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アルティメット エンド  作者: 齋音寺 里
第六章・大樹が護りし古の遺跡
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第六話・これからのこと(4)

「少しずつ、呼吸が落ち着いてきたみたい……」



 あまりの痛みに意識を失ってしまった精霊たちに寄り添いながら、フィトは安心したようにそうこぼす。

 まだ油断は出来ないが、この分だと命に別状はなさそうだ。



「そっか……それならよかった」



 フィトの言葉に安堵(あんど)するも、リオンは未だ、ただ自分自身を省みるしか出来ずにいた。

 自分の軽率な行動が現在の結果を招いた事を情けなくも悔しく思いながら。


 先の事を考える余裕もなく、こんな風に立ち止まってしまうなんて。目の前で切羽詰まっているフィトを支えるどころか、逆に励ましの言葉をかけさせるなんて。本当に自分はどうしてしまったというのか。

 自分に呪術魔法の理解と知識がそれ程あった訳ではない。それを分かっていながら、なぜ先に進むために答えを出そうと焦ってしまったのだろう。


 この期に及んで、リオンは気付くのだ。今更ながら、自分の心境に。



「傷付いているのは、僕も同じだったのかなぁ……」



 そうつぶやくと、リオンは苦笑いを浮かべる。

 どうやらリオンは、自分が思っていたよりもずっと精神的ダメージを受けていたらしい。元仲間への執着というのは、それほどまでに大きかったのか。


 時にはからかい、時にはしょうがないなぁと失敗をフォローし、小突きながらも面倒を見てやってきたネメア。

 飄々(ひょうひょう)とした態度は鼻につくも、兄を持つ者同士、下の兄弟の苦労話を分かち合える唯一の相手だったヒュドラ。

 道をたがえた二人の事を今後どうすれば良いのか。この気持ちにどう折り合いをつける事が正しいのか。これから自分はどうしたいのか、どうしたらいいのか――。


 リオンは自分の心情を分かってない上に、見失っていたのだ。これから先の身の振り方も決められていないくせに、これからの話をしようだなんて無責任もいい所だ。

 自分の気持ちと向き合おうとこの場を離れた兄のことを少し恨んだが――、この期に及んで責任転嫁(せきにんてんか)するのは幼稚な奴のする事だと、すぐに思い直す。残る事を選択したのは他の誰でもない、自分自身なのだから。

 心の乱れが冷静さを欠き、判断力を鈍らせ、分析することを軽んじた。こんな状況に精霊たちを追い込んだのは、少なくとも自分の情けなさと不甲斐(ふがい)なさが原因だろう。

 唇を噛み締め、リオンはつぶやく。



「自分の感情を閉じ込めて、平気なフリをして、大人ぶった結果がこれか……。僕は、なんて無様なんだろうねぇ。こんなのは……冷静さを装った、ただのカッコつけじゃないか……情けないなぁ、ほんと」



 リオンは自分が一番つらい時、それでも前に進もうと足掻(あが)いていた。

 それを分かっていたフィトは――――、



「リオンはちっとも情けなくなんて、ないよ」

「……え?」



 その声に、思わずリオンは顔を上げる。



「リオンは偉いよ。つらくたって、皆の為にこれからのことを一生懸命考えてた。私に心配かけないように、ものすごく色々考えてくれてた。レオンのこともちゃんと気にかけて、ひとりでも役に立とうと頑張ってたよ」

「たはは、そんな事はないよ。僕はただ、焦ってひとりで足掻いてただけで……。自分のことだって、何一つ分かっちゃいなかったんだからさ……」



 すっかり弱気なリオンのセリフを聞いて、ふるふるとフィトは首を振る。



「リオン、強がらなくていいんだよ。急いだり、焦ったり、偽ったりしなくても……リオンはきっと、ちゃんと進んでいけるから。……レオンもそう。ふたりの思いは、悩まなくたってとっくに固まってるんじゃないかなぁ?」



 まっすぐにリオンを見つめるフィトは、微笑みながら優しく続ける。



「……私もね、同じ気持ちだよ」



 ――――光が、差した気がした。

 あたたかな春の訪れを感じさせるような、ひだまりのような光。


 この子と話をしている時、何度この感覚を感じただろう。

 胸の中にも溢れてくる、あったかい光。

 フィトは本当に不思議だ。


(……でも、フィトだからなんだ。こんな風に僕の事を導けるのは)


 ――――僕はもう迷わない。

 そう思いながら、リオンは前を向く。

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