9 積極的と消極的ー4
「おっす」
「あ、おはようございます」
翌日に早速行動に移る事に。朝の休み時間中、登校してきた愛莉に接触した。
「今日は体調どう? もう良くなった?」
「はい、おかげさまで。もうすっかり回復しました」
「そかそか、なら良かった」
彼女が鞄から取り出した教科書を机の中に仕舞っている。はにかんだ笑顔を浮かべながら。
「あとさ、昨日の事なんだけど…」
「はい?」
「土乃の奴にどうにか話は聞いてもらえたんだよ」
「そうですか」
「んで、謝ったら許してくれた。どことなく納得してない雰囲気はあったけど」
「……やっぱり怒ってたんですね」
「けど目的は果たせたから良いや。別にそこまで仲が良かった間柄ってわけでもないし」
「は、はぁ…」
放課後に起きた出来事を簡潔に話した。事実とは微妙にズレた情報を交えて。
「それと昨日アイツと一緒に学食行きたいって言ったけど多分それは無理。多分てかほぼ確実に」
「それは……とても残念です」
「そんでこれからは愛莉とも仲良く出来ない。こうしてお喋りしたり一緒に帰ったりとか」
「……え」
平静を装い穏やかに話を進める。予め考えておいた大胆な嘘を。
「突然ごめんな。こっちの都合でいきなりこんなワガママを言いだしたりして」
「あの、今のはどういう…」
「そのままの意味。これからは学食も1人で行くから」
「1人…」
「やっぱりさ、女と一緒にいると恥ずかしいんだよね。格好悪いっていうか。連むなら男が良いわ」
後頭部をポリポリと掻いた。動揺をごまかす為に。
「だから悪いんだけど愛莉も他の友達を見つけてくれよ。クラスには俺以外にも気が合う奴いるだろうしさ」
「ん…」
「あと1つ忠告しとくと、なるべくなら女子にしといた方が良いぜ。変な噂を立てられたら目立っちゃうだろ?」
「わ、私は誰かとお付き合いしたりとかそういうつもりは…」
「愛莉なら大丈夫だよ。俺と違って誰にでも優しく出来るんだし」
「……そんな事はないです」
相方の視線が床の方に移動。声質もだんだんと弱い物に変化していった。
「これもお互いの為だと思うんだ。そろそろ自立するタイミングかなって」
「……そうですね。確かに入学してから今までずっと水瀬くんに甘えてばかりいましたし」
「そんな事ないって。むしろ助けてもらってたのはこっちの方だから」
「いえ、私がいつも足を引っ張ってばかりいました」
「見てるの結構楽しかったよ。コンビニの中で狼狽えてる姿とか」
「うぇえ…」
自分には物事に冷静に対応する大人らしさが、彼女には失敗を恐れず突き進んでいく積極性が足りない。互いの長所が互いの弱点だった。だから側にいると頼ってしまう。自分には無い物を持っている友人に。
「また何かあったら気軽にメールでもしてくれよ。相談ならいつでも乗るし」
「ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです」
「どっちが先に新しい友達作れるか競争な。もし仲の良い奴を見つけたらそん時は教えてくれよ」
「はい、分かりました」
「んじゃあな」
用件を伝え終えた後は解散した。あくまでもクールな男子を装って。
「ん…」
これで良かったと思う。別に喧嘩別れした訳ではないし。
それぞれがやりたい道を進んでいけばいいだけ。成長とはそういう事なのだから。
ただ翌日に早くも後悔する出来事が発生する。病弱の友人は再び学校を欠席してしまった。




