥かに超えた強化は不可能ってことか。だから木の枝や草は簡単に切れて、鉛は枝よりは硬いけど剣の鋼鉄より柔いから切れる。ナイフは剣よりも薄っぺらだし硬度も無いから砕けた。そこまでは理解できる。

「そこからだよな…。」

首に手を当て、深く俯く。

切れるまでは分かる。問題はその次なんだよなぁ…。なんでくっついた?そこに関しては意味がわからない。強化のレベルがオーヴァークロックじゃなくてナ◯ック星の最長老並なのはいいけど、ていうかそれでも十分強いけど、くっつくってなんだ?

先ほど切った草を見る。繋ぎ目は全く無く、まるで最初から切れていないように見える。

うーん、ダイヤモンドは砕けないってこと?

少し考えた所、ある出来事を思い出す。

そういえば、僕が蘇って組成される時は砕け散った僕の細胞片、しかも千切れて血に染まった衣服まで、何から何までつながって元通りに戻っていた。ということは、もしかして生命力が与えられて治ったってこと?何だそりゃ…。ていうか生き返ることこそ可笑しいけどね。

深く考え込む生唯のもとに、優絆がニコニコと笑いながら忍び足で近づいた。

「わっ!」

「うぉっと!?」

「へへっ、驚いた?」

何だコイツ…?

本気で困惑する生唯に優絆が話した。

「いや〜、なんか端のほうでずーっとコソコソやってるから何してんのかなって思って。なんとなく驚かせたくなってさ。」

「は、はぁ。」

苦い顔をする生唯に優絆は

「ごめんって。許して?」

と上目遣いで許しを請うた。生唯は告げた。

オレァクサムヲ(俺は貴様を)ムッコロス!(ぶっ殺す!)

「オンドゥルしないでね。」

「まあ、後で焼き土下座してもらうとして、そっちはなんかいい能力が使えたの?」

「今なんか聞き逃してはいけないことを言っていたような…。まあ、能力は出たよ!」

元気に答えた優絆。

「見せて?」

「いいよ。そのかわりそっちも見せてね。」

「おけ。」

そう返事すると、優絆は腕を生唯に向かって伸ばし、掌を生唯に向けた。少しの時間の後、優絆の手から糸のようなものが射出され、生唯の腰に巻き付く。

「うおっ!びっくりした。なにこれ。」

「ふふーん。聞いて驚け。」

優絆が溜めて言い放った。

「糸だよ!」

「糸?」

「うん、糸。今のところ一本の最大は十メートル位。一応トレーネさんに聞いてみて試してみたけど、強度は長さによってピアノ線からタコ糸くらい、あとは魔力量によっても変わるっぽい。しかも、何本か出すこともできる!でも、今の限界が十メートルだから二本にしたら両方とも五メートル位で伸びなくなっちゃったんだけどね。」

