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アルティメット エンド  作者: 齋音寺 里
第六章・大樹が護りし古の遺跡
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第九話・冥界に戻るには(3)

 気を取り直し――、ダフネは三つめの冥界に行く方法を話し始める。



『……そして~、最後の三つめなのだけれど~。これが一番簡単で、なんともお手軽な方法なのよぉ~』

「えっ? 今までの方法は、結構リスキーな感じだったのに?」



 ダフネの言う事に対し、胡散臭そうに言葉を返すリオン。

 それを聞いてもなお、ダフネは微笑みを絶やさない。



『……それはねぇ~。ジラソーレ島にある火山の中に~、()()()()()()()()のよ~』



 恐ろしい事を、にこにこ笑顔で口にするダフネ。


 その発言を聞いて、期待の眼差しで回答を待っていたフィトも。

 胡散臭そうに、ジト目を向けていたレオンも。

 どんな珍解答が来るのかと覚悟していたレオンでさえも、唖然とした表情で絶句する。


 この大精霊は一体、何を言っているのだろうか――?

 火山に飛び込むなど、もはや正気の沙汰ではない。人間は当然、怪物といえども自殺行為だ。



「あの~……、ダフネ様?」



 引きつった笑顔で右手を挙げ、担当教師に質問を投げかけるようにリオン。



『……なにかしら~?』

「火山に飛び込むって、冗談か何かですかねぇ?」

『……いいえ~、至って本気よ~?』



 変わらず、うふふふ~と、即答するダフネ。

 それを聞いて、リオンは再び絶句させられる。


 一方で、金縛りにかかったように動かなくなっているフィト。

 レオンが「おい、フィト? 大丈夫か?」と声をかけるも、全く反応がない。

 意識を呼び戻そうと、目の前で手の平をひらひらとチラつかせていると――。


 ようやくフィトは瞬きを思い出した。

 そして突然、壊れたロボットのように「だ、だだだだだだ……!」と、発し――



「ダフネさま!? 火山に飛び込んだら、私たちしんじゃうよ!? そんなに身体は頑丈じゃないよ!? ……あ。でもでも、レオンとリオンは怪物だから、マグマにも負けない不死身のボディを持ってるのかな……!? そしたら、私はどうやって入ったらいいのかな……!? マグマって、もしかしてお風呂みたいに潜れちゃうものなの……ぷしゅ――――」



 どうやら、フィトは思考力の限界がきたらしい。

 ぶっ飛び過ぎた話に頭が耐えられなかったようで、パニックを起こしてしまったようだ。

 思考回路がショートしたように、頭から白い煙が立ち込めている。



『……ちょ、フィトっちってば大丈夫!?』

『……ダフネ様! あまりフィトをからかわないで下さい! 可哀想です!』



 黙ってやりとりを聞いていたルルディとゼフィランサスは、さすがに好き放題のダフネをギロリと睨んだ。

 ルルディにぺちぺちと頬を叩かれて、フィトはようやく「んぁ……?」と正気に戻る。



『……からかってないわよぉ~。こんなにも真面目に話しているのに~』

『……どこが真面目なんですか、どこが!』

『……はいはい~。これから細かぁ~く説明するわよぉ~』



 どやされてもなお、悪びれることなくダフネは笑っている。

 そして――、その詳細とやらを語り始めた。



『……うふふ~、心配ご無用よ~。飛び込む前に、()()()を言えばいいんだもの~』

「「「合言葉?」」」



 仲良く声をそろえる三人に、ダフネはこくりと頷く。



『……“魔界いいとこ一度はおいで、陰気な隠居もご愛敬(あいきょう)”――って、言うらしいの~』



 楽しそうになおかつ、あっけらかんとした様子で言ってのけるダフネ。

 予想の軽く斜め上をいった解答に――レオン、リオン、フィトは口を半開きにさせて固まる。


『……今日の出来事は、塊魂(かたまりだましい)ってタイトルにして史書に残そーかなー』と、乾いた笑いでルルディが言うと。

『……そうですね。歴史的珍話になること間違いなしです』と、真顔のゼフィランサスは珍しく同意を示した。



「ナニソレ……」

「悪趣味な合言葉だな……てか、らしいって何だよ」

「な、なんか、早口言葉みたいだねっ!?」



 硬直からなおった三人が、それぞれに感想を述べた所で――。

 気を取り直してレオンは「とにかく……その合言葉を言えば、死なずに冥界に行けるんだな?」と、念を押す。



『……そうよぉ~。火山の噴火口が魔界に通じているのよ~。魔界から冥界までは簡単に行けるから、問題はないでしょう~?』

「それは……」

「そうだけどさぁ……」

『……ちょっとスリリングだけどぉ~、この火山を通って行けば、何に気兼ねする事無く冥界に戻れるわよ~』



 ダフネの言うことが本当ならば、ある意味で一番安全かつ、簡単な方法と言える。

 しかし。そう言われても、にわかには信じがたい話しであるというのもまた事実――。



『……不安に思うのも、無理はないわ~。普通では、ありえない事だもの~。』



 表情を曇らせるレオンとリオンに、ダフネは言う。



『……でもねぇ~。力を持った者ならば、ゲートを繋げる程度はぁ、容易いものなのよ~』



 花文様の入った瞳を細め、樹の大精霊はそう言い切る。

 その瞳には、間違いなく真意が宿っていた。


 ただ――その言い回しに加え、ダフネの瞳の奥には他意が含まれているようにも感じ取れた。

 それは、精霊が力を持たない種族であるということを強調しているのか。

 はたまた、何か別のことなのか。


 そんな風に勘繰(かんぐ)る、犬耳兄弟を他所に――。

「私、信じるよ!」と、凛とした声でフィトは言う。



「どんな本をみても書いてないけど、マヌケドリに聞いても罵倒されるけど……でもね、もしかしてほんとーに出来ちゃうかもしれないよ!? だって、大精霊のダフネ様がそう言うんだもん!」



 大真面目に訴えかけるフィトに――。

 レオンとリオンは顔を見合わせ「どっきりどっきりどんどん?」「びっくりびっくりびんびん?」と、深く頷き合った。



「確かに……残された方法がこれしかないんなら、これに賭ける他ねーよなぁ」

「そうだねぇ。まぁ~、僕はいまでも半信半疑だけどさ……」



 底抜けの素直さに、ふっと笑う兄弟。

 煮え切らない言い方をしていたリオンだったが「……でも。フィトがそう言うなら」と、乗り気になってくれたようだ。

 それを聞いて、フィトは嬉しそうに微笑む。



「でもダフネ様、よくそんな方法知ってるね! カリスト様も知らなかったみたいだよ!?」



 純粋な驚きを込めた声で、フィトは言う。

 もとより――それを疑問に思っていたレオンとリオンは、その返答を待ちわびていたようだが。



『……うふふ~。のじゃ姫よりは、ずっと長く生きているもの~。それくらいは知ってて当然よぉ~』

「ダフネ様は、物知りなんだねっ!」



 そんな風にきゃっきゃっと話す、フィトとダフネ。

 レオンとリオンからすれば、その返答は当り障りのないものに聞こえないでもなかったのだが。

 そこまで突っ込むような内容ではないか……、と兄弟は目と目で会話をした。

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