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アルティメット エンド  作者: 齋音寺 里
第六章・大樹が護りし古の遺跡
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第六話・これからのこと(6)

 それからダフネは『……それで~、盛り上がってたワープのお話しに戻るのだけど~』と、途切れていた本題を切り出す。

 一体どんな話しが出てくるやら。ダフネの言葉を聞いた面々からゴクリ、と喉の鳴る音が漏れる。



『……使えるのは一度きり。それでもってワープして来れる場所は、樹の祭壇限定っていう条件付きよ~』

「なるほどねぇ。特別な力はそう何度も使えないってわけかぁ」

「でもでも、ワープって本当にスゴイ魔法だよねっ!? ワープだよ、ワープ!」



 楽しそうにそう話すフィトに「冥界から地上に飛ばされたアレも、ワープの一種だったのかもしれないね。今となってはそう思うよ」と、リオン。

 それを聞いて「あんな風に暗くて黒くてグニャグニャ~ってするのは、イヤだなぁ……」と、意識を失う前に一瞬感じた感覚を思い出してフィトは言う。



『……でもダフネ様。今までそんな話、私たちにだって一度もした事なかったですよね? 私たちに思考共有もされなかったですし……どういう事です?』

『……そーだよっ! なんでなーんにも言ってくれなかったのさ!?』



 問いただすように言葉を詰めるゼフィランサスと、口を尖らせるルルディ。

 二人がにじり寄る勢いで(たた)みかけても、大精霊は動じることなく優雅に紅茶を口に含み――。飲みかけのカップから顔を上げた後、ふんわりと、でもほんの少し困ったような顔で微笑んで首を振った。



『……黙っていたわけじゃないのよ~。なんていうか、こっそり積立貯金してたというか~』

『……積立貯金?』

『……って、どゆこと?』



 さも訳が分からないというように、顔を見合わせて首をかしげるルルディとゼフィランサス。



『……とにもかくにも~。こういう時のために奥の手っていうのを、大精霊は持っているものなのよ~』



 ダフネはそう言うと、ぽかんとする仲間二人をじっと見つめる。

 ルルディとゼフィランサスは神妙(しんみょう)な面持ちで再度顔を見合わせると、それ以上は言及をせずにおとなしく押し黙った。



『……フィトちゃん』

「はい?」

『……このリング、一体何かわかるかしら~?』



 フィトと向き合った位置にちょこんと座り、指輪をつけている手をすっと差し出すダフネ。

 左手の人差し指にはめられた銀古美(ぎんふるび)のリングは、植物で出来た(かんむり)のようなデザインになっており、中央には桜桃色の精霊石が()め込まれていた。


 フィトはその指輪を見つめて、すぐにピンときた様子。

 自分の首にかけていたペンダント――アーククラウンを手にして、その二つを見比べる。



「これって、スーパーペンダントの……!?」

『……うふふ~、フィトちゃんらしい面白いネーミングねぇ~。お察しの通り、あなたが土の大精霊カリストから預かったアーククラウンと同じ……樹の大精霊の証――フルーラクラウンよ~』



 ダフネの説明に対し「樹の大精霊の証は、リングなんだねぇ」と、リオン。



『……大精霊の証は、全部違う見た目で出来ているのよ~。変わらないのは、総じてクラウンって名前がついているのと~、冠をモチーフにしたデザインになっている事かしらねぇ。あと~、もれなくクリスタルみたいな精霊石がついてくるの~』

「ダフネ様の指輪は、お花が咲いたデザインになってるんだね! 可愛い……!」

『……うふふ~。だって、樹の精霊ですもの~』



 フルーラクラウンをまじまじと見つめるフィトに、にっこりと笑ってダフネは言う。

 しかし、なぜ突然ワープの話しから大精霊の証に話が飛んだのか。

 せっかちなリオンは、その理由を聞かずにはいられないようだ。ゆるりゆるりと会話をするダフネに、犬耳弟はリングを見せびらかす理由を問う。



「それで、なんでいきなり大精霊の証の話になるのかな?」

『……リオンくんは単刀直入ねぇ~』

「だってほら、ささっと話を進めないとさ」



 目をそらしながら話すリオンの視線は、レオンが歩いて行った方角へ向いていた。


 それに気付いたダフネは、

(……よっぽどお兄さんのことが心配なのねぇ~)

