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アルティメット エンド  作者: 齋音寺 里
第六章・大樹が護りし古の遺跡
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第七話・進むべき道(2)

「地上ってのは、つくづく綺麗な所だよなぁ」

「うん、そうだねぇ」

「ここまで一週間かけて来たけど、場所によってこんなにも見えるモンが違うのかって驚かされてばっかりだよ」

「本にある文字の羅列(られつ)をどれだけ並べても、到底この景色は想像できないよねぇ」

「ああ。実際に目で見て体感するってのは、全然違うんだよな。写真や絵に閉じ込めた世界にも、もちろん美しさはあるけどさ」



 そう話しながら、レオンとリオンは自分たちの髪をさらっていく心地よい夜風を肌で感じる。



「あいつらは……ヒュドラとネメアは、この地上で何をしようとしてるんだろうな」

「さぁね? 地上っていうか、世界規模の企みを働いていると思うけど」

「世界規模か……そうだな」

「うん。大精霊を封印するってのはさ、世界の均衡(きんこう)に関わる事なんでしょ? そしたら地上だけじゃなくて、冥界も魔界も、神々が住処(すみか)とするオリュンポス山も、このアスタルジアの全てが危機に晒されるって事じゃない?」



 顔をしかめながら「そう考えるとさ、おかしいと思うんだよねぇ」と、リオンは兄を見る。



「おかしい?」

「この非常事態に、ゼウスのバカミサマに動きがないのがおかしいんだよ」

「確かに。それは一理あるな」

「でしょ? ハーデス様の担当は冥界。ポセイドンの担当は海や川の水域。ゼウスの担当は地上とオリュンポス山の頂上にあると言われる天界。こういう事態が起きた時、神々の頂点に君臨する最高神のゼウスが何らかの行動を起こすのがこの世界のならわし。好き勝手動き回ってるデスペナルティが目を付けられないのも不自然だよ」

「そうだよな。そう考えると……バカミサマたちにも何か異変が起きてるって事か」

「あのゴリゴリ権力者に限って、こんな勝手を許す筈がないからねぇ。普通だったらブチキレどころの騒ぎじゃないよ」

「まぁそうだな。島の一つくらいは軽く沈んでるわな」

「あぁ~なんて恐怖!」



 リオンは演じるようにわざとらしいセリフを吐きつつ、自分の犬耳をモフモフしながら身体を揺すった。

 相当ゼウスを下に見ているらしい。怪物に馬鹿にされるこの世界の神様とは、一体どのような存在なのだろう。



「しかし、神様がやられたりするかぁ? アイツらの力は怪物を超えるバケモンなんだぜ? それこそ有り得ねーだろ」

「まぁね。僕らの師匠が昔争って負けた相手らしいし……力でゼウスをねじ伏せられる存在なんて、この世界にはいないよ」

「考えたくはねぇけど、そうなるとバカミサマが大精霊の封印に絡んでるって事になるのか……?」



 レオンがそう言うと「それはないと思うな」と、リオンは首を横に振る。

 そして――、先程までフィトと精霊たちとした話しをレオンにまとめて伝えた。


 神の誰かが精霊に口封じの魔法をかけている事。

 風の大精霊アウラの事。

 次の月の曜日に、ダフネとアウラをどちらも護衛するという事。

 ダフネからフルーラクラウンと手紙を預かり、一度きりのワープ魔法を授かった事。


 一通りの話しを聞き終えて、レオンは何度もゆっくりと頷く。



「なるほど……それで今回の件に至っては、神様はシロって事か」

「うん。マナっていうエネルギーを生み出してくれる精霊は、この世界に欠かせない存在のはず。ましてや口封じの魔法をかけた百年後に封印するなんて、とてもじゃないけど意味が分からないし合理的じゃなさそうじゃない?」

「そうだな。それに、あのゼウスならそんなチマチマしたやり方しねーだろ。もっと派手にドカンとやってるぞ」

「たはは、島を沈めるが(ごと)くだねぇ~」



 冗談を交えるも、それが非現実的ではないと苦笑いするレオンとリオン。

 絶大な力を持ったゼウスは、やろうと思えばこの世界を滅ぼすことも出来てしまうのだ。



「しっかし……大精霊を同時に護衛するとは、結構厳しい条件だな」

「今回ばっかりは僕もそう思う」

「とにかく、やるしかないんだからやれる事はするけどな。……ただ、これからも同時に大精霊が狙われたりしたら護りの手が追っつかねーぞ」

「まぁね~。もう少し相手の動きを探れるような手掛かりと情報が欲しい所だよねぇ」

「ああ。それも踏まえて、もう一度しっかりダフネ様と話そう」

「そうだね」

「それに。俺たちの旅の目的が定まったとはいえ、冥界に戻る方法は相変わらずわかんねーままなんだ。与えられた使命を投げ出す気はないが、冥界に戻る事も進むために必要な事だからな」

「本当は、僕たちだけで決めていい事柄じゃないからねぇ。……でも僕は、いまやっている事は正しいことだと思ってる」

「ああ、もちろんだ。とにかく、希望を信じて進むしかねーな」



 そう言って話しを終えると「……さてと。それじゃ、樹の祭壇に戻るか」と、レオンは立ち上がる。



「……リオン」

「ん~?」

「ありがとな」



 レオンは頭をかきながら短く言うと、すたすたとリオンを置いて歩き始める。

 改まって礼を言われると、何だかむずがゆいリオンは、



「べっつに? 兄さんがいなくなってくれたお陰で、僕はまたフィトと絆を深めることが出来たし? むしろ僕の方が感謝かなぁ~?」



 そんな風に煽るような文句を口にして、兄の隣に肩を並べた。



「お前調子乗んなよな。兄貴に向かっていっちょ前にいらん世話焼いてんじゃねーっつの!」

「せっかく来てやったってのに、随分と酷い言い方してくれるねぇ? あ~、分かった」

「あぁ? 何がだよ?」

「ここに来たのがフィトじゃなくて、僕で残念でした~」

「んなこと思ってねーし、別に俺はひとりでも立ち直れたんだよ!」

「うわぁ~。フィトは兄さんの事、心が擦り切れるくらい心配してたのになぁ。酷いなぁ。冷たいなぁ。その優しさを否定するなんて最低な獣だねぇ~これだからバカ兄は!」

「この野郎、お前ナメてんのか!?」



 シリアスな空気から一転、犬耳兄弟は普段通りのボルテージに戻ったようだ。ぎゃんぎゃん言い合いを重ねながら、樹の祭壇へと歩いていく。

 ふたりの旅の目的と指針が明確になったとはいえ、まだまだ謎に包まれた事ばかり。

 果たしてこの先、どうなることやら――。

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