「へぇー!で、どんな性質があるの?」

「性質は魔力の量によって変えられるっぽくて、今のところ硬い線と粘着質の線は出来た。ものを引き寄せることもできるみたい。」

「ほう、それでそれで、他にはある?」

「聞いて驚くことなかれ。何と、通信ができます!」

「ほう、通信とな。それは一体全体どうやって?」

「糸電話みたいに、糸で繋がれた二人が微小の魔力を糸に流して発音すると、どんなに小さな声で話してもその二人には通じます!」

「強!すごいね。」

「へへん!そうでしょ?」

「それにしても優絆の能力って【繋ぐ】でしょ。」

「そうだね。それがどうしたの?」

「なんでそうなったのかなって?」

「あぁ、私もわかんない。けど、繋ぐってことはなんか相手と私を結びつける事なのかなって思ったの。そうして能力を発動させたらなんか出てきたの。」

「ふーん。」

少し首を傾げた生唯。脳に【生きる】を発動させ考えてみると、ひとつの結論が浮かんだ。

「あ、だからこの能力なのか。」

「どうしたの?」

「いやー、自分と相手を繋ぐって言うのは、普通に考えたら物理的に繋ぐ糸だけど、優絆にとっては話し合うことも人を繋ぐ方法だと捉えてるからかなって。」

「ああ、たしかにたしかに!」

大きく頷く優絆。腑に落ちて満足したのか、生唯に尋ねた。

「で、生唯の能力は?」

先程まで自信に満ちていた優絆は、少しにやけたように生唯の瞳孔を覗く。

「ああ、なんとも言えないんだけど、多分対象を強化する能力みたい。」

「へぇ!やってみてよ!」

目を輝かせる優絆に、仕方なくナイフを持ってくる生唯。

「ほら、いくよ。よーくナイフの先端を見ててね。」

「うん。」

力を込めたナイフは、先端のごく僅かを輝かせた。

「うーん、ちょっと光ってる?」

「うん、これくらいの面積でしか強化はできないけど、その分ね。」

先程と同様に近くに落ちていた枝を左手に、ナイフで撫ぜる。

「ほーら、生ハムみたいにスーッと。」

「ほんとだ!すっごく薄く切れてるね!」

「真っ直ぐも絶てるよ。」

生唯は木の枝を地面に置き、ナイフで切り分ける。

「凄ーい!なんか豆腐みたいにスパスパいくね!」

「で、ここからが謎なんだけど……。」

そういうと、生唯は枝をくっつけて優絆に見せた。枝はやはり、元に戻っている。

「えっ!元に戻ってる!?マジック?」

「いや、そうじゃないんだけども……。」

頭を掻いて苦く笑う生唯に、優絆が応えた。

「でも、生唯の能力って【生きる】でしょ?どうしてかな。強化してるって、どっちかって言うと生きるより活かす感じだよね。あと、元通りにするってのも、生きるよりかは再生みたいな……。まあ、再生って言葉にも生きるって字は入ってるけどね。」

軽く聞き流しかけた生唯は、ふと優絆の発言に何かを感じた。

生きる、生かす、そして再生……?なるほどね、理解した。

腑に落ちた生唯は、静かに笑った。

「え、なんで笑ってるの?怖。」

「あ、いや、今何か閃けた気がして。ありがとう、優絆。」

「え、まあお役に立てたなら……。」

困惑しながら、また若干生唯に引きながら答えた優絆。生唯は気にせず首に手を当て、脳に【生きる】を掛けて思考し始めた。

なるほど、僕はナイフを使っている時にナイフの能力を『生かす』感覚で能力を発動させている。でも生かすっていうことは、能力を最大限活用するという意味の他に、生命を繋ぐ、または再生するという意味も含まれているんじゃなかろうか。だからナイフから棒や草の切断面にまで能力が及んで、くっつけられたんじゃ。さっきくっつけようとした時、能力は使っていなかった。考えられるとしたらこれしかないよね。

繰り返し棒を手に取り、ナイフで切る。しかし、今度は活用するという意味合いの意志を強く持ちながら切った。するとどうだろう、今度はくっつくことなく二つに切り分けられた。

「やっぱか。トレーネも意識って言ってたもんね。」

一人納得した生唯。しかし、まだ傍らにいた優絆が問うた。

「さっきから何してたの?すっごく早口で、しかもいつもより早口でブツブツ言ってたけど。」

「さっき言ってなかったけど、実は体の部位を活性化させられるんだよね。これ、秘密ね。それで今考え事をしてたんだけど。能力について少し理解が深まったからブツブツ言ってたんだと思う。気にしないで。」

「へぇ。分かった。」

優絆は口にチャックをする振りをし、どこかへ去っていった。それからまもなく、トレーネが大声で全体に連絡した。

「皆さーん、今日は大まかに能力について知れたでしょうか?後でどんな能力が発現したか報告してくださいね!では、今日はここまでです。皆さん、昼食にしましょう。」

ほう、もうそんな時間か。じゃあご飯にするか。能力の使いすぎでMPも結構無いし頭も疲れた。糖分が欲しい。

少しヘロヘロした生唯は集合して昼食へと向かった。


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