10 説教と文句ー1
「お~す」
「……ん」
「ちょ、ちょっとぉ!」
午前授業が終了した昼休み、学食に向かう為に廊下へと出る。そこで同じく教室から出てきた女子生徒が接近してきた。
「どうして無視すんのさ、コラ!」
「うっせ、話しかけてくんな」
「イジメ? イジメ? そういうの良くないよ?」
「いたたたたっ!? 暴力を振るってくるような輩に言われたくないわい!」
呼び掛けを無視してすぐ横を通過する。その瞬間に頬を強く引っ張られてしまった。
「何であたしから逃げるような真似すんの?」
「それはだな…」
「昼休みも放課後もすぐトンズラこくしさ。まともに取り合ってくれようとしないじゃん」
「だって仲良くしたくないもん」
「はぁ?」
ここ数日、話しかけてくる土乃から逃走。理由は彼女と必要以上に親しくしたくなかったから。
「ちょっと、それどういう意味よ」
「今言った通り。お前の側にいたくないんだってば」
「な、なんでさ。この前はあたしと仲直りしたくて謝りに来てくれたのに」
「いや、だって…」
彼女を避けているのは別に喧嘩をしたり嫌いになったからではない。一緒にいる現場を別の女子生徒に見られたら困るからだった。
「お前が自分で言ったんじゃないか。愛莉と連むのやめとけって」
「……言ったけど、それとあたしから逃げ出す事に何の関係があるわけさ」
「せっかくわざわざ距離を置いたのに他の女子と親しくしてたらマズいだろ。それだとただ単に他の人間に乗り換えただけになっちゃうし」
「あたしはそんなの全然気にしてないよ。周りの奴らにどう思われたって平気だもん」
「だれがお前の事を心配してるって言ったんだよっ、誰が!」
友人には性別の違いを理由に友達解消の件を説明してある。それなのに女子である土乃といたらその言い訳が不自然に。下手したら嫌いになったと勘違いされそうだった。
「というわけでお前とも仲良く出来ん。だからこれからは付きまとったりするのやめてくれ」
「やだ」
「な、なんでだよ」
「だってあたしがいなかったら水瀬くんが1人で孤立する事になるじゃん。さすがに可哀想かなと思って」
「余計なお世話だっ!」
ムキになって怒鳴り散らす。図星を指された事が悔しくて。
「さらばだ!」
「あっ!? 待て、コラ!」
「先生ーーっ、後ろの女子生徒が廊下を走ってます!」
「おめぇもだよっ!」
その場から駆け足で逃走。脅しの言葉を叫ぶも追跡者は問答無用で追いかけてきた。
「ハァッ、ハァッ……逃げ切ったか」
それから購買に寄って菓子パンを2つ購入する。土乃を振り切った事を確認すると立入禁止の屋上で過ごした。
「……あ」
「愛莉」
「どうも…」
完食後は1人で廊下をフラフラと歩く。途中、前からやって来る知り合いの女子生徒を発見。その胸の中には私物とは思えない複数のファイルが存在していた。
「頼まれ物?」
「はい。志田先生に持って来るようお願いされたので」
「相変わらず愛莉は真面目だなぁ。適当に理由つけて断れば良いのに」
「あはは……では私はこれで」
嫌味に対して苦笑いが返ってくる。軽く受け流されてしまった反応が。
「ちゃんと頑張ってるんだな…」
1人でやっていけるか不安だったけど。彼女は思っているよりずっとしっかりしているらしい。
まだ親しい友人は見つけられていないみたいだが毎日登校。当初の目的を貫いていた。
「まぁ、人の事ばかり考えてる場合じゃないんだけども」
自分なんてクラスに馴染めてすらいない。このままでは指摘された通り孤独な学生生活に一直線だった。




