第九話・冥界に戻るには(1)
大精霊の話しが一段落したところで、出発の準備を整える面々。
ルルディとゼフィランサスは、これからの旅に役立つであろうあれこれを渡してくれた。
灯りの役割を果たす冥灯石、雨避けに使える大きな葉っぱ、魔法をかけた花びらの毛布など――。いかにも樹の精霊らしい道具だ。
そう――レオンのポケットブックには、無数のアイテムをしまっておけるのである。ここでもポケットブックは大活躍だ。
無論、これが正しい使い方であり。マジックショーに使うなど、本来の用途ではない滅茶苦茶な活用術なのだが……。
樹の精霊が授けてくれる道具には、マジックアイテムも混ざっており――。
レオンとリオンはその使い方などを、ルルディとゼフィランサスに伝授してもらうのだった。
***
各々が準備を進める中――。
フィトは機をとらえて、ダフネにある事を尋ねた。
「あの、ダフネ様」
『……なにかしら~?』
「ここに来た最初に、冥界に戻る方法を探してるってお話ししたの、覚えてる?」
『……もちろん~。覚えているわよ~』
「あのね、カリスト様から聞いたの。ダフネ様なら、レオンとリオンを冥界に戻す力を持っているかもしれないって。……それは、ほんとう?」
期待を込めてダフネを見つめるフィト。
しかし――その言葉に対し、ふるふると首を振って樹の大精霊は答えた。
『……残念ながら~、さすがの私も冥界に行く力は持っていないのよ~。他の大精霊も~、それは同じだと思うわ~』
ダフネの返事を聞いて「そっかぁ……」と、肩を落とすフィト。
レオンとリオンを冥界に戻してあげられる手掛かりを見つけたと思ったのに、簡単にそれが指の間からすり抜けてしまったのだ。
それにしても――大精霊が冥界に通じる力を持っていないとなると、他に何を頼りに冥界に行く方法を探せばいいのだろう。
もんもんと考えるも、自分だけではどうしたらいいのかが浮かばない。
困り果てたフィトに、ダフネは不思議そうに続ける。
『……フィトちゃん~。冥界に行く方法なら、いくつかあるのよ~?』
「えっ、そうなの!?」
ダフネの言葉を聞いて、驚いたフィトはがばっと顔を上げる。
すると――。
近くで荷造りしていたリオンとレオンは、犬耳をピクッとさせて――
「「ええっ!?」と、同様に衝撃を受けた反応を示す。
「ちょ、ちょっと待ってよ。どういうこと? ダフネ様、いま冥界に行く方法がいくつかあるって言った!?」
「聞いてねーぞ、そんな話し!」
持っていた荷物を置き、血眼でダフネに詰め寄るレオンとリオン。
血相を変えた様子の犬耳兄弟に、ダフネはきょとんとしている。
『……えっと~? そのまんまの、意味なのだけれど~。話さなかったのは~、聞かれなかったから~?』
興奮するレオンとリオンに差響くことなく、相変わらず気が抜けるような話し方をするダフネ。
その様子を見て、リオンは半ば呆れたセリフを吐く。
「そんな簡単に言うんなら、最初から教えてくれればよかったのに~……」
もっと早く知りたかったよ……と。
そう付け加えて、犬耳弟は深いため息をついた。
「リオン、ダフネ様のせいにすんなって。まぁ、なんだ……聞かなかった俺たちに落ち度があるだろ……」
「てかさ。土の精霊たちには、そんな知識なかったじゃん……」
「カリスト様も封印されてたし、土の精霊たちが知ってる事には限りがあったんだろ?」
「兄さんはお優しいこって。……まぁ、しょーがないか。なんたってお騒がせいれいだし……」
嬉しいはずの情報に、大きくズッコケるレオンとリオン。
それからリオンはいつもの決まり文句を言って、土の精霊を物笑いの種にした。