 そう思い、くすりと微笑む。



『……それもそうねぇ~。それじゃ~はい、フィトちゃん』



 そう言ってダフネは自身の指にはめているリングを外し、すっとフィトにそれを手渡した。

 不意に手のひらに乗せられた指輪を見て、目をぱちくりさせるフィト。



「えっ、ええっ? ダフネさま?」

『……フィトちゃんに、これを持っていてほしいのよ~』

「でもでも、フルーラクラウンを預かっていく理由が見えないよ……?」



 状況が全く飲み込めないフィトの頭の上には、クエスチョンマークがぽんぽこ飛び出していた。

 封印されているカリストの大精霊の証ならまだしも、ダフネから大精霊の証を渡されるとは思ってもみなかったのだ。


 フィトがそう話すのに対し――。早く会話を進めるよう急かしたリオンは指輪を渡された疑問に加え、頭の中でとある予想を膨らませていた。

 それに大精霊の証とはその名の通り、大精霊にしか使えない代物との事だ。そんな大層なものには、一体どのような力が込められているのだろう。



「実はその大精霊の証に、ワープの力があったりしちゃうのかな?」



 当てずっぽうのようだが、どこか自信ありげにリオンはそう言った。

 その言葉に『……その通りよぉ~』と、察しよく言ってくれる事をさも分かっていたような口ぶりでダフネ。



『……このフルーラクラウンの中にはねぇ、ぎゅぎゅ~っと魔力が詰まってるのよ~』

「あっ! もしかして、ちょきん!?」

『……うふふ、そういうこと~。なが~いこと魔力をためてきたからぁ、一回だけ使えるのよ~スーパーワープがねぇ~』



 フィトのネーミングを真似て、楽しそうにダフネはそう言う。



「でもさ、ダフネ様。その力を使ったら、また呪いが発動しちゃうんじゃないの?」

『……いい質問ねぇ~。その力を使うタイミングが、ミソなのよ~』



 そう得意気に話して――、ダフネは続ける。



『……そのワープの術式は、ちょっとばかり特別かつ複雑に()まれていてね~。私たち樹の精霊がピンチになった時だけ、魔法が発動する仕組みになっているの~』

「ピンチってのは、命の危機ってこと?」

『……そういうこと~。いつかこういう時が来るかもしれないと、予め準備をしていたってことね~』

「え、と……? つまり~つまりは……?」

『……ダメもとで、ここから離脱する手段を考えていたの~。もしも、生命の存続を危ぶまれるような事が起きたとして~、呪いを受ける選択肢を取った方が、まだ生存率は上がると思わない~?』



 それを聞いて一番にはっとした顔を見せたのは、他ならぬルルディとゼフィランサスだった。自分たちに黙って、そんな時の事まで考えて行動を起こしていたなんて――と。

 これまでダフネは、そんな素振りを何一つ二人に見せる事はなかった。

 しかし――見抜くことも出来ず、気付くことも出来ず、いままで自分たちは何を見て過ごしてきたのだろうと、ルルディとゼフィランサスは少しやるせない気持ちになるのだ。



『……まさか、ダフネ様……、いつも眠たそうにしていたのも、寝てばかりいたのも、全部いままで力を蓄えていた事が原因なのですか……?』



 声を震わせながら言うゼフィランサスに『……何のことかしら~?』と、ダフネは優しく微笑んで見せた。



『……もーっ、すっとぼけないでってば! アタイたちのため、なんでしょ!?』



 感極まって涙を浮かべるルルディを『……よしよしよ~し』と、なだめるダフネ。

 そして、フィトとリオンのことを交互に見つめ――、



『……でもね? いまは~……私たちの味方をしてくれる、心強~い友人が出来たからねぇ~。命を(たく)してもいいんじゃないかと、そう思ったのよ~』



 目を細めながら、樹の大精霊はそう話すのであった。

銀古美ぎんふるびとは

銀をいぶしたようなアンティーク調の色合いです。

アンティークシルバーとも呼ばれています。

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