13 ナンパとスカウトー1
「え~と…」
学校が休みの週末、綺麗な青空の下を歩きまわる。大きなビルが建ち並ぶ繁華街を。
「……どこだ」
目的の店に辿り着かない。ゲームショップがオープンしたらしいのだが見つけられないでいた。
電車を降りてから既に20分近くが経過。その間、ひたすら街をさまよっていた。
「あの、すみません」
「え?」
「ちょっと道を聞きたいんですけど…」
「キャーーッ! 痴漢よぉ!」
「……は?」
「誰か助けてぇぇぇっ!!」
仕方ないので近くにいた通行人に救いを求める。しかし声をかけた途端に女性は喚きながら逃走してしまった。
「そんな…」
どうやら不審者と勘違いされてしまったらしい。要件を告げる間もなく逃げられてしまった。
「あの、すみません」
「え?」
「ちょっと道を聞きたいんですけど…」
「キャーーッ! 引ったくりよぉ!」
「……は?」
「誰か助けてぇぇぇっ!!」
気を取り直して別の女性に接触する。けれどまたしても妙な疑惑を持たれて失敗。
「何なんだ、一体…」
そこまで怪しい出で立ちをしている意識は無い。ナイフでも持ち歩いているのなら話は別だが。
「あの、すみません」
「え?」
「ちょっと道を聞きたいんですけど…」
「キャーーッ! 道を尋ねる人よぉ!」
「おい」
「誰か助けてぇぇぇっ!!」
「何でだよっ!!」
三度目のチャレンジを決行すらがやはり失敗。意味不明な叫びと共に逃げられてしまった。
「くそっ…」
舌打ちをしながら再び歩き始める。交通量の多い道路を。
「ん?」
休憩がてら噴水のある広場へと移動。そこで妙な光景に遭遇した。チャラそうな男が女の子と大声で喋っている光景に。
「カップルか…」
場に相応しくデート中と予測。ただその動きがどことなく不自然。先程から何度も右に左にズレたりを繰り返していた。
「……あ」
観察を続けていると女の子の顔が視界に入ってくる。見覚えのある人物の表情が。
「やっべ…」
自分の記憶違いでなければ以前に従妹が自宅に連れて来ていた友人。泣かした上に追いかけ回してしまった中学生だった。
「な? ちょっとだけで良いからさ」
「で、でも…」
「どうしてダメなのさ」
「……そんな事を言われても」
顔を背けながらその場を立ち去る。その瞬間に2人の会話が意識の中に侵入してきた。
「ナンパかな…」
あまり友好な関係では無い様子。素振りから言葉から、その全てがぎこちなかった。
「だから連絡先教えてくれるだけで良いんだって。別にこの後どっか行こうって言ってる訳じゃないんだからさ」
「け、けどお母さんに知らない人には教えちゃダメって言われてるし…」
「そんな事言ってたら誰とも仲良くなれないじゃん。君だって恋人ぐらい欲しいでしょ?」
「……そういうのはいらないです。私、まだ中学生になったばかりなので」
「今時、中学生で彼氏なしって恥ずかしいよ? 友達に笑われるかも」
男が強気な口調で語りかけている。一方的な理屈を振りかざしながら。
「という事で良いだろ?」
「い、嫌です。困ります」
「どうしてさ。俺の事、業者か何かと疑ってんの?」
「……そういう訳ではないですが」
「だったら良いじゃん。連絡先を交換するぐらい」
「えぇ…」
そのやり取りは腕を掴む事態にまで発展。同時に先程の女性達が異常に怯えていた理由に納得した。
「う~ん…」
助けてあげたい気もするが難しい。自分はナンパ男以上に嫌悪感を持たれている人間なので。
「一応、すみれの奴に連絡しとこうかな」
「……誰、お前」
「え?」
ポケットからスマホを取り出す。従妹にメッセージを送ろうとしたが男の方から声をかけられてしまった。
「しまった! 近寄りすぎたか!」
「な、何だよ! ケンカ売ってんのか!?」
「いや、別にどうもしないです。僕の事は無視して進めてください」
「はぁ?」
「君の妨害をするつもりはないので。ただ地面にお金が落ちてないか探してただけだから」
「え、え…」
「ボーイズアンビシャス。頑張って」
激励の言葉を残して後退る。サムズアップした手を見せつけながら。
「……あ」
「ん?」
「あ、あの…」
すぐにこの場からの離脱を開始。その瞬間、女の子が小さな言葉を発した。台詞と呼ぶには乏しすぎる声を。
「ちっ…」
トラブルは好きじゃないが見殺しも同じぐらい好ましくない。立ち去ろうとしていた思考を瞬時に拭い去った。
「くぉらぁっ!! 奈津紀!!」
「ひぃっ!?」
「こんな所にいやがったか。外で油を売ってやがって」
「え、え…」
「お前が無断外出したせいで俺が親父に叱られたんだからな。どうしてくれる!」
態度を翻して叫び始める。女の子の名前を呼び捨てにしながら。
「こっち来い!」
「痛っ!?」
「親父の元に引きずり出してやる」
「ちょ…」
「風呂掃除ぐらいやってから出掛けろや、このアンポンタン!」
そのまま手首を掴んで固定。強引に引き寄せた。
「お、おい…」
「ん? 君は友達か?」
「……は?」
「悪いけどまた今度誘ってやってくれ。コイツ、今日は用事あるから」
「いや、そうじゃなくて…」
案の定、男が呼び止めてくる。ぎこちない動作を付け加えて。
「実はコイツ、俺の弟なんだ」
「はっ!?」
「見た目は女に見えるけど下にアレもついてる」
「マ、マジかよ…」
「証拠が欲しいか? 見せてやってもいいけど君はトラウマとコンプレックスを同時に抱える羽目になるかも」
「もういいよ。向こうに行ってくれ!」
「お?」
退ける為に咄嗟に思い付いた嘘を連発。通用するかは不安だったが言い終わる前に彼は慌てた様子で走り去ってしまった。




