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アルティメット エンド  作者: 齋音寺 里
第六章・大樹が護りし古の遺跡
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第六話・これからのこと(5)

 フィトのおかげでリオンが前向きになった頃――。

 大精霊ダフネは『……お話し、一段落ついたかしら~?』と、ホクホクした顔でむくっと起き上がった。



「え? ええっ!? ダフネ様、もう大丈夫ってか、起きてたの!?」



 目をぱちくりさせるリオンに、ホッと胸をなでおろすフィト。

 そんなダフネに続き、ルルディとゼフィランサスもゆっくりと身体を起こす。



「みんなが生きてて、よかったぁ……」

『……フィトっち、心配かけてごめんね! それにしても、しぬかとおもったぁぁ!』

『……あれは、二度と味わいたくはないですね。壮絶でした』

『……そうねぇ~。らしくもなく、私も取り乱してしまったもの~』



 精霊たちは口についた血を拭うと、草花の絨毯にふわりと座り直す。

 受けた呪いの感想をマイペースに笑って話しながら。



「精霊さんたち、苦しい思いをさせて本当にごめん……。もっと慎重に事を運ぶべきだったよ……」

『……そんなに重く捉えることはないのよ~。み~んな考えが足りなかった、ただそれだけのことでしょう~?』

『……そうそう! 何もリオっちだけが悪いわけじゃないっしょ!』

「だけど……」

『……うふふ~いいのよぉ~。それに……いいものが見れたし、ね~?』



 にっこりするダフネを見て、こいつだけは途切れる事なく意識があったな? と、むすっとするリオン。

 しかしながら自分に非があると思う気持ちは変わらないので、何も言い返さずに黙っているのだが。



『……と~っても痛かったから、私も癒しが欲しいわぁ~ゼフィランサスぅ~』

『……ひゃっ!? な、なんですか急に!? くすぐったいからやめて下さい!』

『……まぁたそんな御無体な事を言う~。いいじゃないのぉ、少しくらいすりすりしたってぇ~。大精霊は癒しを求めているのよ~?』

『……ん、もうっ……! だからって、そうやって私の胸に顔をうずめるのはやめて下さいっ……!』

『……はぁ~ん。ふわふわぽにょぽにょ、眠くなっちゃうわねぇ~』



 (まぶた)を重くさせて微睡(まどろ)みながら、ぽよんぽよんとゼフィランサスにじゃれつくダフネ。

 その光景を冷えた目で見るルルディは『……その忌まわしい肉塊、そぎ落としてくれようか』と、何処からか取り出したナイフを舌で舐める。

 何気ない日常のやりとりに戻った精霊たちを見て、リオンとフィトはふっと頬を緩めた。本当に樹の精霊たちが無事で良かった、と。


 樹の精霊たちから溢れ出る、桜桃色の光の粒が徐々に減ってゆき――。

 まもなく時刻は二十四の刻、月の曜日が終わる――。




***




『……さ~てと。お話しの続きをしようかしらね~』



 口直しに紅茶をすする樹の大精霊に「ダフネ様。私ね、気になったことがあるの」と、フィトが話を持ち掛ける。



『……なにかしら~?』

「カリスト様と心の中でお話をした時……カリスト様はおしゃべりしちゃいけない事を話したのに、さっきみたいにならなかったの。でも、なんていうか……聞き取れないように、言葉にノイズが走ったような聞こえ方がしてね……」



 フィトの話を聞いてふむ、と考え込むダフネ。



『……たぶんそれはね~ぇ、のじゃ姫が既に封印された後だったからだと思うわ~。肉体を離れた精神世界の会話でもなお、呪術は消えてくれないってわけね~。それが声を聞きとらせないノイズになって現れたんじゃないかしらぁ。呪いの執着もそこまで来ると、しつこい油汚れみたいに厄介よねぇ~』



 ダフネの推測を聞いて「そっか、なるほど!」と、頷くフィト。

 実際のところ事の真実は分からないのだが、その回答でおおよそ当たっているだろう。さすがは大精霊というべきか。

 隣で聞いていたリオンは、納得は出来るけど例えが家庭的な必要ある!? フィトはそこ、突っ込まないんだ!? と、心の中で思う。

 何にしても、油汚れという表現に七割がた共感が持って行かれているフィトなのだが。



『……真実を語れないお話しのことだけど~。その真実は、()()()()()()()()()ってことよねぇ~。もう、わかるでしょう~? ……でも、これ以上言ってはダメなのよ~』



 ダフネはそう、唇に人差し指を当ててにっこりと頷く。

 リオンとフィトは顔を見合わせ、ぶんぶんと首を縦に振る。ダフネが遠回しに言っているのは、()()()()()()()()()()()()()であるという事。


 つまり――――神様は黒である、ということだ。

 その名前を口にして呪術が暴れ出したという事は、神が精霊に口封じの魔法をかけたという事実を表明しているのである。

 ただし。ひとくちに神様といっても、どの神を指しているのかまでは辿り着けない。神と呼ばれる神格を持つ存在は、この世界――アスタルジアに相当数いるのだ。



『……話を進めていくわね~。私たちは他にも、精霊の()――というのを封じられてしまっているのよ~』

「「せいれいの、わ?」」

『……精霊の輪っていうのはね~ぇ、早い話しをするとぉ~……精霊ネットワーク、みたいなものねぇ』

「え~っと……ごめん、ますますわかんない」

『……要は、離れた場所にいる精霊同士が話す事が出来る能力です。今は封じられてしまったので使う事が出来ませんが』

『……昔は大精霊会議とかあったよねーっ! 今みたいにずーっと精霊石の近くにいなくてもよかったしさ! 夜通しおしゃべりしたりして、あの頃は自由でほんっと楽しかったなぁー!』

『……大精霊会議、懐かしいわねぇ~。大精霊らしくあるために、精霊の種族の数を表したこの花文様(はなもんよう)が入った服を着ることにしましょ~って決めたりしたのよ~。うふふ~』



 精霊たちの話を聞いて「なんか楽しそうだねっ!? 精霊界隈ってやつだねっ!?」と、キラキラした眼差しになるフィト。

 内心くだらないなぁ~と思いつつ、突っ込むに突っ込めないリオンは仕方なくそのまま見学していた。



『……それで私たち精霊は、他の種族の精霊や大精霊と連絡を取り合うことが出来ないのです。ですから今回のような事があっても情報を伝える事はおろか、助けを呼ぶことも助けに行くことさえ出来ないのです』

「なるほど、精霊石を護るっていう役割もあるわけだしねぇ」

『それはそうなんだけどさぁー。呪いをかけたバカちんが、各精霊の管轄区域から外に出る事を禁じてるんだよねー。アタイらは籠の中のオォンドリってわけ!』



 心底嫌そうな表情をしながら、ひらひらとルルディは手を仰ぐ。

 暴言を吐く仲間に『……ルルディ。そのバカちん達はどこで聞き耳を立てているか分かりませんから、口を(つつし)まなくては』と、顔をしかめながらゼフィランサス。

 釘を刺すような事を言う割にバカちん呼ばわりはやめないんだなぁと、まわりで聞いていた面々は思うのだが。

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