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アルティメット エンド  作者: 齋音寺 里
第六章・大樹が護りし古の遺跡
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第八話・アスタルジアの大精霊たち(1)

 果物を食べ終えて腹ごしらえを済ませた面々は、出発前の最後の話し合いをする。



「さて。リオンから俺が不在だった時の話しは大体聞いたし、次に向かうべきは風の大精霊アウラの所ってわけなんだが……」

「もう少し情報が欲しいんだよねぇ」

「おい。俺のセリフ取んな」



 レオンはそう言って(にら)みを利かせ、弟を小突(こづ)く。



『……あ、そかそかー! レオっちとリオっちは冥界の住人だし、フィトっちはガルデニアから来たから、この先の道に明るくないってことね!』

「ああ、それもあるな」

「道のりが分からないと進むにも進めないからねぇ」



 ルルディの話しに相槌(あいづち)を打つレオンとリオンに『……そういう事だろうと思って、準備はしてあるわよぉ~』と、ダフネ。

 ダフネがゼフィランサスの方を見てにっこり微笑むと――。

 ゼフィランサスはこくりと頷き、背中に生えた美しい薄い羽根を広げる。


 ふわりと宙を舞ったゼフィランサスがどこからか持ってきたのは、古い世界地図であった。

 レオン、リオン、フィトは、ばさっと広げられた世界地図を食い入るように見つめる。



「これって……アスタルジアの世界地図、だよね?」

『……そうよぉ~』

「へぇ~! 地図なんて初めて見たよ!」

「地上の地図なんざ、冥界と魔界には必要のないモンだからな。そういえば、本でも見た事ねーな……」

「そうだねぇ。でもこれ、どうやって見るの? 今いる場所がどことか分かるものなの?」



 レオンとリオンが難しい顔で地図を眺めていると、フィトが地図に人差し指をちょこんと乗せる。



「ここが樹の祭壇だよ!」

「さっすがフィト! フィトはこの地図の見方が分かるんだねぇ!」

「えへへ。地上に住んでるんだもん、これくらいは普通だよ」

『……フィトちゃんが地図を見れるなら、話しは早いわねぇ~。ただ、この地図は古~いものだから、所々地形が変わっているところもあるかもしれないのだけれど~』



 ダフネの話しを聞いて、目をぱちくりさせるフィト。



「地形が変わる……? そんなことって、あるの……?」

『……最近はないけれど~、昔はあったのよ~』

「そうなんだぁ。地上で暮らしてるのに、全然知らないや」

『……地形が変わったのは、フィトちゃんが産まれるよりもうんと昔の出来事だもの~。知らなくても無理はないわ~』



 そう言うと、ダフネはフィトの両肩に手を添える。

 地形が変わるとは、一体どういう事なのだろうか。考えてみたが、到底考えが及ばないフィトは難しい表情を浮かべた。



「ダフネ様。それって、()()()()()()だよな?」

『……ええ、そうよ~。あなたたち怪物一族が産まれる前の出来事なのに、よく知っているのねぇ~』

「怪物の王であり怪物の生みの親でもある、僕たちの師匠――テュポーン様からちょっとだけ聞いたことがあるんだよねぇ」



 今度は聞いた事なのない名前が上がり「テュポ……?」と、フィトは首を傾げている。



「昔、テュポーン様からゼウスと争って負けたって話を聞いたことがあるんだよ。その時に、とある大陸をゼウスがぶん投げたんだって。その島の下敷きになって、テュポーン様は魔界の隠居暮らしを余儀なくされた……とかなんとか」

「今でも相当ゼウスのこと恨んでるもんな。ゼウスの話しが始まった日にゃ、三日三晩酒に付き合わされるし……」

「酒癖の悪さは一級品だよねぇ~」

「いやいや、それはお前も負けてねーぞ……」

「そんで魔界で隠居暮らしを始めて、一人で寂しいから僕たち仲間を産み出したって言ってたよねぇ。ほんと師匠は寂しがりで、世話が焼けるよぉ」



 レオンとリオンの会話を聞いたダフネは、珍しく物思いにふけっているようだった。

 ゼフィランサスとルルディも同じように、黙って何かを考えている。



「なにか、考えごと……?」



 精霊たちの様子に気付いたフィトは、心配そうに尋ねる。



『……懐かしいわぁ~と、思ってねぇ』



 ダフネはそう言って微笑むと『……ほらほら、話を戻しましょうね~』と、雑談に走るレオンとリオンに声をかけた。



『……ここから風の祭壇まで行くのに~、地形が変わっている所はないからぁ~、今回は気にせずに地図を頼って大丈夫よぉ~』



 そう言うと、ダフネは地図を指して道のりの説明を始める。



『……この樹の祭壇からローレル山脈を越えて、北に向かって少し進むと~、アプリコットスカーナの村があるのよ~。……そのアプリコットスカーナから、さらに北の方角に進んだところに~、アルカディアという大きな街があってね~。その奥地に続く道を行くと、風の祭壇に辿り着くのよ~』



 それからダフネは『……ひとつ、気を付けてね~』と、人差し指を立てて続ける。



『……山を下ってからも、草原の長~い一本道が続くのだけれど~。アプリコットスカーナからアルカディアに行くまでに~、分かれ道があるのよぉ~』

「「「分かれ道?」」」

『……そうよ~。その分かれ道を、()()()()()()()ねぇ~。そうじゃないと~、アルカディアと風の祭壇じゃない別の場所に着いてしまうから~』



 ダフネの注意を聞いて「間違えないように気を付けないとねっ! 曲がれー右っ!」と、フィトはフィトらしい復唱をする。



「ところでダフネ様。ここから風の祭壇まで、どれくらい時間がかかるんだ?」

『……それがねぇ~。ここから結構距離があるのよねぇ~』

「えっ、そうなの? 結構ってどれくらいなのかな?」

『……そうねぇ~、歩いたら四日はかかると思うわ~』

「ぎゃおっ! そんなに!?」



 うへぇという顔をしながら奇声を上げるリオン。

 そんな犬耳弟に対し「リオン、大丈夫だよ!」と、フィトは励ましの言葉をかける。



「ガルデニアからグラシナ。グラシナからクレーヴェル。それからお山を越えて、ここに辿り着いたんだもん。きっとぱぱっと着いちゃうよ!」

「おー、フィトは前向きだな」

「えへへ。それに、次の月の曜日まであと六日あるから……よゆーだねっ!」



 指折り数え、フィトは明るい笑顔を見せた。



「そう言われてみれば、なんとかなりそう……なのかなぁ」

「うんっ!」

「でもさ。ここに来るまで、誰かの手助けがあったから上手く事が運んでたと思うんだよねぇ。歩いて四日って……長いし辛過ぎだよぉ……」



 フィトに元気づけられてもなお、リオンは深いため息をついた。

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